あなたは、将来、膝の痛みに悩まされる未来を想像できますか?
多くの人が抱える「O脚」。実は、変形性膝関節症という深刻な病気のリスクを高める可能性があることをご存知ですか? 年齢を重ねるごとに増加する変形性膝関節症は、日常生活に大きな支障をきたすことも。
この記事では、整形外科医が解説するO脚と変形性膝関節症の驚くべき関係性について詳しく解説します。O脚がなぜ変形性膝関節症を引き起こすのか、そのメカニズムを分かりやすく紐解き、具体的な対策を5つご紹介します。
運動療法、装具やインソール活用、薬物療法、外科的治療、そして日常生活での注意点まで、専門家の視点から網羅的に解説。 あなたの膝の健康を守るための、確かな知識を手に入れましょう。 将来の健康のために、今すぐチェック!
目次
O脚が変形性膝関節症を引き起こすメカニズム

O脚で悩んでいる方は、将来変形性膝関節症になるのではないかと心配されている方も多いのではないでしょうか。私も整形外科医として、日々多くの患者さんからO脚の相談を受けています。確かに、O脚は変形性膝関節症の大きなリスク要因の一つです。
この記事では、O脚と変形性膝関節症の関係性について、専門用語をなるべく使わずに、わかりやすく解説していきます。O脚がどのように変形性膝関節症を引き起こすのか、そのメカニズムを理解することで、適切な予防や対策を行うことができます。
一緒に見ていきましょう。
O脚とはどのような状態か
O脚とは、リラックスしてまっすぐ立った時に、両膝がくっつかず、両足首の間が開いてしまう状態のことです。アルファベットの「O」のように脚の形が湾曲していることから、O脚と呼ばれています。
医学的には「内反膝(ないはんしつ)」と呼ばれることもあります。
O脚の種類と原因
O脚には、大きく分けて先天性と後天性の2つの種類があります。
先天性のO脚は、生まれたときから骨の変形がある場合です。しかし、生まれたときからO脚の方は比較的少なく、多くの方は後天的な要因でO脚になっていきます。
後天性O脚の原因には、歩き方や姿勢、筋肉のバランス、加齢、過去のケガ(骨折など)などが挙げられます。例えば、いつも足を組む癖がある、内股で歩く、ハイヒールをよく履くといった習慣も、O脚を進行させる原因となることがあります。
O脚で変形性膝関節症になりやすい理由
O脚の方は、体重がかかる時に膝の内側に負担が集中しやすくなります。健康な脚の形であれば、体重は膝関節全体に均等にかかります。
しかしO脚の場合、膝の内側の関節軟骨に常に過剰な圧力が加わる状態となります。
この状態が長く続くと、まるでタイヤのゴムがすり減るように、膝関節の軟骨がすり減り、炎症が慢性的に起こりやすくなります。これが、O脚の方が変形性膝関節症になりやすい理由です。
変形性膝関節症の初期症状と進行
変形性膝関節症の初期症状は、立ち上がりや歩き始めに膝に痛みや違和感を感じることです。
最初は「膝がこわばる」といった軽い症状の場合もありますが、進行すると、安静時にも痛みを感じるようになったり、膝が腫れたり、関節内に水が溜まったりすることもあります。「水が溜まる」というのは、炎症によって関節液が過剰に分泌される状態です。
さらに症状が進むと、膝の曲げ伸ばしが困難になり、正座や階段の上り下りがつらくなります。最終的には、軟骨が完全にすり減ってしまい、骨と骨が直接ぶつかり合うことで、激しい痛みを生じ、歩行も困難になることがあります。
O脚による変形性膝関節症以外の影響
O脚は変形性膝関節症だけでなく、他の体の部位にも影響を与える可能性があります。
O脚によって姿勢が悪くなると、腰や肩、股関節にも負担がかかり、腰痛や肩こり、股関節痛などを引き起こすことがあります。
また、足首や足の裏にも負担がかかりやすくなり、痛みやしびれが生じる場合もあります。
近年、変形性膝関節症の痛みの治療法として、ラジオ波焼灼術という方法が注目されています。これは、ラジオ波という電磁波を使って膝の神経を焼灼(しょうしゃく)することで痛みを軽減する治療法です。焼灼とは、高熱で組織を破壊することです。内側上膝神経、内側下膝神経、外側上膝神経といった膝の神経にラジオ波を照射する治療法で、いくつかの研究で、従来の治療法よりも効果が高いことが示唆されています。
O脚と変形性膝関節症の対策5選

O脚で悩んでいる方は、将来変形性膝関節症になるのではないかと不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。整形外科医である私も、日々患者さんからO脚の相談を受けています。その不安、よく分かります。
確かにO脚は変形性膝関節症のリスクを高める要因の一つですが、適切な対策をとることで進行を遅らせたり、痛みを軽減したりすることは可能です。
この記事では、O脚と変形性膝関節症の対策について、運動療法から手術、日常生活での注意点まで、高齢者の皆さんにも分かりやすく、具体的な方法を交えて幅広くご紹介します。
一緒に見ていきましょう。
①O脚矯正のための運動療法とストレッチ
O脚を改善し、変形性膝関節症を予防するためには、運動療法とストレッチが効果的です。高齢者の方々にとって、運動は健康寿命を延ばすためにも非常に大切です。
特に、太ももの内側の筋肉(内転筋)を鍛えたり、外側の筋肉を伸ばしたりすることで、膝への負担を軽減し、O脚の角度を改善することができます。
例えば、スクワットは椅子に座るように腰を落とす運動で、太ももの内側の筋肉を効果的に鍛えることができます。また、内転筋トレーニングは足を閉じていく運動で、内転筋群という太ももの内側の筋肉を鍛えます。これにより、膝関節にかかる負担を内側に寄せる力を強化し、O脚の改善に繋がります。
ストレッチでは、太もも外側のストレッチが有効です。足を組んで、外側の筋肉を伸ばすことで、硬くなった筋肉を柔らかくし、O脚の改善を促します。ふくらはぎのストレッチも効果的で、アキレス腱を伸ばすことで、下腿の筋肉のバランスを整え、O脚改善に繋がることもあります。
これらの運動は、決して無理のない範囲で行うことが大切です。痛みがある場合はすぐに中止し、医師や理学療法士に相談するようにしてください。
▼変形性膝関節症に効果的な筋トレ方法を以下で紹介しています。ご参考ください。
②装具やインソールの効果的な活用法
装具やインソールは、O脚の角度を補正したり、膝への負担を軽減したりする効果が期待できます。特に、インソールは靴の中に敷くだけで手軽に使えるため、日常生活に簡単に取り入れやすいでしょう。
O脚矯正用のインソールは、足底アーチをサポートし、膝にかかる負担を軽減します。サポーターは膝関節を安定させ、痛みを和らげます。足底板は、オーダーメイドで作製されることもあり、より精密な矯正効果が期待できます。
装具やインソールは種類も様々なので、自分に合ったものを使用することが大切です。専門家に相談して適切なものを選びましょう。
▼変形性膝関節症に対するインソールの効果や使い方、手入れの方法について以下で詳しく解説しています。
③薬物療法や注射による痛みの緩和
変形性膝関節症の痛みを軽減するための薬物療法や注射には、いくつかの種類があります。
飲み薬では、痛みや炎症を抑える消炎鎮痛剤や、軟骨の成分であるヒアルロン酸などを内服します。
ヒアルロン酸注射は、関節内のヒアルロン酸を増やし、関節の動きを滑らかにします。ステロイド注射は、炎症や痛みを強力に抑えます。
これらの治療法は、痛みの程度や症状に合わせて選択されます。医師と相談して、自分に合った治療法を見つけることが重要です。
④高位脛骨骨切り術などの外科的治療
保存療法で効果が得られない場合や、変形が進行している場合は、外科的治療が検討されます。
代表的な手術として、高位脛骨骨切り術があります。高位脛骨骨切り術は、脛骨(すねの骨)を切って、O脚によって内側に偏っていた膝にかかる負担を外側に移動させることで軽減する手術です。比較的若い方で、変形が軽度から中等度の場合に適応されます。
人工膝関節置換術は、損傷した膝関節を人工関節に置き換える手術です。変形が高度で、日常生活に支障が出ている場合に適応されます。
手術を受けるかどうかは、患者さんの状態や生活スタイルなどを考慮して決定されます。医師とよく相談し、メリットとデメリットを理解した上で判断しましょう。高齢者の場合、持病や全身状態も考慮する必要があります。
▼変形性膝関節症で手術を検討している高齢者の方は、以下もご参考ください。
⑤日常生活での注意点とセルフケア
日常生活では、適切な体重管理を心がけましょう。体重が増えると膝への負担が増加するため、適正体重を維持することは非常に重要です。
また、正しい姿勢で歩くことにも意識を向けましょう。正しい姿勢で歩くことで、膝への負担を軽減できます。特に、足を組む癖がある方は、O脚を悪化させる可能性があるので注意が必要です。
さらに、入浴も効果的です。温浴することで血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。湯船に浸かることで、リラックス効果も得られます。
これらの日常生活での注意点を守ることは、O脚や変形性膝関節症の症状の進行を遅らせることに繋がります。毎日少しずつでも意識して生活することで、将来の健康を守ることができます。

日常生活での立ち方指導
O脚の患者さんを診てきて、日常の何気ない立ち方が症状に大きく影響することがわかりました。特に電車内や料理中など、長時間立っている時に片足に体重をかける「ラクな立ち方」がO脚を悪化させるのです。
私は診察室で鏡を使って正しい立ち方を練習してもらい、「両足均等に体重をかける感覚」を身につけてもらっています。最初は疲れると言われますが、続けることで筋肉のバランスが整い、「膝の痛みが減った」という報告を受けることが多いです。
まとめ

O脚は変形性膝関節症のリスクを高める大きな要因です。しかし、適切な対策を行うことで、進行を遅らせたり、痛みを軽減したりすることは可能です。この記事では、O脚と変形性膝関節症の関係性、そして運動療法、装具・インソール、薬物療法、手術、日常生活での注意点など、様々な対策を紹介しました。
O脚でお悩みの方は、まずは自分の状態を正しく理解することが大切です。この記事で紹介した情報を参考に、ご自身の状況に合った対策を選び、専門家にご相談しながら、健康的な膝の生活を目指しましょう。 無理のない範囲で運動療法やストレッチに取り組んだり、適切な装具やインソールを使用したりすることで、膝への負担を軽減できます。
痛みがある場合は、早めに医療機関を受診し、薬物療法や手術などの治療法についても医師と相談してください。日常生活での注意点を守り、正しい姿勢や体重管理を心がけることも大切です。
O脚と変形性膝関節症の予防・改善に向けて、今日からできることから始めてみましょう。
参考文献
- Conger A, Gililland J, Anderson L, Pelt CE, Peters C, McCormick ZL. Genicular Nerve Radiofrequency Ablation for the Treatment of Painful Knee Osteoarthritis: Current Evidence and Future Directions. Pain medicine (Malden, Mass.) 22, no. Suppl 1 (2021): S20-S23.
- Murray R, Winkler PW, Shaikh HS, Musahl V. High Tibial Osteotomy for Varus Deformity of the Knee. Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons. Global research & reviews 5, no. 7 (2021).

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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