変形性膝関節症、手術後の生活の注意点と合併症や予防法について

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膝の人工関節置換手術

手術自体は成功しても、その後の生活や合併症への不安を抱えていませんか?

この手術は、痛みや生活の質が改善する可能性を秘めていますが、適切なリハビリと日常生活の注意点を守ることは、術後の回復に大きく影響します。

1999年の調査では年間約40万人だったうつ病患者が、2020年には150万人にまで増加しました。

現代社会のストレス増加と同様に、加齢に伴う膝の変形も増加傾向にあります。

この記事では、手術後の生活で特に注意すべき点、合併症の種類と予防法、そしてスムーズな職場復帰のための計画まで、高齢者の方にもわかりやすく解説します。

変形性膝関節症の手術後リハビリと生活での注意点

変形性膝関節症 手術後の生活

膝の人工関節置換手術が無事終わり、いよいよリハビリと新しい生活が始まります。手術後は、痛みや不安な気持ち、今後の生活への期待など様々な感情が入り混じる時期でしょう。

この先どうなるのだろうか…と、不安でいっぱいになっている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ご安心ください。適切なリハビリと生活習慣の改善によって、より良い日常生活を送ることができるようサポートします。

この章では、手術後の生活で特に注意すべき点と、スムーズにリハビリを進めるためのポイントを、高齢の患者様にもわかりやすくご説明します。

焦らず、ゆっくりと、一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。

手術後の日常動作のポイント

手術後は、これまで何気なく行っていた日常動作にも注意が必要です。

なぜなら、手術後の膝は、まだ完全には回復していないため、以前と同じように動かすと負担がかかり、痛みや腫れが増してしまう可能性があるからです。

安全に日常生活を送るためのポイントを一緒に確認していきましょう。

衣服の着脱: 椅子に腰掛けて行うようにしましょう。ズボンや靴下を履くときは、手術した方の足から先に、脱ぐときは手術していない方の足から先にすると、スムーズです。床に座って無理に足を曲げようとすると、膝に負担がかかってしまうので注意が必要です。

トイレ: 和式トイレは膝を深く曲げる必要があるため、負担が大きくなってしまいます。できる限り洋式トイレを使用するようにしましょう。もし、自宅が和式トイレしかない場合は、便器に高さを出す補助便座を設置する、洋式トイレにリフォームするなど、環境を整えることを検討してみましょう。

入浴: 手術後の傷が完全に治るまでは、入浴はシャワー浴にしましょう。傷が治癒した後も、浴槽への出入りは転倒の危険性があるため十分に注意する必要があります。滑り止めマットや手すりなどを設置することで安全性を高めることができます。また、シャワーチェアを使用すると、膝への負担を軽減しながら入浴することができます。

買い物: 重い荷物を持つと膝への負担が大きくなってしまい、痛みや腫れの原因になる可能性があります。買い物に行く際は、カートを利用するようにし、10kg以上の荷物は持たないようにしましょう。どうしても重い荷物を持つ必要がある場合は、ご家族に手伝ってもらうなど、周りの人にサポートをお願いしましょう。

移動: 階段の上り下りでは、必ず手すりを利用し、一段ずつゆっくりと移動しましょう。また、杖や歩行器を使用することで、膝への負担を軽減し、安定した歩行を確保することができます。無理のない範囲で歩くことを心がけましょう。

自転車: 平坦な道での自転車の運転は比較的早期から可能となる場合もありますが、坂道は降りて押すようにしましょう。手術後の膝の状態によっては、自転車に乗ることが難しい場合もありますので、主治医の指示に従うようにしてください。

リハビリテーションの進め方

リハビリテーションは、手術後の回復過程において非常に重要な役割を担います。

リハビリテーションの主な目的は、膝関節の可動域を広げ、筋力を強化し、日常生活動作をスムーズに行えるようにすることです。

開始時期: 人工膝関節全置換術後は、手術の翌日、もしくは翌々日から開始します。人工膝関節部分置換術後では、状態が良ければ手術の翌日から始めることもあります。開始時期は、患者様の状態や手術の種類によって異なるため、担当医の指示に従ってください。

内容: 初期のリハビリでは、ベッド上での膝の曲げ伸ばし運動や、CPM(持続的他動運動:Continuous Passive Motion)機器を用いた運動を行います。CPMとは、機械を使って膝関節を自動的に曲げ伸ばしする装置のことで、手術後の関節の拘縮(こうしゅく:関節が硬くなって動きにくくなること)を予防し、可動域の改善を促す効果があります。痛みが落ち着いてきたら、徐々に歩行訓練や筋力トレーニングなどを取り入れていきます。

進め方: リハビリテーションは、医師や理学療法士の指示に従って進めることが重要です。無理のない範囲で、徐々に負荷を上げていくことが大切です。痛みがある場合は、すぐに伝えるようにしましょう。文献においても、人工膝関節置換術後の良好な転帰を得るためには、術前計画が不可欠であると報告されています。

目標: 最終的な目標は、正座やあぐらなどの生活動作を無理なく行えるようになることです。ただし、患者様によっては正座やあぐらが難しい場合もあります。焦らずに、ゆっくりと時間をかけてリハビリに取り組みましょう。

食事や運動療法の重要性

手術後の回復を促進し、再発を予防するためには、適切な食事と運動療法が欠かせません。

食事: バランスの取れた食事を心がけることは、健康な身体を維持するために非常に重要です。
特に、タンパク質、カルシウム、ビタミンDは、骨や筋肉の健康に欠かせない栄養素です。
タンパク質は、肉、魚、卵、大豆製品などに多く含まれています。
カルシウムは、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、小魚、緑黄色野菜などに多く含まれています。
ビタミンDは、鮭、いわし、きのこ類などに多く含まれています。
また、適正な体重を維持することも大切です。肥満は膝関節への負担を増大させるため、適切なカロリーコントロールを行いましょう。

運動: ウォーキング、水泳、水中ウォーキング、サイクリングなど、膝に負担の少ない有酸素運動がおすすめです。有酸素運動は、心肺機能の向上、血行促進、ストレス軽減などの効果があります。ただし、激しい運動や膝を強くひねる運動は避けるようにしましょう。

職場復帰に向けた計画

職場復帰の時期は、仕事の内容や手術後の回復状況、人工関節置換術におけるアライメント(骨の配列)によって異なります。

デスクワーク: デスクワーク中心の仕事は、比較的早期に復帰できる場合が多いです。しかし、長時間同じ姿勢でいると膝がこわばる可能性があるので、こまめに休憩を取り、軽いストレッチなどを行うようにしましょう。1時間ごとに5分程度の休憩を取り、立ち上がって歩いたり、膝の曲げ伸ばし運動をすることをおすすめします。

立ち仕事や力仕事: 立ち仕事や力仕事は、膝への負担が大きいため、復帰時期は慎重に判断する必要があります。主治医や理学療法士と相談し、無理のない範囲で徐々に仕事に慣れていくようにしましょう。

復帰後の注意点: 職場復帰後も、無理をせず、休憩をこまめにとることが大切です。痛みや違和感がある場合は、すぐに上司や同僚に相談するようにしましょう。

上記の情報は一般的なものであり、すべての方に当てはまるわけではありません。 個別の状況については、担当の医師にご相談ください。

合併症とその予防法

変形性膝関節症 手術後の生活

手術は成功に終わり、これから始まるリハビリと新しい生活に期待を膨らませている一方で、合併症の可能性について不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

手術を受けるということは、メリットだけでなくリスクも伴うということを理解しておくことが大切です。

この章では、変形性膝関節症の手術後に起こりうる合併症の種類や症状、そして合併症を防ぐための予防法について、高齢の患者様にもわかりやすいように具体的にお話ししていきます。

合併症について正しく理解し、不安を軽減することで、より前向きにリハビリや日常生活に取り組むことができるはずです。

手術後の合併症の種類

変形性膝関節症の手術後には、残念ながらいくつかの合併症が起こる可能性があります。

合併症は、術後の経過に大きな影響を与える可能性があるため、どのような合併症が起こりうるのかを事前に知っておくことは非常に重要です。

主な合併症の種類と、その症状について詳しく見ていきましょう。

血栓症(けっせんしょう): 手術後、足の静脈に血の塊(血栓)ができてしまうことがあります。血栓症になると、ふくらはぎの痛みや腫れ、熱感などの症状が現れます。さらに、この血栓が肺に移動してしまうと、肺塞栓症(はいそくせんしょう)という命に関わる危険な状態になる可能性があります。肺塞栓症では、息切れや胸の痛みなどの症状が現れます。

感染症: 手術部位の感染症は、まれではありますが、重篤な合併症です。感染症を発症すると、発熱、患部の痛みや腫れ、膿などの症状が現れます。特に、人工関節置換術を受けた場合、感染が人工関節にまで及ぶと、再手術が必要となることもあります。

人工関節のゆるみ: 人工関節置換術を受けた場合、時間の経過とともに人工関節がゆるんでしまうことがあります。人工関節のゆるみは、痛みや不安定感、異音などの症状を引き起こし、再手術が必要になるケースもあります。人工膝関節置換術において、骨の配列(アライメント)を適切に行うことで、人工関節の寿命を延ばし、ゆるみを予防することに繋がります。

神経・血管損傷: 手術中に、周辺の神経や血管が損傷してしまうことがあります。これは非常にまれなケースですが、しびれや麻痺、血行不良などの症状が現れることがあります。

その他: その他にも、膝の曲げ伸ばしが難しくなる拘縮(こうしゅく)や、傷の痛みや腫れが長引くといった合併症が起こる可能性があります。

合併症を防ぐためのセルフケア

合併症のリスクを減らすためには、患者様ご自身で行えるセルフケアが非常に重要です。

セルフケアを積極的に行うことで、合併症を予防し、よりスムーズな回復を目指しましょう。

規則正しい生活: 規則正しい生活を送ることは、健康な身体を維持するために非常に重要です。質の高い睡眠を十分にとり、バランスの取れた食事を摂るなど、生活リズムを整えましょう。

適度な運動: 主治医の指示に従って、無理のない範囲で適度な運動を行いましょう。適度な運動は、血行促進や筋力維持に役立ち、合併症のリスクを軽減する効果が期待できます。術後のリハビリテーションにおいても、患者の状態に合わせた適切な運動プログラムを実施することで良好な転帰が期待できます。

清潔を保つ: 手術部位を清潔に保つことは、感染症予防に不可欠です。傷口を清潔に保ち、手洗いうがいをこまめに行うようにしましょう。

弾性ストッキングの着用: 血栓症予防のために、医師の指示に従って弾性ストッキングを着用しましょう。弾性ストッキングは、足の血行を促進し、血栓の形成を防ぐ効果があります。

禁煙: 喫煙は血行を悪くし、合併症のリスクを高めるため、禁煙を強くお勧めします。

松本 和樹
松本 和樹

異常サインの見分け方!

手術後に起こる症状のうち、どれが「正常な回復過程」で、どれが「要注意サイン」なのか、患者さんにとって判断は難しいものです。

私は退院時に「すぐに連絡すべき症状チェックリスト」を渡し、特に「急な痛みの増加」「傷口からの液体の流出」「発熱」「ふくらはぎの腫れと痛み」の4つに注意するよう説明しています。

一方で、「動かした後の鈍い痛み」「正座ができないこと」「階段の上り下りの困難さ」などは回復過程で徐々に改善する正常な症状だと安心していただけています。

定期的な通院の重要性

手術後の経過観察のため、定期的に病院を受診することは非常に重要です。

定期的な診察は、合併症の早期発見・早期治療につながるだけでなく、患者様の不安や疑問を解消する場にもなります。

医師の指示に従って、必ず定期的に受診しましょう。診察時には、日常生活での変化や気になる症状、困っていることなどを医師に相談するようにしてください。

精神的なサポートの必要性

手術後には、身体的な負担だけでなく、精神的な負担も大きくなることがあります。

痛みや不安、日常生活への適応の難しさなど、さまざまなストレスを感じることもあるでしょう。

そのような時は、一人で抱え込まずに、家族や医療スタッフ、友人などに相談してみましょう。必要に応じて、カウンセリングなどの専門的なサポートを受けることも有効です。

まとめ

変形性膝関節症 手術後の生活

変形性膝関節症の手術後の生活は、リハビリや合併症への不安など、様々な思いを抱える時期ですね。

でも、大丈夫。適切なケアと前向きな気持ちで、きっと快適な生活を取り戻せます。

日常生活では、衣服の着脱や入浴、買い物など、今まで何気なく行っていた動作にも注意が必要になります。無理せず、周りの人にサポートをお願いしながら、徐々に慣れていきましょう。

リハビリは、医師や理学療法士の指示に従い、焦らずゆっくりと進めていくことが大切です。 食事はバランス良く、適度な運動も取り入れながら、健康的な生活習慣を身につけましょう。

職場復帰についても、仕事内容や回復状況に合わせて無理のない計画を立てましょう。 合併症は早期発見・早期治療が重要です。定期的な通院を忘れずに、気になることがあれば、医師に相談しましょう。

そして何より大切なのは、前向きな気持ちを持つこと。不安な時は、一人で抱え込まず、家族や医療スタッフに相談してくださいね。きっと、笑顔で過ごせる日々が待っています。

参考文献

  1. Rossi R, Cottino U, Bruzzone M, Dettoni F, Bonasia DE and Rosso F. “Total knee arthroplasty in the varus knee: tips and tricks.” International orthopaedics 43, no. 1 (2019): 151-158.
  2. Karasavvidis T, Pagan Moldenhauer CA, Haddad FS, Hirschmann MT, Pagnano MW and Vigdorchik JM. “Current Concepts in Alignment in Total Knee Arthroplasty.” The Journal of arthroplasty 38, no. 7 Suppl 2 (2023): S29-S37.

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