変形性膝関節症の初期症状を見逃すな!基礎知識を医師が解説

変形性膝関節症 初期症状
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膝の痛み、年齢のせいにしていませんか?実はそれ、変形性膝関節症の初期症状かもしれません。

階段の上り下りや立ち上がり、何気ない動作での違和感や軽い痛み。これらは、放置すると日常生活に大きな支障をきたす変形性膝関節症のサインです。

高齢の方にとって健康寿命を維持するためにも、初期症状を見逃さないことが重要です。例えば、72歳の女性が6ヶ月に渡り左膝の断続的な痛みを訴え、MRI検査を受けた結果、両膝に軽度から中等度の変形性膝関節症と診断された症例も報告されています。

この記事では、変形性膝関節症の初期症状から末期症状の特徴、そして最新の治療法まで、医師がわかりやすく解説します。

ご自身の膝の違和感、少しでも気になったら、ぜひこの記事を読んでみてください。

変形性膝関節症の初期症状と進行段階における症状の変化

変形性膝関節症 初期症状

階段の上り下りや立ち上がる時、何気なく感じる違和感や軽い痛み、もしかすると、変形性膝関節症の初期症状かもしれません。

変形性膝関節症は、放置すると徐々に進行し、日常生活に大きな支障をきたす病気です。高齢の方にとって、健康寿命を維持するためにも、初期症状を見逃さないことが非常に重要です。

初期症状:違和感や軽い痛み、動作開始時のこわばり

初期症状は、膝の違和感や軽い痛み、そして動作開始時のこわばりです。

朝起きた時や、しばらく座っていた後に立ち上がろうとする時、歩き始めなどに「あれ?なんだか膝が動かしにくいな」「少し重たい感じがするな」といった漠然とした違和感を感じるかもしれません。

高齢になると、多くの人が「年のせいかな」と安易に考えてしまいがちです。しかし、実はこれが変形性膝関節症の重要なサインである可能性があります。

具体的には、次のような症状が現れます。

  • 立ち上がりや歩き始めに膝が痛む、違和感がある。
  • 階段の昇降時、特に下りる時に痛みを感じる。
  • 正座やあぐら、和式トイレなど、膝を深く曲げる姿勢がつらい。
  • 長時間歩いた後に膝が重だるくなる。
  • 膝を曲げ伸ばしする時に、ゴリゴリ、カクカクといった音が鳴る。

これらの症状は、軟骨の表面が少しザラザラしてきた状態と言えるでしょう。ちょうど、新品のタイヤの表面が少しすり減ってきたようなイメージです。この段階では、痛みもそれほど強くなく、日常生活に大きな支障がないため、放置してしまう方も少なくありません。

しかし、適切なケアをこの段階から始めることで、症状の進行を遅らせる、あるいは食い止めることができるのです。

72歳の女性が6ヶ月に渡り左膝の断続的な痛みを訴え、MRI検査を受けた結果、両膝に軽度から中等度の変形性膝関節症と診断された症例も報告されています。ご自身の膝の違和感に少しでも気づいたら、まずは専門医に相談してみましょう。

松本 美衣
松本 美衣

天気や気圧の変化に伴う痛みはありませんか?

私の診療で特に興味深いと感じるのは、変形性膝関節症の初期段階から、多くの患者さんが「天気が悪くなると膝が痛む」と報告することです。これは科学的に完全に解明されているわけではありませんが、気圧の低下が関節内の圧力バランスに影響し、神経終末を刺激することが一因かもしれません。

60代の女性患者さんは「私の膝は天気予報より正確。雨が降る前日から痛み出すんです」と話していました。このような「天気痛」が初期症状として現れる場合、私は患者さんに「気圧が下がる前に温めておく」「サポーターで軽く圧迫しておく」などの予防策を指導しています。

この症状は無視されがちですが、実は軟骨や滑膜の微細な変化が始まっているサインであり、早期の対策が重要だと考えています。

中期症状:安静時にも痛み、正座や階段昇降の困難

中期になると、初期の症状に加えて、安静時にも痛みを感じるようになります。正座や階段の昇降が困難になるだけでなく、膝の曲げ伸ばしの範囲が狭くなり、O脚気味になる方もいます。

初期は「歩き始めだけ少し痛む」程度だったのが、「常にジンジンと痛む」「夜も痛みで目が覚める」など、痛みの程度も増してきます。

中期に見られる具体的な症状は以下の通りです。

  • 安静時や夜間にも痛みを感じるようになる。
  • 膝の腫れや熱感がある。
  • 膝に水が溜まる。
  • 膝を曲げ伸ばしするのがつらい。
  • O脚が進行する。
  • 階段の上り下りだけでなく、平地を歩くのもつらくなる。

中期では、軟骨のすり減りがさらに進行し、炎症が起きている状態です。軟骨がすり減ると、クッションの役割を果たしていた軟骨が薄くなり、骨と骨が直接ぶつかり合うことで炎症が起こり、痛みや腫れが生じます。

この段階では、医療機関を受診し、専門的な治療を受けることが重要です。

末期症状:激しい痛み、変形によるO脚/X脚、歩行困難

末期になると、軟骨はほとんどすり減ってしまい、骨と骨が直接こすれ合っている状態です。激しい痛みが続くようになり、O脚やX脚が顕著になります。

歩行が困難になり、杖や歩行器が必要になる方もいます。日常生活に大きな制限がかかり、これまで当たり前にできていたことができなくなってしまうため、身体的にも精神的にも大きな負担となります。

末期の変形性膝関節症では、以下のような症状が現れます。

  • 常に激しい痛みがある。
  • 膝が変形し、O脚やX脚が目立つようになる。
  • 膝がほとんど曲がらない、伸びない。
  • 歩くのが困難になり、杖や車椅子が必要になる。
  • 寝返りを打つのもつらい。

この段階では、人工関節置換術などの手術が必要になるケースがほとんどです。変形性膝関節症は進行性の病気であり、放置すると症状が悪化していきます。初期症状に気づいたら、初期の段階で早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

変形性膝関節症の治療法と予防ケア

変形性膝関節症 初期症状

立ち上がるときや階段の上り下り、正座をするときにひざの痛みが強くなる方は、変形性膝関節症かもしれません。

スポーツでのひざへの負荷や肥満など原因はさまざまですが、高齢になるとどうしても膝に負担がかかりやすくなります。

長年使い続けてきたわけですから、当然と言えば当然です。しかし、だからといって諦める必要はありません。適切な治療と予防ケアで、痛みを和らげ、快適な生活を送ることは十分に可能です。

この記事では、変形性膝関節症の治療法と予防ケアについて、高齢者の方にもわかりやすく解説しますので、ご自身やご家族の健康のために、ぜひ参考にしてみてください。

変形性膝関節症は進行性の病気であり、放置すると症状が悪化し、将来的に人工関節が必要となるリスクが高まると言われています。ですから、少しでも違和感を感じたら、早めに医療機関を受診することが重要です。

保存療法:薬物療法、運動療法、ヒアルロン酸注射

保存療法とは、手術をせずに痛みや炎症を抑え、膝の機能を維持・改善するための治療法です。

変形性膝関節症の初期段階では、まずこの保存療法が試みられます。具体的には、薬物療法、運動療法、ヒアルロン酸注射など、患者さんの状態に合わせた様々な方法があります。

  • 薬物療法: 痛みや炎症を抑える薬を内服したり、湿布を貼ったりします。内服薬としては、鎮痛剤や消炎鎮痛剤が用いられます。湿布薬は、炎症を抑える成分が含まれており、痛みを和らげる効果があります。


  • 運動療法: 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える運動や、膝の関節の動きをスムーズにする体操などを行います。大腿四頭筋は、膝を支える重要な筋肉です。この筋肉が弱ると、膝への負担が大きくなり、痛みが悪化しやすくなります。運動療法は、理学療法士などの専門家の指導を受けることがおすすめです。専門家の指導のもと、適切な運動を行うことで、より効果的に膝の機能を改善することができます。


  • ヒアルロン酸注射: 関節内の潤滑油の役割を果たすヒアルロン酸を関節内に注射することで、痛みを和らげ、動きを滑らかにします。ヒアルロン酸は、関節液の主成分であり、関節の動きをスムーズにする働きがあります。変形性膝関節症では、このヒアルロン酸が減少しているため、注射によって補うことで、症状の改善を図ります。1週間おきに、計5回注射するのが一般的です。


手術療法:人工関節置換術、高位脛骨骨切り術

保存療法で効果がない場合や、症状が進行している場合は、手術療法が検討されます。代表的な手術として、人工関節置換術高位脛骨骨切り術があります。

  • 人工関節置換術: 傷んでしまった膝関節を人工関節に取り替える手術です。人工関節は、金属やプラスチックで作られており、長期間にわたって膝の機能を維持することができます。重度の変形性膝関節症の患者さんにとって、痛みを和らげ、日常生活の質を向上させるための有効な治療法です。


  • 高位脛骨骨切り術: 膝関節の負担を軽減するために、脛骨(すねの骨)を切って骨の形を変える手術です。比較的若い患者さんや、人工関節置換術が適さない患者さんに適応されます

▼変形性膝関節症の手術については、以下でも詳しく解説しています。併せてお読みください。

予防ケア:適度な運動、体重管理、ストレッチ

変形性膝関節症は、日常生活での予防ケアも重要です。適切なケアを行うことで、発症のリスクを減らし、進行を遅らせることができます。

  • 適度な運動: ウォーキングや水泳など、膝に負担の少ない運動を続けることで、膝周りの筋肉を鍛え、関節の動きをスムーズに保つことができます。過度な運動は逆効果になる場合があるので、ご自身の体力に合わせて無理なく続けられる運動を選びましょう。


  • 体重管理: 体重が増えると膝への負担が大きくなり、症状が悪化しやすくなります。適切な体重を維持することが大切です。1kgの体重増加は、膝には3〜6kgの負担増に相当すると言われています。


  • ストレッチ: 股関節や膝周りの筋肉をストレッチすることで、関節の柔軟性を保ち、痛みを予防することができます。入浴後など、体が温まっている時に行うと効果的です。


最新の治療法と研究:再生医療、遺伝子治療

変形性膝関節症の治療は日々進歩しています。近年注目されているのが、再生医療です。

  • 再生医療: 患者さん自身の細胞や組織を使って、傷ついた軟骨を再生させる治療法です。自分の細胞を使うため、拒絶反応などのリスクが低いというメリットがあります。

▼変形性膝関節症の再生医療について、種類や特徴を詳しく解説しています。こちらもご参考ください。

専門医の選び方:日本整形外科学会専門医、日本人工関節学会専門医

変形性膝関節症の治療を受ける際には、専門医を選ぶことが大切です。日本整形外科学会専門医日本人工関節学会専門医の資格を持つ医師は、専門的な知識と技術を持っているため、安心して治療を任せられます。

これらの専門医を探すには、学会のウェブサイトなどを参考にしてください。適切な治療を受けることで、症状を改善し、より快適な生活を送ることができるでしょう。

まとめ

変形性膝関節症 初期症状

この記事では、変形性膝関節症の初期症状から末期症状、そして治療法や予防ケアまでを幅広く解説しました。

初期症状は軽い痛みや違和感、動作開始時のこわばりなど、見逃しやすいものが多いです。しかし、これらのサインを見逃すと、症状が進行し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

「年のせいかな」と安易に考えず、少しでも気になる症状があれば、早めに専門医に相談することが大切です。

適切な治療と予防ケアによって、痛みを和らげ、快適な生活を送ることは十分可能です。ご自身の膝の健康を守るためにも、この記事を参考に、変形性膝関節症への理解を深めていただければ幸いです。

参考文献

  1. Simon HB. “On call. I am 72 years old and in good health. I’ve had left knee pain on and off for almost six months, nothing too severe, but it aches if I walk more than a mile or so, and I sometimes get sharp pain on the stairs.” Harvard men’s health watch 16, no. 6 (2012): 8.
  2. Mahmoudian A, Lohmander LS, Mobasheri A, Englund M, Luyten FP. “Early-stage symptomatic osteoarthritis of the knee – time for action.” Nature reviews. Rheumatology 17, no. 10 (2021): 621-632.
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