登山での膝の痛みは【負荷】が原因!変形性膝関節症者への対策を整形外科医が解説

変形性膝関節症 登山
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あなたは登山愛好家ですか?それとも、これから登山に挑戦したいと考えていますか? 壮大な景色や自然の中での活動は、心身のリフレッシュに最適ですが、膝への負担も無視できません。

特に、変形性膝関節症を抱えている方は、登山中に痛みを感じやすい傾向があります。統計によると、変形性膝関節症は中高年の方に多く発症し、日常生活にも支障をきたす場合があります。

しかし、適切な知識と対策を身につけることで、変形性膝関節症の方でも登山を安全に楽しむことが可能です。

の記事では、整形外科医の視点から、登山での膝の痛みを予防・軽減するための方法を詳しく解説します。コースの選び方、適切な装備、効果的なストレッチ、トレーニング方法、そして最新の治療法まで、網羅的にご紹介します。

登山を諦めていた方、これから登山を始めたい方、そしてすでに登山を楽しんでいる方も、この記事を参考に、膝の痛みを気にせず、自然の中での冒険を満喫しましょう。

登山で膝を痛めないための予防と対策5選

登山で膝を痛めないための予防と対策5選
登山で膝を痛めないための予防と対策5選

登山は自然の中でリフレッシュできる一方、膝関節への負担も大きい活動です。

特に、年齢を重ねるごとに膝の軟骨がすり減り、骨同士がぶつかり合うことで痛みを生じる変形性膝関節症の方は、登山中に痛みを感じやすい傾向があります。

しかし、適切な予防と対策を行うことで、変形性膝関節症の方も登山を楽しむことができます。

この章では、登山で膝を痛めないための5つのポイントを整形外科医の視点から解説します。

膝に負担をかけない登山の方法

登山中に膝への負担を軽減するための具体的な方法を5つご紹介します。

  1. 傾斜の緩やかなコースを選ぶ: 急な上り坂や下り坂は、平坦な道に比べて膝への負担が大きくなります。可能な限り傾斜の緩やかなコースを選び、負担を最小限に抑えることが重要です。


  2. 休憩をこまめにとる: 長時間歩き続けると、膝に疲労が蓄積し、痛みが生じやすくなります。30分~1時間ごとに休憩を取り、膝を休ませることで、疲労の蓄積を防ぐことができます。休憩中は、膝を心臓より高い位置に上げることで、血行を促進し、疲労回復を促すことができます。


  3. 歩幅を小さくする: 歩幅が大きいと、着地時に膝にかかる衝撃が大きくなります。歩幅を小さくすることで、着地時の衝撃を吸収し、膝への負担を軽減することができます。また、ゆっくりとしたペースで歩くことも、衝撃を和らげる効果があります。


  4. ストックを使う: ストック(登山用の杖)を使用することで、体重を腕にも分散させることができ、膝への負担を軽減できます。特に、下り坂ではストックを使うことで、膝への衝撃を効果的に吸収できます。


  5. 荷物を軽くする: リュックサックの重さは、膝への負担に直結します。必要なものだけを選び、荷物をできるだけ軽くすることで、膝への負担を軽減できます。リュックサックのベルトを調整し、体にフィットさせることも重要です。体にフィットしていないと、荷物が揺れてしまい、膝への負担が増加する可能性があります。


登山に適した装備の選び方(靴・ストック・サポーター)

適切な装備を選ぶことは、登山中の膝の痛みを予防するために非常に重要です。

  • 登山靴: 足首をしっかりと固定し、足への負担を軽減してくれるくるぶし丈の登山靴がおすすめです。靴底は厚く、滑りにくいものを選びましょう。さらに、インソール(靴の中敷き)を追加することで、衝撃吸収性を高めることができます。


  • ストック: ストックの長さは、身長や歩幅に合わせて調整することが大切です。グリップは握りやすく、ストラップは手首にフィットするものを選びましょう。2本使うことで、より効果的に体重を支え、バランスを保つことができます。


  • サポーター: 膝に不安がある場合は、サポーターを着用することで、膝関節を安定させ、痛みを軽減することができます。自分に合ったサポーターを選び、正しく着用しましょう。ドラッグストアなどで市販されているサポーターは、様々な種類がありますので、薬剤師や店員に相談してみるのも良いでしょう。


予防のためのストレッチとトレーニング

登山前のストレッチとトレーニングは、膝の痛みを予防するために効果的です。

  • ストレッチ: 太ももの前側(大腿四頭筋)、裏側(ハムストリングス)、ふくらはぎの筋肉を伸ばすストレッチを行いましょう。筋肉の柔軟性を高めることで、膝への負担を軽減できます。


  • トレーニング: 膝関節を支える筋肉である大腿四頭筋やハムストリングスを鍛えるトレーニングは、膝の安定性を高め、痛みを予防する効果があります。スクワットやレッグプレスなどが効果的ですが、無理のない範囲で行いましょう。


ウォーミングアップとクールダウンの重要性

ウォーミングアップとクールダウンは、登山中の怪我の予防と疲労回復に重要です。

  • ウォーミングアップ: 登山前のウォーミングアップは、筋肉や関節を温め、柔軟性を高めるため、怪我の予防に効果的です。軽いジョギングやストレッチを行い、体を登山に適した状態にしましょう。


  • クールダウン: 登山後のクールダウンは、疲労物質を排出し、筋肉痛を予防するために重要です。軽いストレッチやウォーキングを行いましょう。


痛みが続く場合の対処法

痛みが続く場合は、無理せず登山を中止し、安静にすることが大切です。痛みが強い場合や長引く場合は、整形外科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

変形性膝関節症は、軟骨のすり減りが原因で起こる病気です。近年の研究では、非変性II型コラーゲン(UC-II)という成分を含む栄養補助食品が、軟骨の修復を促進する可能性が示唆されています(Gupta A and Maffulli N. 2025)。

また、高脛骨骨切り術(HTO)という手術は、膝の変形を矯正することで、痛みを軽減し、膝の機能を改善する効果が期待できます(Hu Q et al., 2025)。医師に相談し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。

▼変形性膝関節症の骨切り術について、以下でも詳しく解説しています。

変形性膝関節症と登山3つのポイント

変形性膝関節症と登山3つのポイント
変形性膝関節症と登山3つのポイント

登山は、自然の中で心身をリフレッシュできる素晴らしいアクティビティです。しかし、膝関節への負担も大きいため、変形性膝関節症をお持ちの方は注意が必要です。変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨がすり減り、骨同士がぶつかり合うことで痛みや炎症が生じる病気です。

この章では、変形性膝関節症と登山に関する3つのポイントを解説します。安全に登山を楽しむためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。

変形性膝関節症の症状と登山中の痛みの関連性

変形性膝関節症の主な症状は、膝の痛み、腫れ、こわばり、そして関節の動きが悪くなることです。初期段階では、立ち上がりや歩き始めなどに痛みを感じることが多く、安静にすると痛みが軽減します。

しかし、病気が進行すると、常に痛みを感じるようになり、正座や階段の昇り降りも困難になることがあります。

登山中は、特に下山時に膝への負担が大きくなり、これらの症状が悪化しやすいです。

急な下り坂では、体重の数倍もの負荷が膝にかかり、軟骨のすり減りを加速させる可能性があります。

平坦な道であっても、長時間の歩行は膝への負担になります。登山中に膝の痛みを感じた場合は、無理せず休憩を取りましょう。痛みが強い場合は、ゆっくりと時間をかけて下山することが大切です。

松本 美衣
松本 美衣

山の選び方と下りの負担の大きさ

膝関節症の患者さんには、山の特徴や登山道の状況によって負担が大きく異なることを伝えています。特に下山時の膝への負担を考えると、「急な岩場の連続」よりも「緩やかな土の道」の方が膝に優しいのです。「膝に優しい低山リスト」を作成するなど、症状の程度に応じた低山選びもおすすめです。

また、膝の痛みを訴えるのは主に「下山時」です。登りはふくらはぎや太ももに負担がかかりますが、下りは体重のほぼ全てが膝にかかり、特に膝関節の前面(膝蓋大腿関節)や内側に大きな圧力がかかるのです。

私は患者さんに「登りの2倍の時間をかけて下る」ことを勧めており、「ゆっくり下山するようになってから、翌日の膝の痛みがほとんどなくなりました」という声をよく聞きます。下山時間を延ばすことの重要性を実感しています。

登山が変形性膝関節症に与える影響

登山は、膝関節の周囲の筋肉を鍛える効果があり、適度な運動は変形性膝関節症の予防にもつながることがあります。しかし、過度な負担は軟骨のすり減りを加速させ、炎症を悪化させる可能性があります。

特に、下山時の衝撃は大きく、膝関節に大きなストレスを与えます。関節を包む膜である滑膜に炎症が起きる滑膜炎が悪化し、膝に水が溜まることもあります。

2025年に発表された研究では、膝の滑膜炎を評価する際に、MRI検査が最も多く用いられており、超音波検査がそれに続いていることが示されています。これらの画像検査は、滑膜の炎症や変化の特徴を捉えるのに役立ちます。

また、変形性膝関節症の診断には、問診、視診、触診、そしてX線検査が用いられます。X線検査では、軟骨のすり減り具合や骨棘(こつきょく:骨の変形)の有無などを確認できます。

▼変形性膝関節症の評価について、以下でも詳しく解説しています。

非手術的治療と手術療法の選択肢(薬物療法、再生医療、人工関節)

変形性膝関節症の治療法は、大きく分けて保存療法と手術療法の2つに分類されます。

保存療法とは、手術以外の治療法のことで、薬物療法、運動療法、装具療法などがあります。薬物療法では、痛みや炎症を抑える薬を使用します。運動療法では、膝関節周囲の筋肉を強化する運動を行います。装具療法では、サポーターや装具を用いて膝関節を安定させます。

2019年から2024年にかけて行われた研究では、保存療法の一つとして、脂肪由来幹細胞(ADMSC)間質血管画分(SVF)の関節内注射による再生医療も注目されています。

脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、関節内に注射することで、軟骨の再生を促進する治療法です。この研究によると、ADMSC療法は長期的な疼痛軽減と関節機能維持に効果があり、特に62歳未満の患者に有効であることが示唆されています。SVF療法は、高齢者やBMI30以上の肥満患者にも適応可能です。

▼変形性膝関節症の再生医療について、以下でも詳しく解説しています。

これらの保存療法で効果がない場合、手術療法を検討します。

人工関節置換術は、損傷した関節を人工関節に置き換える手術です。

2025年に発表された研究では、ロボット支援型人工膝関節置換術(RA-TKA)とナビゲーション支援型人工膝関節置換術(NA-TKA)の比較が行われました。その結果、両手術法は同等の効果を示すものの、それぞれ利点と欠点があることが分かりました。例えば、RA-TKAはポリエチレンインサートが薄く、手術時間が長い傾向があります。

▼変形性膝関節症の人工関節手術について検討されている方は、以下もご参考ください。

医師とよく相談し、自分に合った治療法を選択することが重要です。

まとめ

変形性膝関節症 登山

登山での膝の痛みを防ぎ、安全に登山を楽しむためのポイントをまとめました。

登山道は傾斜の緩やかなコースを選び、こまめな休憩を挟みながら、ゆっくりとしたペースで歩きましょう。ストックを使うことで膝への負担を軽減できます。荷物は必要最小限に抑え、リュックは体にフィットするように調整しましょう。靴は足首をしっかり固定できる登山靴を選び、インソールで衝撃を吸収するのがおすすめです.

登山前には、大腿四頭筋、ハムストリングス、ふくらはぎのストレッチを行いましょう。スクワットなどのトレーニングで膝関節を支える筋肉を鍛えることも効果的です。登山前後のウォーミングアップとクールダウンも忘れずに行いましょう。

もし登山中に膝の痛みが続く場合は、無理せず登山を中止し、安静にしてください。痛みが強い場合や長引く場合は、整形外科を受診しましょう。

参考文献

  1. Dima RS, Birmingham TB, Empey ME and Appleton CT. “Imaging-based measures of synovitis in knee osteoarthritis: A scoping review and narrative synthesis.” Osteoarthritis and cartilage open 7, no. 2 (2025): 100602.
  2. Melinte MA, Simionescu L, Tăbăcar M, Blănaru V and Melinte RM. “Comparison between robotic-assisted and navigation-assisted total knee arthroplasty shows comparable outcomes: A systematic review and meta-analysis.” Journal of orthopaedics 68, no. (2025): 96-104.
  3. Nguyen TA, Hogden A, Khanna A and Kuah D. “Efficacy of adipose-derived stem cells and stromal vascular fraction for pain relief in Kellgren-Lawrence grade II-III knee osteoarthritis: A systematic review (2019-2024).” Journal of orthopaedics 70, no. (2025): 95-106.
  4. Hu Q, Jiang J, Li Q, Lu S and Xie J. “A systematic review and meta-analysis examining alterations in medial meniscus extrusion and clinical outcomes following high tibial osteotomy.” Journal of orthopaedics 68, no. (2025): 121-130.
  5. Gupta A and Maffulli N. “Undenatured type II collagen for knee osteoarthritis.” Annals of medicine 57, no. 1 (2025): 2493306.
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