変形性膝関節症の痛みは、炎症の有無によって適切なケアが異なります。実は、温めると悪化する場合もあれば、冷やすことで痛みが和らぐ場合もあるのです。
一体どちらが正しいのか、迷っていませんか?
この記事では、温熱療法と冷却療法の効果的な使い方、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
ご自身の症状に合った方法を見つけて、快適な毎日を取り戻しましょう。
目次
変形性膝関節症は冷やすべき?温めるべき?

変形性膝関節症の痛みは、炎症が起きているかいないかで適切なケアが変わってきます。
この記事では、温熱療法と冷却療法について、それぞれ効果的な使い方やメリット・デメリットを、できるだけわかりやすくご説明します。
ご自身の症状に合った方法を見つけて、少しでも快適な毎日を送れるようにお手伝いできれば幸いです。
温熱療法の効果と適切な使用方法
温熱療法とは、患部を温めることで血行を良くし、筋肉や関節の柔軟性を高める治療法です。
変形性膝関節症では、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みが生じますが、温熱療法はこの痛みを和らげ、膝の動きをスムーズにする効果が期待できます。
温熱療法の具体的な方法としては、ホットパックや蒸しタオル、温浴(お風呂に浸かる)など、ご自宅で簡単にできる方法も多くあります。
温熱効果は、時間と温度に依存します。温度が高すぎたり、時間が長すぎると、かえって炎症を悪化させたり、やけどの危険性もあるので、適切な温度と時間で使用する必要があります。
一般的には、心地よいと感じる温度で15分から20分程度行うのがおすすめです。また、皮膚に炎症や傷がある場合は、温熱療法を避けるべきです。ご自身の状態に合わせて、無理なく続けられる方法を選びましょう。
温熱療法のメリット・デメリット
温熱療法のメリットは、血行促進、筋肉の緩和、痛みの軽減です。温めることで、心身のリラックス効果も得られます。
一方、デメリットとしては、熱すぎる場合は炎症が悪化したり、やけどをする可能性があります。また、痛みが強い時期や炎症が強い時期には適さない場合もあります。
温熱療法の種類:ホットパック、蒸しタオル、温浴など
温熱療法にはさまざまな種類があります。
ホットパックはドラッグストアなどで手軽に購入でき、繰り返し使用できます。
蒸しタオルは、タオルを濡らして電子レンジで温めるだけで簡単に作れます。
温浴は、お風呂に浸かることで全身を温めることができ、リラックス効果も高い方法です。
温熱療法の注意点と副作用
温熱療法を行う際の注意点は、温度管理です。熱すぎるとやけどをする可能性があるので、必ず温度を確認してから使用しましょう。また、皮膚に異常(傷や炎症など)がある場合は、使用を控えてください。
副作用としては、適切な温度と時間で使用すれば、大きな副作用は通常ありません。しかし、熱すぎる場合は炎症を悪化させる可能性があります。
温熱療法が適している症状
温熱療法は、慢性的な痛みや、膝の動きが悪いときに適しています。
特に、朝起きた時や長時間同じ姿勢を続けた後に、膝がこわばるといった症状に効果的です。
しかし、炎症が起きていたり、関節が腫れている場合は、温めることで症状が悪化する可能性があるので、冷却療法を行いましょう。
冷却療法の効果と適切な使用方法
冷却療法は、炎症を抑え、腫れや痛みを和らげる効果が期待できる治療法です。
アイスパックや冷湿布などを患部に当てることで、炎症によって生じる熱や腫れを抑えることができます。
冷却療法を行う際には、15分から20分程度を目安に、患部に冷湿布やアイスパックを当てます。
冷やしすぎると凍傷になる可能性があるので、タオルなどで包んで使用しましょう。また、皮膚に異常がある場合は、使用を控えるべきです。
冷却療法のメリット・デメリット
冷却療法のメリットは、炎症の抑制、腫れの軽減、痛みの軽減です。
デメリットとしては、冷やしすぎると凍傷になる可能性があります。また、冷え性の方は症状が悪化する可能性があるので注意が必要です。
冷却療法の種類:アイスパック、冷湿布など
冷却療法の種類には、アイスパックや冷湿布などがあります。
アイスパックは繰り返し使えるので経済的です。冷湿布は、ドラッグストアでも手に入るなど、手軽に使えるので便利です。
▶変形性膝関節症への湿布の効果についても併せてお読みください。
冷却療法の注意点と副作用
冷却療法を行う際の注意点や副作用は、凍傷です。長時間冷やし続けると凍傷になる可能性があるので、15分から20分程度を目安に、タオルなどで包んで使用しましょう。
皮膚に異常がある場合は使用を控えてください。
冷却療法が適している症状
冷却療法は、急性の痛みや、炎症が起きている場合、関節が腫れている場合に適しています。
例えば、運動後や転倒などによって膝を痛めた直後などに有効です。
温熱療法と冷却療法は、症状によって使い分けることが大切です。ご自身の症状に合った方法を選び、適切なケアを行うことで、変形性膝関節症の痛みを和らげ、快適な生活を送るために役立ててください。

症状の質による選択
変形性膝関節症の痛みには「鈍痛」と「鋭痛」があり、これによって温熱・冷却の選択を変えることが効果的です。
じわじわとした鈍い痛みやこわばり感がある場合は温めると効果的なことが多く、ズキズキとした鋭い痛みや熱感がある場合は冷やすと症状が和らぐことが多いです。
私は診察で「今の痛みはどんな感じですか?」と具体的に聞き、症状の質に応じた方法を提案するようにしています。
「痛みの種類によって対応を変えるようになってから、自分でコントロールできる感覚が出てきました」という患者さんの言葉は、症状に合わせた適切な選択の効果を示しています。
変形性膝関節症の治療

ここからは、変形性膝関節症の治療法について、薬物療法、理学療法、そして近年注目されている最新の治療法まで、高齢者の方にもわかりやすく解説します。
適切な治療を受けることで、痛みを和らげ、快適な生活を取り戻すことが可能です。
変形性膝関節症の治療法:薬物療法、理学療法、手術など
変形性膝関節症の治療は、まず患者さんの状態を詳しく把握することから始まります。
具体的には、問診で痛みの程度や日常生活での支障の度合いを確認し、レントゲン検査で膝関節の変形の程度などを調べます。これらの情報をもとに、症状の進行度や患者さんの状態に合わせて、薬物療法、理学療法、手術療法など、さまざまな方法を組み合わせた治療計画を立てます。
薬物療法では、炎症や痛みを抑える薬を使用します。内服薬としては、痛みや炎症を抑える飲み薬や、胃腸への負担が少ない湿布薬などがあります。
また、ヒアルロン酸を膝関節に注射する治療もあります。ヒアルロン酸は関節液の主成分であり、関節の動きを滑らかにする役割があります。注射によってヒアルロン酸を補うことで、痛みを軽減し、関節の動きを改善する効果が期待できます。
理学療法では、ストレッチや筋力トレーニングなどを行い、膝関節の負担を軽減し、動きをスムーズにすることを目指します。理学療法士の指導のもと、患者さん一人ひとりの状態に合った運動プログラムを作成します。ご自宅でも継続して行うことで、症状の改善や進行の抑制につながります。
手術療法は、薬物療法や理学療法で十分な効果が得られない場合に検討されます。
人工関節置換術では、傷ついた関節の表面を人工関節に置き換えることで、痛みを軽減し、関節の機能を回復させます。
変形性膝関節症の最新治療:再生医療、幹細胞治療など
近年、変形性膝関節症の治療として、再生医療が注目されています。これは、患者さん自身の体から採取した細胞を利用して、傷ついた組織の再生を促す治療法です。
変形性膝関節症の場合は、脂肪から採取した幹細胞を培養し、膝関節に注射することで、損傷した軟骨の修復を促します。
幹細胞には大きく分けて、脂肪由来幹細胞(ADMSC)と間質血管画分(SVF)を用いた治療法があります。ADMSC療法は、培養によって幹細胞の数を増やしてから注射するため、軟骨の再生効果が高いとされています。研究結果によると、最大で2年間、痛みの軽減と関節機能の改善効果が持続したという報告もあります。
一方、SVF療法は、採取した脂肪組織から幹細胞を含む成分を抽出して注射する方法です。ADMSC療法に比べて、細胞を培養する必要がないため、治療にかかる期間が短く、費用も抑えられるというメリットがあります。また、高齢者や肥満の方にも適用可能です。研究では、SVF療法を受けた患者さんの多くが、1年程度で痛みの軽減や関節機能の改善を実感したと報告されています。
▶変形性膝関節症の再生医療の種類と特徴について詳しく解説しています。
もう一つ、非変性II型コラーゲン(UC-II)を用いた治療法も研究されています。これは、40mg/日を摂取することで、炎症や痛みを軽減し、膝の機能や可動域、そして生活の質(QOL)の改善に役立つとされています。
これらの治療法は、患者さんの症状や状態、年齢などを考慮して選択されます。どの治療法が最適かは、医師とよく相談し、ご自身に合った治療法を見つけることが大切です。
まとめ

変形性膝関節症の痛みへの対処法として、温熱療法と冷却療法をご紹介しました。
温熱療法は血行を良くし、筋肉や関節の柔軟性を高めるのに効果的で、慢性的な痛みやこわばりに適しています。ホットパックや蒸しタオル、温浴など、自宅で手軽に行える方法もたくさんあります。
一方、冷却療法は炎症を抑え、腫れや痛みを和らげる効果があり、急性の痛みや炎症、腫れがある場合に適しています。アイスパックや冷湿布を使い、冷やしすぎに注意しましょう。
大切なのは、ご自身の症状に合わせて温めるか冷やすかを見極めることです。適切なケアで痛みを和らげ、快適な毎日を送りましょう。
参考文献
- Dewhirst MW. “A translational review of hyperthermia biology.” International journal of hyperthermia 42, no. 1 (2025): 2447952.
- Gupta A, Maffulli N. “Undenatured type II collagen for knee osteoarthritis.” Annals of medicine 57, no. 1 (2025): 2493306.
- Nguyen TA, Hogden A, Khanna A, Kuah D. “Efficacy of adipose-derived stem cells and stromal vascular fraction for pain relief in Kellgren-Lawrence grade II-III knee osteoarthritis: A systematic review (2019-2024).” Journal of orthopaedics 70, no. (2025): 95-106.

-情報提供医師
松本 和樹 Kazuki Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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