膝の痛み、年齢のせいだと諦めていませんか?
階段の上り下りや散歩中に膝の痛みを感じ、行動範囲が狭まっている方は、変形性膝関節症の可能性があります。 進行すると人工関節手術が必要になるケースも。 手術費用や術後の生活、費用を抑える方法など、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、人工関節手術の種類と費用相場、保険適用、高額療養費制度、最新の手術方法、入院生活、リハビリ、退院後の生活、介護保険サービスの利用まで、変形性膝関節症の手術に関する情報を網羅的に解説します。
100万円を超えることもある手術費用。 でも、健康保険適用に加え、高額療養費制度を利用すれば自己負担額を抑えることが可能です。
費用面だけでなく、術後の生活やリハビリについても詳しく解説しているので、不安を解消し、手術を受けるかどうかの判断材料にしていただければ幸いです。
具体的な費用内訳や、リハビリテーションの内容を知りたい方は、ぜひ読み進めてみてください。
あなたのQOL(生活の質)向上に繋がるヒントが、きっと見つかるはずです。
目次
変形性膝関節症における人工関節手術の費用と流れ

年齢を重ねると、以前は難なくできていた階段の上り下りや散歩で膝に痛みを感じるようになり、それによって行動範囲が狭まり、気持ちも沈みがちになることがあります。これは、高齢者に多くみられる変形性膝関節症の症状である可能性があります。
変形性膝関節症は進行すると人工関節手術が必要になるケースがあり、手術を受けるかどうかは患者さんにとって大きな決断となるでしょう。費用や術後の生活など、様々な不安を抱えている方もいらっしゃると思います。
そこで、このセクションでは、人工関節手術の費用や手術までの流れについて、具体的に解説します。
人工関節手術の種類と費用相場
人工関節手術には、大きく分けて「人工膝関節全置換術」と「単顆人工膝関節置換術」の2種類があります。
人工膝関節全置換術は、膝関節全体を人工関節に置き換える手術です。変形が高度な場合や痛みが強い場合に適応となります。
単顆人工膝関節置換術は、傷んでいる部分だけを人工関節に置き換える手術です。比較的症状が軽い場合に選択されることが多いです。
費用相場は、人工膝関節全置換術で約100万円から150万円、単顆人工膝関節置換術で約80万円から120万円です。
| 手術の種類 | 説明 | 適応 | 費用相場 |
|---|---|---|---|
| 人工膝関節全置換術 | 膝関節全体を人工関節に置き換える手術 | 変形が高度な場合や痛みが強い場合 | 約100万円~150万円 |
| 単顆人工膝関節置換術 | 傷んでいる部分だけを人工関節に置き換える手術 | 比較的症状が軽い場合 | 約80万円~120万円 |
費用は使用する人工関節の種類や入院期間、手術を実施する医療機関によって異なります。
手術費用の内訳(検査費用、入院費用、手術費用など)
手術費用は、検査費用、入院費用、手術費用、薬剤費、リハビリ費用など、いくつかの項目から構成されます。以下に一般的な費用の内訳を示します。
| 費用項目 | 内容 | 平均費用(3割負担の場合) |
|---|---|---|
| 検査費用 | レントゲン、MRI検査、血液検査など | 約3万円〜15万円 |
| 入院費用 | 14日間程度の入院(個室差額を除く) | 約15万円〜25万円 |
| 手術費用 | 手術室使用料、麻酔料、医師技術料など | 約25万円〜40万円 |
| 人工関節費用 | 使用する人工関節の種類による | 約20万円〜50万円 |
| 薬剤費 | 手術前後の投薬、痛み止めなど | 約2万円〜5万円 |
| リハビリ費用 | 入院中のリハビリテーション | 約5万円〜10万円 |
| 合計 | 全体の手術・治療費用 | 約70万円〜145万円 |
※上記の金額は3割負担の場合の一般的な相場です。実際の費用は医療機関や手術の種類、個人の保険適用状況などによって異なります。
※高額療養費制度を利用することで、月ごとの医療費の自己負担額に上限が設けられるため、実際の支払い額はさらに軽減される場合があります。
※個室を希望する場合は、別途差額ベッド代(1日あたり約5,000円〜20,000円程度)が必要になります。
検査費用には、レントゲン、MRI検査、血液検査などが含まれ、3万円から15万円程度かかることがあります。
入院費用は、個室か相部屋か、入院日数などによって変動し、手術費用には、手術室の使用料、麻酔料、人工関節の費用などが含まれ、その他にも薬剤費やリハビリ費用も含まれます。
合計すると、変形性膝関節症の手術全体で約70万円〜145万円程度かかる計算になります。ただし、高額療養費制度の利用や個人の保険適用状況によって実際の支払額は変わってきます。
これらの情報は一般的な相場であり、医療機関や地域によって異なる場合があるため、直接病院にお問い合わせください。
保険適用と高額療養費制度
人工関節手術は健康保険の適用となります。
費用の負担を軽減するために、高額療養費制度の利用が可能です。高額療養費制度とは、1ヶ月間に支払った医療費の自己負担額が、一定額を超えた場合、その超えた分が支給される制度です。これにより、手術や入院にかかる高額な費用でも、自己負担限度額を超える部分を抑えることができます。
自己負担限度額は、年齢や所得によって異なりますので、事前に確認しておくと良いでしょう。
▼変形性膝関節症のその他の手術費用や保険適用、高額療養費について、以下でも詳しく解説しています。
費用を抑えるための方法
手術費用を抑える方法はいくつかあります。入院期間を短縮することで入院費用を削減できます。
また、個室ではなく相部屋を選択することで、差額ベッド代を節約することが可能です。
費用の面で不安がある場合は、医師や医療ソーシャルワーカーに相談してみるのも良いでしょう。
公的医療保険制度に加えて、民間の医療保険に加入している場合、手術給付金などを受け取れる可能性があり、自己負担額をさらに軽減できる場合があります。
最新の手術方法(ロボット手術など)と費用
近年、ロボット支援手術が登場し、人工関節手術の精度向上に貢献しています。
医師がロボットを操作して手術を行うロボット支援手術は、より正確な手術を可能にします。従来の手術と比較して、手術時間や出血量の減少といったメリットが期待できます。
ただし、ロボット支援手術は保険適用外となる場合があり、費用が高額になる傾向があります。
また、ロボット支援手術とナビゲーション支援手術を比較した研究では、両者に統計的な有意差がないという報告もあります。
人工関節手術の選択肢として、ロボット手術の他に、ナビゲーション手術も存在します。ナビゲーション手術は、コンピューターを使って手術中の器具の位置や角度などをリアルタイムで確認しながら行う手術です。ロボット手術と比較すると費用が抑えられる場合が多いです。
どちらの手術方法が適しているかは、患者さんの状態や医療機関の設備などによって異なるため、医師とよく相談することが重要です。
変形性膝関節症における人工関節手術後の入院生活とリハビリ

人工関節手術は、変形性膝関節症によって日常生活に支障が出ている方にとって、痛みを軽減し、QOL(生活の質)を向上させるための有効な手段です。しかし、手術を受けるにあたっては、入院生活やリハビリテーションについて不安を抱える方も少なくありません。
このセクションでは、手術後の入院生活からリハビリ、退院後の生活、そして介護保険サービスの利用について、具体的に解説します。
入院期間と入院中の生活
入院期間は、手術の方法(人工膝関節全置換術か単顆人工膝関節置換術か)、患者さんの状態、合併症の有無などによって異なりますが、一般的には2週間から4週間程度です。高齢の方や合併症がある場合は、入院期間が長引くこともあります。
入院中は、安静を保ちながら、医師や看護師の指示に従って、適切なケアとリハビリテーションに取り組むことが重要です。
手術直後は痛みがあるため、痛み止めの薬を使用します。この痛みは、炎症反応によるもので、時間とともに徐々に軽快していきます。また、手術創部の感染予防のために抗生剤が投与される場合もあります。
食事は、栄養バランスのとれた病院食が提供されます。糖尿病や高血圧などの基礎疾患がある場合は、それに合わせた食事内容となりますので、ご安心ください。
手術後の痛みと合併症のリスク
人工関節手術は痛みを軽減するための手術ですが、手術後にはある程度の痛みや腫れ、違和感などが残ることがあります。
非変性II型コラーゲン(UC-II)を含む栄養補助食品は、膝の炎症や痛みを軽減する効果が期待でき、手術後の回復をサポートする可能性が示唆されています。
▼変形性膝関節症の手術後の痛みについて、以下でも詳しく解説しています。
人工関節手術には、感染症、血栓症(静脈に血栓ができること)、神経損傷、人工関節の摩耗や緩みなどの合併症のリスクが稀にあります。
感染症は、手術部位に細菌が侵入することで起こり、発熱や腫れ、痛みなどの症状が現れます。
血栓症は、足の静脈に血栓ができて肺に移動すると、肺塞栓症という重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
神経損傷は、手術中に神経が傷つけられることで起こり、しびれや麻痺などの症状が現れることがあります。
人工関節の摩耗や緩みは、長期間使用することで起こり、痛みや機能障害を引き起こす可能性があります。
これらの合併症は稀ですが、発生した場合には適切な治療が必要となります。医師や看護師は、合併症の予防にも力を入れており、早期発見・早期治療に努めています。

人工関節の音と不安
人工膝関節を入れた後、「膝から音がする」と不安に思われる患者さんが多いことに気づきました。これは多くの場合、人工関節のポリエチレンとメタルのコンポーネント間の正常な摩擦音で、問題ないことがほとんどです。
私は術前の説明で「音が出ることがありますが、これは正常です」と必ず伝え、実際に他の患者さんの人工関節の音を聞いてもらうこともあります。
「先生に『この音は正常』と言われて安心しました。今ではこの音が仲間の証のようで愛着さえあります」という患者さんの言葉は、適切な事前説明の重要性を示しています。
リハビリテーションの内容と期間
リハビリテーションは、手術後できるだけ早期に開始することが重要です。リハビリテーションの内容は、人工関節置換術の種類や患者さんの状態に合わせて個別に設定されます。
高脛骨骨切り術(HTO)後の研究結果では、リハビリテーションによって膝の機能改善が見られるだけでなく、内側半月板突出(MME)の減少にも効果があることが示唆されています。
初期のリハビリテーションでは、関節可動域訓練や筋力強化訓練を行います。関節可動域訓練は、膝の曲げ伸ばしの範囲を広げるための訓練です。筋力強化訓練は、太ももの筋肉やふくらはぎの筋肉を鍛えるための訓練です。これらの訓練は、理学療法士の指導のもとで行います。
リハビリテーションの期間は、患者さんの回復状況によって異なりますが、通常は数ヶ月から1年程度かかります。退院後も継続してリハビリテーションを行うことが重要です。
退院後の生活と注意点
退院後は、日常生活の中で膝への負担を減らすように工夫することが大切です。例えば、重いものを持つ、正座、階段の上り下りなどはできるだけ控えるようにしましょう。
また、滑りやすい場所での歩行や急な方向転換にも注意が必要です。
定期的な通院も重要です。医師の診察を受け、リハビリテーションの状況や人工関節の状態をチェックしてもらいましょう。
介護保険や在宅サービスの利用
退院後の生活に不安がある場合は、介護保険や在宅サービスの利用を検討しましょう。
介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定を受けると、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護などのサービスを利用することができます。
また、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談することで、ご自身に合ったサービスを見つけることができます。
▼変形性膝関節症の要介護認定について、以下でも詳しく解説しています。
まとめ

変形性膝関節症と診断され、手術が必要かどうか悩んでいる方にとって、費用や術後の生活は大きな不安要素でしょう。この記事では、人工関節手術の種類や費用内訳、保険適用、そして術後の入院生活やリハビリテーションについて解説しました。
手術費用は高額になりがちですが、健康保険や高額療養費制度の活用、入院期間の短縮、相部屋の選択などで費用を抑えることができます。また、費用の不安があれば、医師や医療ソーシャルワーカーに相談することも可能です。
手術後は、リハビリテーションをしっかり行うことで、日常生活の質を向上させることができます。退院後の生活や介護保険サービスについても理解を深め、安心して手術に臨めるように準備を進めましょう。
参考文献
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-情報提供医師
松本 和樹 Kazuki Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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