30代で「膝が痛い…」まさか変形性膝関節症?そんな不安を抱えていませんか?
実は、変形性膝関節症は高齢者だけの病気ではなく、若い世代での発症も増加傾向にあるんです。厚生労働省の調査によると、40代での発症率は約2%。決して少なくない数字です。
この記事では、30代で変形性膝関節症になる原因や症状、そして具体的な治療法まで、わかりやすく解説します。
早期発見・早期治療が鍵となる変形性膝関節症。心当たりのある方は、ぜひ読み進めて、ご自身の膝の健康を見つめ直してみませんか?
目次
30代で変形性膝関節症になる原因と症状

30代で膝に痛みを感じ始めると、「まさか自分が変形性膝関節症…?」と不安になりますよね。変形性膝関節症といえば、高齢者の病気というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
確かに、変形性膝関節症は加齢とともに発症率が上がる病気です。しかし、30代での発症も決して珍しくはありません。特に、近年の研究では、若い世代での発症が増加傾向にあるという報告もあります。
この記事では、30代で変形性膝関節症になる原因や症状について、なるべく専門用語を使わずに、わかりやすく解説していきます。
早期発見・早期治療が大切ですので、心当たりのある方はぜひ最後まで読んでみてください。
30代での発症は比較的まれ?
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、骨と骨が直接ぶつかり合うことで痛みや炎症を引き起こす病気です。一般的には、50代以降に発症することが多いとされています。
厚生労働省の調査によると、変形性膝関節症の患者数は、40代では約2%、50代では約10%、60代では約30%、70代では約60%と、年齢とともに増加しています。
30代での発症は、全体の患者数から見ると少ない割合です。しかし、決して「まれ」な病気ではありません。特に、立ち仕事や激しいスポーツなどで膝に負担がかかりやすい方は、30代でも発症リスクが高まります。
また、近年では、デスクワークの増加や運動不足といった生活習慣の変化も影響し、若い世代での発症が増えていると考えられています。
遺伝による影響
変形性膝関節症の発症には、遺伝的な要因も関係していると考えられています。両親や兄弟姉妹に変形性膝関節症の方がいる場合、そうでない方に比べて発症リスクが数倍高くなるという研究結果もあります。
具体的には、軟骨の質や関節の形状に関わる遺伝子が、変形性膝関節症の発症リスクに影響を与えている可能性が指摘されています。
スポーツや仕事での膝への負担
特定のスポーツや仕事で膝に繰り返し負担がかかると、軟骨がすり減りやすくなり、変形性膝関節症のリスクが高まります。
例えば、バスケットボールやバレーボール、サッカー、マラソンなどの激しいスポーツは、ジャンプや着地、急な方向転換など、膝に大きな負担がかかります。また、建設作業員や介護士、看護師など、中腰や立位の姿勢を長時間続ける仕事も、膝への負担が大きいため、変形性膝関節症のリスクを高める可能性があります。
日常生活でも、重い荷物を頻繁に持ったり、階段の上り下りを繰り返したりすることも、膝への負担となりますので注意が必要です。
肥満
肥満は、変形性膝関節症の大きなリスク要因の一つです。体重が増加すると、膝関節にかかる負担も大きくなり、軟骨のすり減りが加速されます。
例えば、体重が1kg増えると、歩行時には膝に約3kg、階段の上り下り時には約6kgもの負担がかかると言われています。つまり、体重が10kgオーバーしている人は、健康な体重の人に比べて、歩行時で30kg、階段の上り下りでは60kgも余分に膝に負担をかけていることになります。
肥満の方だけでなく、標準体重の方でも、急激な体重増加は膝への負担を増大させるため、注意が必要です。
怪我や外傷
過去に膝の怪我や外傷を経験したことがある場合も、変形性膝関節症を発症するリスクが高まります。
特に、骨折や靭帯損傷、半月板損傷などは、関節の構造に変化をもたらし、軟骨への負担を増大させる可能性があります。これらの怪我は、スポーツや交通事故などで起こりやすいですが、日常生活での転倒などでも起こり得ます。
一度膝を怪我した方は、その後も再発しやすい傾向があるため、日常生活での注意や適切なリハビリテーションが重要です。
関節の炎症
関節リウマチなどの炎症性疾患は、関節の炎症を引き起こし、軟骨を破壊します。これにより、変形性膝関節症が引き起こされることがあります。関節の炎症は、痛みや腫れ、熱感などの症状を引き起こし、関節の動きを制限します。
O脚、X脚などの脚の変形
O脚やX脚といった脚の変形も、変形性膝関節症のリスクを高める要因となります。これらの変形は、膝関節への負担の偏りを招き、特定の部位の軟骨がすり減りやすくなるためです。
O脚の場合は膝の内側、X脚の場合は膝の外側の軟骨がすり減りやすい傾向があります。
その他の要因
加齢、遺伝、肥満、怪我、炎症、脚の変形以外にも、変形性膝関節症の発症に関わる要因はいくつかあります。例えば、女性ホルモンの減少、骨粗鬆症、関節の不安定性なども、発症リスクを高める可能性があります。
また、生活習慣も大きく関わってきます。喫煙や過度の飲酒、栄養バランスの偏りなども、軟骨の健康に悪影響を及ぼし、変形性膝関節症のリスクを高める可能性があると考えられています。

女性ホルモンと膝関節症
30代女性の変形性膝関節症には、ホルモンバランスの変化が関与していることがあります。特に出産を経験した女性や、月経不順のある女性に若年発症が多い傾向があります。
38歳の女性患者さんは2人の出産後に膝の痛みを自覚し始め、MRIでは年齢の割に進行した軟骨変性が見つかりました。女性ホルモン(特にエストロゲン)には関節保護作用があり、そのバランスが乱れると軟骨代謝に影響を与える可能性があります。
私はこのような女性患者さんには、婦人科と連携した総合的なアプローチを心がけ、必要に応じてホルモンバランスの評価も行っています。この患者さんの場合、整形外科的治療に加えて婦人科でのホルモンバランス調整を並行して行ったところ、症状の改善が見られました。
若い女性の膝関節症では「ホルモンの視点」も重要な視点となります。
変形性膝関節症の治療法と日常生活の注意点

30代で変形性膝関節症と診断されると、将来への不安に押しつぶされそうになるかもしれません。「まだ若いのに手術になるの?仕事や趣味はどうなるの?」と、様々な不安が頭をよぎるのも無理はありません。
でも、安心してください。変形性膝関節症は、正しく治療し、日常生活を少し工夫するだけで、進行を遅らせ、痛みをコントロールしながら、充実した毎日を送ることが十分に可能です。
まずは、ご自身の膝の状態をきちんと理解し、医師と相談しながら、最適な治療法を見つけることが大切です。一緒に、変形性膝関節症と上手に付き合っていく方法を探していきましょう。
薬物療法(痛み止め、ヒアルロン酸注射など)
薬物療法の目的は、痛みや炎症を抑え、つらい症状を和らげることです。
内服薬としては、痛みや炎症を抑える鎮痛剤がよく使われます。胃への負担を少なくするために、ロキソプロフェンナトリウムという種類の鎮痛剤が処方されることもあります。
また、ヒアルロン酸注射は、関節液の粘り気を高め、関節の動きを滑らかにする効果が期待できます。関節液は、関節の動きをスムーズにする潤滑油のような役割を果たしています。ヒアルロン酸は、この関節液の主成分の一つです。注射の頻度は、患者さんの症状や効果の出方によって異なりますが、一般的には週に1回、5週間ほど続けられます。費用は保険適用で1回あたり数百円程度です。
理学療法(リハビリテーション)
理学療法士によるリハビリテーションでは、ストレッチや筋力トレーニングなどを通して、膝関節周辺の筋肉を鍛え、関節を安定させます。
関節可動域訓練といって、関節の動きをスムーズにする訓練も行います。これらのリハビリテーションによって、痛みの軽減や膝の機能改善を目指します。
一人ひとりの状態に合わせたプログラムを作成し、自宅でも継続して行えるように丁寧に指導しますので、ご安心ください。
装具療法(サポーターやインソールなど)
装具療法とは、膝関節への負担を軽くするために、サポーターやインソールなどを使用する方法です。サポーターは、膝関節を支え、安定させることで、痛みを和らげます。インソールは、足の裏のアーチをサポートし、膝への負担を軽減します。
症状や生活スタイルに合わせて、最適な装具を選びましょう。
▼変形性膝関節症、インソール(足底板)の効果について、併せてご参考にされてください。
手術療法(人工関節置換術など)
薬やリハビリなどの保存療法で効果が得られない場合や、変形がかなり進行している場合は、手術療法を検討します。
人工関節置換術は、傷んでしまった関節を人工関節に交換する手術です。近年の人工膝関節置換術では、人工関節をより長持ちさせるため、患者さん一人ひとりの膝の形に合わせた手術方法(個別化アライメント技術)が注目されています。以前は、すべての人に同じような人工関節を入れていましたが、最近では患者さんごとに最適な人工関節の形や入れる角度を調整することで、より自然な膝の動きが得られるようになってきています。
高位脛骨骨切り術は、骨を切って変形を矯正する手術です。関節鏡視下手術は、関節の中に小さなカメラを入れて、傷んでいる部分を修復する手術です。どの手術方法が適切かは、患者さんの状態によって異なります。
運動療法(ストレッチ、筋力トレーニングなど)
運動療法は、膝関節の柔軟性を高め、筋力を強化することで、痛みの軽減や機能改善を図ります。ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、関節の動く範囲を広げます。筋力トレーニングは、膝関節周辺の筋肉を強くし、関節を安定させます。
水中ウォーキングなどの有酸素運動は、膝への負担が少ないため、特におすすめです。
日常生活での膝への負担軽減
日常生活では、膝への負担を減らす工夫が大切です。
正座や和式トイレは避け、椅子や洋式トイレを使うようにしましょう。重い荷物を持つことや、階段の上り下りはできるだけ控え、エレベーターやエスカレーターを利用しましょう。
体重管理
肥満は膝関節への負担を大きくするため、体重管理はとても大切です。
体重が3kg減るだけでも、歩行時の膝への負担は9kg、階段の上り下りではなんと20kgも軽くなります。バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、適切な体重を維持しましょう。
▼変形性膝関節症の体重管理について、併せてお読みください。
適切な靴選び
適切な靴選びも、膝への負担を軽減する上で重要です。クッション性があり、かかとがしっかりとした靴を選びましょう。
ハイヒールや先の尖った靴は、膝への負担が大きいため、避けた方が良いでしょう。
まとめ

この記事では、30代で変形性膝関節症になる原因や症状、そして具体的な治療法や日常生活での注意点について解説しました。
変形性膝関節症は、加齢とともに発症率が高まる病気ですが、30代で発症するケースも少なくありません。遺伝や肥満、スポーツ、仕事など、さまざまな要因が影響する可能性があります。早期発見・早期治療が大切なので、膝の痛みや違和感を感じたら、迷わず専門医に相談しましょう。
適切な治療と日常生活の工夫によって、症状の進行を遅らせ、痛みを管理しながら、充実した毎日を送ることができます。この記事が、少しでもあなたの不安を解消し、前向きな一歩を踏み出すためのお役に立てれば幸いです。
参考文献
- Duong V, Oo WM, Ding C, Culvenor AG, Hunter DJ. Evaluation and Treatment of Knee Pain: A Review. JAMA 330, no. 16 (2023): 1568-1580.
- Karasavvidis T, Pagan Moldenhauer CA, Haddad FS, Hirschmann MT, Pagnano MW, Vigdorchik JM. Current Concepts in Alignment in Total Knee Arthroplasty. The Journal of arthroplasty 38, no. 7 Suppl 2 (2023): S29-S37.

-情報提供医師
松本 和樹 Kazuki Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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