膝の痛み、階段の上り下りがつらい…それ、「変形性膝関節症」の初期症状かもしれません。
実は、加齢とともに膝の軟骨がすり減るこの疾患、放置すると日常生活にも支障をきたすことも。
現在、変形性膝関節症の患者数は国内で推定2500万人以上とも言われ、悩んでいる方は決して少なくありません。
この記事では、整形外科医が自宅でできる簡単なリハビリ方法と効果的な運動療法を4つご紹介。
痛みの軽減、関節の動きの改善、筋力強化、そして日常生活の活動性向上に役立つ具体的な方法を、自宅で手軽に実践できるようまとめました。
つらい膝の痛みから解放され、快適な毎日を取り戻すための第一歩を、今すぐ踏み出してみませんか?
目次
変形性膝関節症のリハビリ方法と効果的な運動療法4選

膝の痛み、つらいですよね。
特に、階段の上り下り、正座、立ち上がり動作がつらいと感じる方は多いのではないでしょうか。
このような動きで違和感を覚える方は、変形性膝関節症の初期症状の可能性があります。
この記事では、変形性膝関節症の自宅でできる簡単なリハビリ方法と効果的な運動療法について、整形外科医の立場から解説します。
多くの患者さんを診てきた経験から、症状の改善に役立つ方法をまとめました。
変形性膝関節症におけるリハビリの基本的な目的
変形性膝関節症のリハビリは、痛みの軽減、関節の動きの改善、筋力強化、そして日常生活を向上させることを目的としています。
膝の軟骨は、骨と骨の間のクッションのような役割を果たしています。この軟骨がすり減ってしまうのが変形性膝関節症です。
クッションが薄くなれば、当然、骨への負担が増えます。そこで、リハビリで膝周りの筋肉を鍛え、膝関節を安定させることが重要になります。
筋肉がしっかりしていれば、膝への負担を軽減し、痛みを和らげ、さらに軟骨のすり減りを遅らせることができるのです。
また、関節の動きがスムーズになれば、日常生活での動作がしやすくなります。
機能回復を促進する運動療法の具体例
変形性膝関節症に効果的な運動療法として、以下の4つをご紹介します。どれも自宅で簡単に行えるものです。
①大腿四頭筋(だいたいしとうきん)のトレーニング: 大腿四頭筋とは、太ももの前についている筋肉です。この筋肉を鍛えることで、膝関節を安定させます。
椅子に座って足を伸ばしたり、膝を伸ばしたまま足を上げ下げする運動が効果的です。ポイントは、膝を伸ばしきることです。


②ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)のストレッチ: ハムストリングスとは、太ももの裏側にある筋肉群です。この筋肉を伸ばすことで、膝の動きをスムーズにします。
椅子に座って片方の足を伸ばし、上体を前に倒すストレッチなどがおすすめです。ポイントは、背中を丸めずに、お腹から折りたたむように上体を倒すことです。


③ふくらはぎのストレッチ: ふくらはぎの筋肉が硬いと、膝にも負担がかかりやすくなります。
壁に手をついて片方の足を後ろに引き、ふくらはぎを伸ばすストレッチを行いましょう。ポイントは、かかとを床につけたまま行うことです。

④足首の運動: 足首を動かすことで、膝の負担を軽減し、柔軟性を高めます。
足首を上下左右に動かしたり、ぐるぐると回す運動が効果的です。ポイントは、ゆっくりと大きく動かすことです。


これらの運動は、決して無理のない範囲で行うことが大切です。痛みが強い場合は、運動を中止し、医師に相談しましょう。
高強度の筋力トレーニングは、かえって膝の痛みや関節への圧迫力を軽減することに効果がないという研究結果も報告されています(Messier SP, et al., 2021)。過度な運動は禁物です。
日常生活で実践できる膝への負担軽減方法
日常生活の中で、膝への負担を軽減するための工夫も大切です。
- 適切な体重管理: 体重が増えると、当然、膝への負担も大きくなります。適正体重を維持するように心がけましょう。
- 靴の選び方: クッション性の高い靴を選ぶことで、膝への衝撃を吸収することができます。
- 椅子の高さ: 低すぎる椅子は立ち上がる際に膝に負担がかかるため、適切な高さの椅子を使用しましょう。具体的には、座ったときに膝が90度くらいに曲がる高さが理想です。
- 階段の上り下り: 手すりを使う、一段ずつゆっくりと上り下りするなど、膝への負担を軽減する工夫をしましょう。
- 長時間の正座: 膝に負担がかかるため、できるだけ避けましょう。どうしても必要な場合は、クッションなどを使いましょう。
また、膝関節症の患者さんに対してマニュアルセラピー(マッサージや関節モビライゼーションなど、理学療法士などの手技による治療のこと)を行うと、痛みの軽減や関節の動きの改善に効果があるという研究結果も出ています(Tsokanos A, et al., 2021)。

適切な体重管理の実践!
肥満を伴う変形性膝関節症患者には、単なる減量指導ではなく、具体的な活動量増加プランを提案しています。
初期段階では膝への負担が少ない水中歩行から始め、徐々に陸上での活動に移行するプログラムを個別に計画します。70代の男性患者さんでは、このアプローチにより6ヶ月で5kg減量に成功し、階段昇降時の痛みが劇的に改善した例があります。体重管理は膝への負担軽減だけでなく、患者さんの治療への参加意欲を促す効果もあります。
効果的なリハビリのための頻度と時間の目安
リハビリは、毎日行う必要はありません。週に3回程度、1回あたり30分程度を目安に行うと良いでしょう。
無理なく続けられるペースで、毎日少しずつ行うことも効果的です。重要なのは、継続することです。
リハビリを継続することで、膝の痛みを軽減し、快適な生活を送ることができるようになります。
変形性膝関節症の診断と治療法の最新情報

立ち上がったり、階段を上り下りしたりするときに痛むと、それだけで憂鬱な気分になってしまいますよね。
この記事では、変形性膝関節症の診断方法と治療法について、整形外科医の私が、わかりやすくご説明します。
不安な気持ちを抱えている方も多いかと思いますので、一緒に、痛みを和らげる方法を探していきましょう。
変形性膝関節症の診断方法と検査
変形性膝関節症の診断は、患者さんとの対話から始まります。
「いつから痛み始めたのか」「どんな時に痛むのか」「どのくらい痛むのか」など、詳しくお話を伺います。
これは、まるで探偵が事件を解決する手がかりを集めるような作業です。患者さんの訴えの一つ一つが、診断の重要なピースとなるのです。
次に、膝の状態を診察します。膝の曲げ伸ばし、腫れ、熱感などを確認し、実際に膝に触れてみて、その状態を把握します。
レントゲン検査も行います。レントゲン写真では、軟骨のすり減り具合や骨の変化などを調べることができます。レントゲン検査で膝関節の状態を視覚的に確認することで、より正確な診断が可能となります。
さらに詳しい検査が必要な場合は、MRI検査を行うこともあります。MRI検査では、レントゲンでは写らない軟骨や靭帯、筋肉などの状態を詳しく調べることができます。
これは、レントゲン検査では見えない細部まで確認できる、いわば高性能な拡大鏡のようなものです。
これらの検査結果と、患者さんのお話、診察所見を総合的に判断して、最終的に変形性膝関節症かどうかを診断します。
効果的な薬物療法とその役割
変形性膝関節症の薬物療法は、痛みや炎症を抑えることを目的としています。
よく使われる薬としては、痛み止め、炎症を抑える湿布、ヒアルロン酸注射などがあります。
痛み止めは、その名の通り、痛みを一時的に和らげるのに役立ちます。これは、痛みという火事を一時的に消火するような役割を果たします。
炎症を抑える湿布は、炎症を起こしている部分に直接貼ることで、痛みや腫れを軽減します。これは、炎症という火種に直接働きかけて、鎮める効果があります。
ヒアルロン酸は、関節液の成分であり、注射することで関節の動きを滑らかにし、痛みを和らげる効果が期待できます。これは、関節の動きをスムーズにする潤滑油のような役割を果たします。
これらの薬は、患者さんの症状に合わせて使い分けられます。どの薬が適しているかは、医師とよく相談して決めることが大切です。
手術療法の適応とリスクについて
保存療法で効果がない場合や、症状が進行している場合には、手術療法が検討されます。
手術には、人工関節置換術や関節鏡手術など、さまざまな種類があります。
人工関節置換術は、傷ついた関節を人工関節に取り替える手術です。これは、古くなった部品を新しい部品に交換するようなイメージです。
関節鏡手術は、小さな切開部からカメラや器具を入れて、関節内の状態を直接確認しながら行う手術です。これは、内視鏡を使って、体の中の様子を直接確認しながら行う手術と同様です。
手術療法は、痛みを和らげ、関節の機能を改善する効果が期待できますが、手術にはリスクも伴います。感染症や出血、神経麻痺などの合併症が起こる可能性もあります。
手術を受けるかどうかは、医師とよく相談し、メリットとリスクを十分に理解した上で決めることが大切です。
マニュアルセラピー(理学療法士などによる手技療法)も、痛みを和らげ、関節の動きを良くするのに役立つ可能性があるという研究結果もあります。
今後を見据えた予後の理解と生活習慣の改善点
変形性膝関節症は、残念ながら完全に治すことは難しい病気です。しかし、適切な治療と生活習慣の改善によって、症状の進行を遅らせ、痛みをコントロールすることは可能です。
日常生活では、膝に負担をかけすぎないようにすることが大切です。例えば、正座や階段の上り下りはできるだけ避け、椅子に座るときは膝を高くしないようにしましょう。
適度な運動も重要です。ウォーキングや水中歩行など、膝に負担の少ない運動を続けることで、膝周りの筋肉を鍛え、関節の安定性を高めることができます。
また、体重管理も大切です。体重が増えると膝への負担も大きくなるため、適切な体重を維持するように心がけましょう。適切な体重管理は、膝への負担を軽減するだけでなく、全身の健康維持にも繋がります。
これらの生活習慣の改善を続けることで、快適な生活を送ることができるようになります。
まとめ

変形性膝関節症は、軟骨のすり減りが原因で痛みや動きの制限を引き起こす疾患です。
この記事では、自宅でできる簡単なリハビリ方法や運動療法、日常生活での膝への負担軽減方法、そして診断や治療法についてご紹介しました。
リハビリでは、大腿四頭筋のトレーニングやハムストリングスのストレッチなどが効果的です。
日常生活では、適切な体重管理や靴選び、椅子の高さ、階段の上り下り方など、工夫次第で膝への負担を軽減できます。
痛みがある場合は、我慢せずに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。無理のない範囲でリハビリや生活習慣の改善に取り組むことで、症状の進行を遅らせ、快適な生活を送ることに繋がります。
この記事が、膝の痛みで悩んでいる方の参考になれば幸いです。
参考文献
- Messier SP, Mihalko SL, Beavers DP, Nicklas BJ, DeVita P, Carr JJ, Hunter DJ, Lyles M, Guermazi A, Bennell KL, Loeser RF. Effect of High-Intensity Strength Training on Knee Pain and Knee Joint Compressive Forces Among Adults With Knee Osteoarthritis: The START Randomized Clinical Trial. JAMA 325, no. 7 (2021): 646-657.
- Tsokanos A, Livieratou E, Billis E, Tsekoura M, Tatsios P, Tsepis E, Fousekis K. The Efficacy of Manual Therapy in Patients with Knee Osteoarthritis: A Systematic Review. Medicina (Kaunas, Lithuania) 57, no. 7 (2021): .

-情報提供医師
松本 和樹 Kazuki Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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