膝の痛み、特に立ち上がりや歩き始めの痛み、そして階段の上り下りの困難さに悩まされていませんか?実は、これらの症状は変形性膝関節症のサインかもしれません。
変形性膝関節症は、加齢とともに進行しやすく、放置すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 現在、変形性膝関節症の患者数は増加傾向にあり、特に高齢者で多く見られます。 しかし、適切なケアを行うことで進行を遅らせ、痛みを軽減することが可能です。
この記事では、変形性膝関節症を進行させないための5つのポイント、食事療法、運動療法、ストレッチ、体重管理、そして早期診断の重要性について詳しく解説します。治療法の情報もご紹介いたします。
ひざの痛みを我慢せず、快適な日常生活を送るためのヒントが満載です。ぜひ、読み進めてみてください。
目次
変形性膝関節症を進行させないための5つのポイント

膝の痛みは、日常生活の行動を制限し、QOL(生活の質)を低下させる大きな要因となります。特に、変形性膝関節症は加齢とともに進行しやすく、放置すると日常生活に支障をきたす場合もあります。
しかし、変形性膝関節症は適切なケアを行うことで、進行を遅らせ、痛みを軽減することが可能です。
今日から始められる5つのポイントをご紹介いたしますので、ぜひ今後の生活にお役立てください。
食生活の改善:栄養バランスのとれた食事で関節をサポート
変形性膝関節症の予防・改善において、栄養バランスのとれた食生活は非常に重要です。
特定の食品を摂取するだけでは根本的な解決にはなりませんが、バランスの良い食事は、関節の健康維持に欠かせない栄養素を体内に供給し、軟骨の健康をサポートします。
タンパク質: 私たちの体の組織を作る上で欠かせない栄養素です。肉、魚、卵、大豆製品などに豊富に含まれており、軟骨の主成分であるコラーゲンの生成に不可欠です。
ビタミンC: コラーゲンの生成を助ける働きがあり、果物や野菜に多く含まれています。
ビタミンD: カルシウムの吸収を促進し、骨を丈夫にするために必要な栄養素です。鮭、きのこ類、卵黄などに含まれています。また、適度な日光浴によっても体内で生成されます。
カルシウム: 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品や、小松菜、ひじきなどに含まれ、骨の健康維持に重要な役割を果たします。
グルコサミン・コンドロイチン: 軟骨の構成成分であり、エビ、カニなどの甲殻類に多く含まれています。サプリメントとしても市販されています。
非変性II型コラーゲン(UC-2): 最近の研究では、UC-2が炎症を抑え、軟骨の修復を促進する可能性が示唆されています。エビやカニなどの甲殻類に含まれる成分ですが、サプリメントとしても入手可能です。
▼変形性膝関節症の炎症を抑える食べ物について、以下でも詳しく解説しています。
適度な運動:ウォーキングや水中運動で筋力強化
過度な負荷のかかるトレーニングはひざの痛みを悪化させる恐れがありますが、適度な運動は膝関節周辺の筋肉を強化し、関節を安定させる効果があります。特に、ウォーキングや水中ウォーキングは膝への負担が少ないため、変形性膝関節症の方にもおすすめです。水中では浮力が働くため、関節への負担が軽減されます。
ウォーキング: 1日30分程度を目安に、ご自身のペースで無理なく続けられる範囲で行いましょう。
水中ウォーキング: プールの中で歩くことで、膝への負担を軽減しながら効率的に運動できます。
▼変形性膝関節症におすすめの水中ウォーキングについて、以下でも解説しています。
ストレッチ:関節の柔軟性を高め、可動域を広げる
ストレッチは、関節の柔軟性を高め、可動域を広げる効果があります。お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うとより効果的です。
太ももの前のストレッチ: 大腿四頭筋のストレッチです。壁や椅子につかまり、片方の足を後ろに曲げ、かかとをお尻に近づけるように保持します。
太ももの裏のストレッチ: ハムストリングスのストレッチです。椅子に座り、片方の足を伸ばし、つま先を上に上げるようにします。
ふくらはぎのストレッチ: 壁に手を当て、片方の足を後ろに引き、かかとを床につけたまま、前の足の膝を曲げます。
▼変形性膝関節症に効果的なストレッチを、以下でもご紹介しています。
体重管理:肥満は膝への負担を増大させるため、適切な体重を維持
体重が増加すると、膝関節への負担が増大し、変形性膝関節症の進行を加速させる可能性があります。
適正体重を維持することは、膝の健康を守る上で非常に重要です。わずか3kgの減量でも、歩行時の膝への負担は9kg、階段の上り下りでは20kgも軽減できると言われています。
早期診断と適切な治療:専門医による早期の診断と治療が重要
変形性膝関節症は、早期に発見し適切な治療を開始することで、進行を抑制し症状を改善することができます。膝に違和感を感じたら、早めに整形外科を受診しましょう。
変形性膝関節症の治療には、薬物療法、注射療法、手術療法など様々な方法があります。医師とよく相談し、ご自身の状態に合った治療法を選択することが大切です。SOX9という物質が変形性膝関節症の治療において役割を果たす可能性が示唆されています。

寝る体勢の工夫
意外かもしれませんが、夜間の寝る体勢も膝関節症の進行に影響します。
特に横向きで寝る際、上になった脚の膝が内側に倒れ込むと、関節に余分な負担がかかります。
私は「膝の間に枕を挟む」「仰向けで寝る際は膝の下に小さな枕を置く」といった具体的な工夫を指導していますが、「寝る姿勢を変えただけで、朝起きた時の膝の痛みが明らかに減りました」という患者さんの声をよく聞きます。
私たちが意識していない睡眠中の8時間も、膝の管理にとって重要な時間なのです。
最適な寝る姿勢について、以下でもご紹介しています。よろしければご参考くださいね。
▶変形性膝関節症の痛みを軽減する最適な寝る姿勢とは?
変形性膝関節症の症状と最新の治療法

膝の痛みは、日常生活の行動を制限し、QOL(生活の質)を低下させる大きな要因となります。
特に、変形性膝関節症は加齢とともに進行しやすく、放置すると日常生活に支障をきたす場合があります。軟骨がすり減り、骨と骨が直接ぶつかり合うことで炎症が起こり、痛みが生じる病気です。初期症状を見逃すと、将来的に歩行困難になる可能性も懸念されます。
この章では、変形性膝関節症の症状と最新の治療法について、高齢者の方にもわかりやすく解説します。早期発見と適切な治療で、痛みを和らげ、快適な生活を取り戻しましょう。
変形性膝関節症の主な症状3つ:痛み、腫れ、可動域制限
変形性膝関節症の主な症状は、痛み、腫れ、可動域制限の3つです。 これらの症状は、病気の進行度合いによって変化します。
初期段階では、立ち上がりや歩き始めなどに痛みを感じますが、しばらくすると治まることが多いです。例えば、朝起きた時や、椅子から立ち上がる時に膝に痛みを感じることがあります。この段階では、自覚症状がない場合もあります。
中期になると、痛みが強くなり、正座や階段の上り下りが困難になります。膝の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなり、日常生活に支障が出始めます。関節が腫れて、水が溜まることもあります。これは、炎症によって関節内に滑液が過剰に分泌されることが原因です。
▼変形性膝関節症でひざに水が溜まる症状について、以下でも解説しています。
末期になると、常に痛みがあり、歩行も困難になります。杖や歩行器が必要になることもあります。関節の変形が進行し、O脚になることもあります。これは、膝の内側の軟骨がよりすり減りやすいことが原因です。
薬物療法:痛みや炎症を抑える薬物治療
変形性膝関節症の薬物療法は、主に痛みや炎症を抑えることを目的としています。症状や患者さんの状態に合わせて、内服薬、外用薬、注射薬を使い分けます。
内服薬としては、痛みや炎症を抑える消炎鎮痛剤がよく使われます。胃への負担を軽減した薬もありますので、医師に相談してください。副作用として、胃腸障害などが起こる可能性があります。
外用薬は、痛む部分に直接塗ることで、痛みを和らげます。内服薬と比べて副作用が少ない傾向があります。
注射薬としては、ヒアルロン酸などが関節内に注射されます。これは、関節液の粘性を高め、痛みを軽減する効果があります。
ヒアルロン酸注射:関節液の粘性を高め、痛みを軽減
ヒアルロン酸は、私たちの体の中にもともとある成分で、関節液にも含まれています。関節液は関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割をしています。変形性膝関節症では、この関節液の粘り気が少なくなったり、量が減ったりすることで、関節の動きが悪くなり、痛みが生じます。
ヒアルロン酸注射は、この不足したヒアルロン酸を補うことで、関節の動きを滑らかにし、痛みを軽減する治療法です。一般的には、1週間に1回、計5回の注射を行います。
▼変形性膝関節症に対する注射療法について、以下でも解説しています。
また、脂肪由来幹細胞や間質血管画分を用いた再生医療による最新の治療法も、変形性膝関節症による痛みの軽減に効果があることが示唆されています。
▼変形性膝関節症に対する再生医療について、以下でも解説しています。
高脛骨骨切り術(HTO):変形した骨を矯正する手術
高脛骨骨切り術(HTO)は、変形した骨の形を矯正する手術です。
O脚によって膝の内側に負担がかかり、痛みが生じている場合に有効です。脛骨(すねの骨)の上部を切って、骨の形を矯正し、金属プレートなどで固定します。この手術により、膝への負担が軽減され、痛みが和らぎます。
▼変形性膝関節症の骨切り術のメリットとリスクについて、以下でも解説しています。
HTOは内側半月板の突出を軽減し、膝の機能改善に効果があることが示唆されています。
人工膝関節置換術:損傷した関節を人工関節に置き換える手術
人工膝関節置換術は、傷ついた膝関節を人工関節に置き換える手術です。
変形性膝関節症が進行し、痛みや機能障害が強い場合に検討されます。手術では、傷ついた軟骨や骨を取り除き、人工関節を埋め込みます。人工関節は、金属やプラスチックでできており、耐久性に優れています。
▼変形性膝関節症の人工関節手術について、以下もご参考ください。
ロボット支援型とナビゲーション支援型の人工膝関節置換術の比較が行われ、両者に大きな差がないことが報告されています。
まとめ

変形性膝関節症は、適切なケアを行うことで進行を遅らせ、痛みを軽減できることをご理解いただけましたでしょうか?
栄養バランスの良い食事、適度な運動、ストレッチ、体重管理は、今日からでも始められる対策です。
特に、ウォーキングや水中ウォーキングは、膝への負担が少ないため、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。
また、早期発見・早期治療も大切です。膝の違和感を感じたら迷わず整形外科を受診し、専門医に相談しましょう。
あなたの生活の質を高め、快適な毎日を送るためにも、これらのポイントを参考に、変形性膝関節症の予防・改善に取り組んでみてくださいね。
参考文献
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- Gupta A, Maffulli N. “Undenatured type II collagen for knee osteoarthritis.” Annals of medicine 57, no. 1 (2025): 2493306.
- Huang Y, Wang Z. “Therapeutic potential of SOX family transcription factors in osteoarthritis.” Annals of medicine 57, no. 1 (2025): 2457520.

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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