下肢アライメントから見る変形性膝関節症の評価と予後予測 | エビデンスに基づくガイド

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膝のその痛み、脚の並び方(下肢アライメント)が大きく関係しているかもしれません。

変形性膝関節症は、軟骨がすり減り炎症を起こす進行性の病気で、日常生活の質を低下させる大きな原因となります。

この記事では、下肢アライメントに着目した変形性膝関節症の評価方法を4つのポイントで解説。 X線評価で重症度を測る「Kellgren-Lawrence分類」といった専門的な情報も交えながら、ご自身の状態をチェックするための具体的な方法を紹介します。

適切な評価と対策で、痛みを軽減し、より快適な日常生活を取り戻しましょう。

変形性膝関節症における下肢アライメントの評価4つのポイント

変形性膝関節症の痛みや進行にお悩みの方は、少なくないでしょう。膝の痛みは、日常生活の質を大きく低下させる可能性があります。

実は、変形性膝関節症の評価において、下肢アライメントは非常に重要な要素です。

この記事では、下肢アライメント(脚の並び方)に着目した変形性膝関節症の評価方法について、4つのポイントに絞ってわかりやすく解説します。

適切な評価は、より効果的な治療と日常生活の改善、そして将来的な手術の必要性を減らすことにも繋がりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

静的アライメント評価:立位での膝関節内外反、下肢長差などをチェック

静的アライメント評価とは、静止した状態で下肢の配列をチェックする方法です。

具体的には、立位で膝関節の角度や下肢の長さを測定します。

O脚(内反膝)とは、膝が外側に弯曲している状態で、X脚(外反膝)とは、膝が内側に弯曲している状態です。

これらの変形は、膝関節の内側や外側に過剰な負担をかけ、変形性膝関節症の進行を早める可能性があります。

また、左右の下肢の長さに差がある場合も、片方の膝に負担がかかり、変形性膝関節症のリスクを高めることがあります。

生まれたときから左右の脚の長さが違う場合もあれば、成長期に骨盤の歪みなどによって脚の長さに差が出てくる場合もあります。

立位での膝関節内外反や下肢長差をチェックすることで、変形性膝関節症の評価だけでなく、将来的なリスク予測にも役立ちます。

Kellgren-Lawrence分類は、X線写真による変形性膝関節症の重症度分類で、グレード0(正常)からグレード4(重度)までの5段階で評価されます。この分類を用いることで、客観的な評価が可能になります。

動的アライメント評価:歩行時の膝関節の動き、足部の接地などを観察

動的アライメント評価は、歩行時の下肢の動きをチェックする方法です。

具体的には、歩行時の膝関節の動きや足部の接地の様子を観察します。

変形性膝関節症では、膝の痛みが原因で歩行時に膝をかばうような動きが出てしまうことがあります。

例えば、膝が伸び切らなかったり、足が地面に着くときに膝が内側に入ってしまう(knee-in)などが挙げられます。

これらの動きの異常は、変形性膝関節症の進行度合いを評価する上で重要な情報となります。

また、足部の接地方法も重要です。

例えば、過回内(足が内側に倒れ込む)があると、膝関節への負担が増加し、変形性膝関節症の悪化につながる可能性があります。

画像検査による評価:X線撮影で関節裂隙の狭小化や骨棘形成などを確認

画像検査の中でも、X線撮影は変形性膝関節症の評価に最も広く用いられています。費用も比較的安価で、広く普及している検査です。

X線撮影では、関節裂隙(関節の隙間)の狭小化、骨棘形成、骨硬化、骨端変形といった変形性膝関節症の特徴的な所見を確認することができます。

関節裂隙の狭小化は、軟骨のすり減りを反映しており、変形性膝関節症の進行度合いを示す重要な指標です。

骨棘は、骨の変形によって生じる突起物で、これも変形性膝関節症の特徴的な所見です。

これらのX線所見は、変形性膝関節症の診断や重症度判定に役立ちます。

X線撮影は簡便で有用な検査ですが、初期の変形性膝関節症では変化が軽微なため、見逃される可能性もあります。

触診による評価:膝関節周囲の筋肉や靭帯の緊張、圧痛などを確認

触診は、医師が手で膝関節周囲の状態を直接確認する方法です。

レントゲン検査などの画像診断とは異なり、患者さんの訴えを直接確認できるため、重要な診察の一つです。

触診では、膝関節周囲の筋肉や靭帯の緊張、圧痛、腫脹、熱感などを確認します。

変形性膝関節症では、炎症によって膝関節周囲が腫れたり、熱を持ったりすることがあります。

また、筋肉や靭帯の緊張や圧痛も重要な所見です。

これらの情報は、変形性膝関節症の病態を理解し、適切な治療方針を決定するために役立ちます。

触診による評価は、X線などの画像検査ではわからない情報を提供してくれるため、重要な評価方法と言えるでしょう。

例えば、膝蓋大腿関節(膝のお皿の関節)のチリチリ、パリパリとした捻髪音(ねんぱつおん)は、変形性膝関節症の初期症状の可能性を示唆しています。

これらの評価を総合的に行うことで、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を決定することができます。

松本 和樹
松本 和樹

日常生活動作の聞き取り

レントゲンやMRIなどの画像検査も重要ですが、私は「どんな動作が辛いですか?」という質問から多くの情報を得ています。特に「階段の昇り」「階段の降り」「正座」「しゃがみ込み」「長時間の座位」のどれが最も困難かを聞くことで、膝のどの部分に問題があるかの手がかりになるのです。

例えば階段の降りが特に痛い場合は膝蓋大腿関節(膝のお皿と太ももの骨の間の関節)に、正座が困難な場合は内側の関節に問題がある可能性が高いです。

「先生は詳しく聞いてくれるので安心します」という言葉をよく聞きますが、この丁寧な聞き取りが適切な治療計画の基盤になると考えています。

下肢アライメントと変形性膝関節症の予後予測

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みが生じる進行性の病気です。この進行には、下肢アライメント(脚の並び方)が深く関わっています。

適切なアライメントを維持することは、変形性膝関節症の予防や進行抑制に非常に重要です。

アライメント異常と変形性膝関節症の進行度合いの関係性

下肢アライメントの異常、例えばO脚やX脚は、膝関節にかかる負担を不均等にします。

O脚では膝関節の内側、X脚では外側に過剰な負担がかかり、軟骨の摩耗と炎症を促進し、変形性膝関節症の進行を加速させるのです。

これはドアの蝶番を想像するとわかりやすいでしょう。蝶番が歪んでいると、ドアの開閉がスムーズにいかず、特定の部分に負担がかかり、早く壊れてしまいます。膝関節も同様に、アライメント異常があると特定の部位に負担が集中し、軟骨の損傷が進行しやすくなります。

X線画像で確認できる関節裂隙の狭小化、骨棘形成、軟骨下骨硬化といった所見は、アライメント異常の程度と相関するケースが多く、変形性膝関節症の進行度合いを客観的に評価する上で重要な指標となります。

初期の変形性膝関節症ではX線変化が軽微なため、見逃される可能性も考慮しなければなりません。MRI検査を用いることで、より詳細な軟骨や靭帯の状態を把握することが可能になります。

O脚・X脚における変形性膝関節症の予後予測

O脚やX脚があると、変形性膝関節症の予後にも影響が出ます。

特にO脚は、膝関節内側の軟骨が早期に摩耗しやすく、疼痛の悪化や運動機能の低下に繋がりやすいです。X脚も、外側の軟骨への負担が大きいため、進行性の変形が見られることがあります。

これらのアライメント異常は、日常生活動作にも影響を及ぼします。歩行や階段昇降などの動作で痛みが増強し、活動性が低下するだけでなく、転倒のリスクも高まる可能性があります。

O脚の患者さんの中には、将来的に人工膝関節置換術が必要になる可能性も考慮する必要があります。一方、軽度のX脚の場合、適切な運動療法や装具療法によって症状の進行を抑制できる可能性があります。

▼変形性膝関節症のO脚との関係について、以下でも詳しく解説しています。

適切なアライメントを維持するための対策と日常生活での注意点

適切なアライメントを維持するために、日常生活での姿勢や動作、靴、体重に気を配る必要があります。

正しい姿勢を意識することは非常に重要です。立っているときや座っているときに、背筋を伸ばし、骨盤を立てることを意識しましょう。猫背や反り腰は下肢アライメントに悪影響を与える可能性があります。

靴選びも大切です。ヒールが高すぎる靴や底が薄すぎる靴は避けるべきです。足や膝への負担が増大し、アライメントの悪化や変形性膝関節症の進行を招く可能性があります。

また、過剰な体重は膝関節への負担を増大させます。適正体重を維持することで、膝への負担を軽減し、変形性膝関節症の予防に繋がります。

急激な動作も膝関節に大きな衝撃を与えます。急な方向転換や飛び降りるといった動作は避け、ゆっくりとした動作を心がけましょう。

運動療法による下肢アライメント改善効果と具体的な方法

運動療法は、下肢アライメントの改善に効果的です。

具体的には、大腿四頭筋訓練、ハムストリングス訓練、内転筋・外転筋訓練などがあります。

これらの筋肉を鍛えることで膝関節の安定性を高め、アライメント異常を改善し、膝の痛みを軽減することができます。

運動療法は、患者さんの状態に合わせて適切な方法を選択することが重要です。理学療法士などの専門家の指導を受けることで、より効果的な運動療法を実施できます。

▼変形性膝関節症の運動療法について、以下もご参考ください。

装具療法による下肢アライメント矯正効果と具体的な種類

装具療法は、装具を用いて下肢アライメントを矯正し、膝関節の負担を軽減する方法です。足底板、膝サポーター、矯正装具など、様々な種類の装具があります。

足底板は、足部のアーチをサポートすることで下肢アライメントを改善します。扁平足やO脚の方に有効です。膝サポーターは、膝関節を外部から支持することで安定性を高めます。矯正装具は、O脚やX脚の矯正を目的としています。

装具療法も、医師や理学療法士などの専門家と相談し、適切な装具の種類や使用方法について指導を受けることが大切です。

▼変形性膝関節症の医療用サポーターについて、以下でも解説しています。

まとめ

変形性膝関節症 評価

この記事では、変形性膝関節症の評価と予後予測における下肢アライメントの重要性について解説しました。静的・動的アライメント評価、画像検査、触診など、多角的な評価方法を理解することで、より正確な診断と適切な治療選択に繋がります。

O脚やX脚といったアライメント異常は、膝関節への負担を偏らせ、変形性膝関節症の進行を加速させる可能性があります。しかし、適切な運動療法や装具療法、日常生活での注意点を守ることで、進行を遅らせたり、痛みを軽減したりすることが可能です。

ご自身の膝の健康を守るためにも、この記事で紹介した評価方法を参考に、専門家への相談も検討してみてください。早期発見・早期治療は、健康な膝を維持するための第一歩です。

参考文献

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  2. Lee LS, Chan PK, Fung WC, Chan VWK, Yan CH, Chiu KY. “Imaging of knee osteoarthritis: A review of current evidence and clinical guidelines.” Musculoskeletal care 19, no. 3 (2021): 363-374.
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