年齢とともに膝に違和感を覚えることはありませんか?日常の何気ない動作、朝のベッドからの起き上がり、買い物帰りの階段、長時間座った後の立ち上がりがつらく感じられるようになったら、それは変形性膝関節症の初期症状かもしれません。
この記事では整形外科医の視点から、見過ごしがちな初期のサインを解説します。
早めの対応が症状の進行を遅らせる可能性があるので、ぜひ参考にしてください。
目次
変形性膝関節症をチェック!4つの初期症状

ひざの不調は、特に40代以降の方の日常生活に大きな影響を与えます。
これまで当たり前にできていた動作が少しずつ難しくなり、行動範囲が狭まって生活の質が低下することも少なくありません。
この症状の原因としてよく見られるのが変形性膝関節症です。これは膝の軟骨が徐々に擦り減り、最終的には骨同士が直接触れ合うことで痛みや炎症を引き起こす病気です。
加齢による自然な変化だけでなく、体重過多、長年のスポーツによる負担なども要因となります。
初期では症状が軽いため気づかないことも多いのですが、適切な時期の診断と対応が症状コントロールの鍵となります。
ここからは、日常生活で感じる可能性のある初期の警告サインを紹介します。
動き始めの違和感
長く同じ姿勢でいた後に体を動かし始める時、膝に違和感を感じることはありませんか?
特に朝起きた直後や、長時間のデスクワーク後に立ち上がる時、車の乗り降りの際などに「膝が固まった感じ」「動かし始めにつっぱる」といった感覚を経験することがあります。 これは関節内の潤滑液がうまく行き渡っていなかったり、炎症物質が溜まっていたりすることが原因と考えられます。
通常は数分動かすと違和感は和らぎますが、症状が進むと不快感が長く続くようになります。
例えば椅子から立ち上がる時、健康な膝ならスムーズに体重移動ができますが、初期の変形性膝関節症では立ち上がり始めに一瞬の抵抗感や鈍い痛みを感じることがあるのです。
階段や坂道での痛み
日常生活で膝に負担がかかる動作、特に階段の上り下りで不快感を感じる場合は注意が必要です。
平らな道を歩くのは問題なくても、体重が片足にかかる瞬間や膝を曲げ伸ばしする動作で痛みが出ることがあります。
特に目立つのは階段を下りる時の痛みです。階段を下りる時は膝への負担が上りの時よりもずっと大きくなり、傷んでいる軟骨部分に強い圧力がかかります。
初期では一時的な痛みですが、進行すると休んでも痛みが続くようになってきます。
スーパーでの買い物、駅の階段、観光地での坂道などで膝に違和感を感じたら、変形性膝関節症の可能性を考えてみるといいでしょう。
しゃがむ動作の難しさ
和式トイレの使用、床に落としたものを拾う、低い棚から物を取るなど、膝を深く曲げる動作がしづらくなることも初期サインの一つです。
健康な膝関節は、なめらかな軟骨表面と適切な量の関節液によって、広い範囲で動かすことができます。しかし変形性膝関節症では軟骨表面の損傷や周囲の組織の硬さにより、関節の柔軟性が次第に失われていきます。
初期段階では「なんとなく膝が固い」程度ですが、進行すると「完全にしゃがめない」「膝を十分に曲げられない」といった明らかな制限が出てきます。ガーデニングや子どもとの遊び、日本の伝統的な生活様式など、しゃがむ動作が必要な活動に支障が出ることもあります。
漠然とした膝の不快感
はっきりとした痛みというより、「何となく膝の調子が悪い」「天気が崩れる前に膝が重く感じる」といった漠然とした不快感も変形性膝関節症の初期に現れることがあります。
具体的には次のような感覚です。
- 膝の内部がむくんだような感じ
- 関節がスムーズに動かないもどかしさ
- 膝の周りの張りや緊張感 動かした時の異音(軽いきしみ音やカクカク感)
これらの感覚は、関節の小さな変化や初期の炎症を反映していることがあります。天気の変化や気圧の変動とともに症状が変わる方もいます。
変形性膝関節症のセルフチェック3つのポイント

膝の痛みは、日常生活に大きな支障をきたします。特に、階段の上り下りや散歩など、以前は楽に行えていたことができなくなると、生活の質が低下してしまいます。
変形性膝関節症は、中高年の方によく見られる病気で、早期発見・早期治療が重要です。
そこで、今回は変形性膝関節症のセルフチェックのポイントを整形外科医が3つの観点から解説します。
痛みの種類をチェックする(鈍痛、鋭い痛みなど)
変形性膝関節症の痛みは、その特徴から膝の状態をより詳しく理解するヒントになります。
代表的な痛みとして「鈍い痛み」と「刺すような痛み」が挙げられるでしょう。
鈍い痛みというのは、膝の奥がじんわりと重く感じる不快感です。変形性膝関節症の初期段階では、このような鈍い痛みを訴える方が多いです。
一方で、刺すような痛みは、電気が走ったような、または針で突かれたような一瞬の強い痛みを感じます。こうした痛みは炎症が激しい状態や、軟骨が摩耗して骨同士が接触している場合などに生じることがあるのです。
痛みが常に持続しているのか、それとも特定の動きをした時だけに現れるのかという点も見逃せません。安静にしていても常に痛みがある場合は、炎症が進んでいる可能性も考えられます。
また、痛みの強さについても「少し気になる程度」「耐えられる痛み」「強烈な痛み」など、具体的に記録しておくと、診察時に医師へ伝えやすくなります。
痛む部位をチェックする(膝の内側、外側、後面など)
変形性膝関節症では、どこが痛むかも大切な情報となります。
膝の内側に痛みがある場合、内側型変形性膝関節症の可能性が考えられます。これは日本人に最もよく見られるタイプで、体重を支える際に膝の内側に負荷がかかりやすいことが原因と言われています。
膝の外側が痛む場合は、外側型変形性膝関節症かもしれません。O脚(膝が内側に曲がった状態)や過去の怪我などが背景にあることが少なくありません。
また、膝の裏側に痛みがある場合は、膝窩筋腱炎(膝の裏にある膝窩筋という筋肉の腱の炎症)やベーカー嚢胞(膝の裏に発生する袋状の腫れ)など、別の疾患が潜んでいる可能性も視野に入れる必要があるでしょう。

膝以外の関節のチェック
変形性膝関節症の診察では、実は膝だけでなく足首や股関節、腰の状態も必ずチェックすることが大切だと感じています。これらの関節の問題が膝に負担をかけ、症状を悪化させていることが少なくないからです。特に足首の硬さや股関節の動きの制限は、膝への負担増加につながります。
私は「膝が痛いのに、なぜ腰のチェックをするのか不思議に思われるかもしれませんが、全身のつながりを見ることが大切なんです」と説明するようにしています。「足首の問題を治療したら、膝の痛みも改善してびっくりしました」という患者さんの声は、総合的な評価の重要性を示しています。
動作による痛みの変化をチェックする(歩行時、階段昇降時など)
変形性膝関節症の痛みは、動作によって感じ方が変わるということがよくあります。
歩いている時に痛みが出る場合は、初期段階の変形性膝関節症かもしれません。特に、歩き始めや長時間歩いた後に不快感を覚える傾向があります。
階段の上り下り時に痛む場合は、進行した変形性膝関節症でしばしば見られる症状です。上りよりも下りの方が痛みを感じやすいという特徴があります。これは下りる際の方が膝への負担が大きくなるためなのです。
また、椅子から立ち上がる時や、正座、しゃがむ動作で痛みを感じるようであれば、変形性膝関節症を疑ってみたほうがよいでしょう。こうした動きは膝に大きな負荷がかかるため、症状が現れやすくなっています。
日々の生活の中で、どんな動作で痛みが出るのかを細かく把握しておくことが重要です。例えば「ソファから立ち上がる瞬間」「歩き始めてから5分ほど経った時」「階段を3段ほど下りた頃」など、具体的な状況をメモしておくと診断の助けになります。
まとめ

膝の健康は体全体の活動性と生活の質に大きく関わります。
変形性膝関節症は完全に元に戻すことは難しいですが、早い段階での適切な対応によって進行を遅らせることができます。
上記の症状に心当たりがある場合は、整形外科医に相談することをお勧めします。診断結果に基づいて、生活習慣の見直し、適切な運動方法、必要に応じた薬物療法など、あなたの状態に合った対策が提案されるでしょう。
膝に不調を感じたら、早めの対応が大切です。我慢せずに専門家に相談することで、将来的な膝の健康を守り、活動的な生活を維持することができます。
参考文献
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-情報提供医師
松本 和樹 Kazuki Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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