膝の痛み、特に階段の上り下りや立ち上がり、正座の時などに痛みが増す場合、変形性膝関節症のサインかもしれません。高齢化社会の現代において、変形性膝関節症は増加の一途を辿り、日常生活に大きな支障をきたす進行性の病気です。
そこで、変形性膝関節症の治療で近年注目されているのが漢方薬です。
変形性膝関節症に用いられる漢方薬は、体の調子を整えることで、痛みや炎症などの症状の改善をサポートします。2023年の研究によれば、伝統的な中国の運動療法と組み合わせることで、さらなる効果向上が期待できる可能性も示唆されています。
この記事では、変形性膝関節症の痛みを和らげるための漢方療法について、専門医監修のもと詳しく解説します。またその具体的な処方例や費用、保険適用についてもご紹介していきます。
目次
変形性膝関節症における漢方治療の役割とメリット3選

近年、変形性膝関節症の治療において、漢方薬が注目を集めています。漢方薬は、体質の改善を目指し、症状の緩和をサポートします。
西洋医学の治療と組み合わせることで、さらに効果的な治療が期待できるでしょう。
漢方薬による痛みや炎症の緩和
漢方薬の中には、炎症反応を調整することで痛みを緩和する効果が期待されるものもあります。
例えば、体内に余分な水分が溜まっていることで膝が重だるく感じる場合は、防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)が用いられます。
炎症や腫れが強い場合は、越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)が用いられることがあります。これは、炎症と腫れに効果があるとされています。
この後、漢方薬の効果や注意点について詳しく解説します。
関節機能の改善効果
漢方薬は、痛みや炎症を抑えるだけでなく、膝関節の機能改善にも効果を発揮します。
軟骨の保護や再生を促進する作用を持つ生薬が含まれており、関節の動きを滑らかにし、可動域を広げることが期待できます。また、膝関節周囲の筋肉や靭帯の柔軟性を高めることで関節の安定性を向上させる効果も期待できます。
2023年に発表された研究では、伝統的な中国の運動療法が膝関節変形性関節症の痛みの軽減、関節可動域の向上、そして生活の質の改善に寄与することが示唆されています。これは、変形性膝関節症の患者さんにとって大きな希望となるでしょう。漢方薬と組み合わせることで、さらなる相乗効果が期待できる可能性があります。
手術回避の可能性とQOL向上への貢献
変形性膝関節症は進行すると、人工関節置換術などの手術が必要となるケースもあります。しかし、早期に適切な治療を開始することが重要です。
2021年に発表された研究では、膝の早期症状性変形性関節症の早期発見と診断の重要性が強調されています。
漢方治療は、痛みや炎症を抑え、関節機能を改善することで病気の進行を遅らせ、日常生活の質(QOL※)の向上に貢献してくれることが期待できます
※「Quality of Life」の略であるQOLとは、生活の質、つまり、身体的、精神的、社会的に良好な状態であることを意味します。

体質改善と長期的視点
漢方治療の大きな特徴は、一時的な症状緩和だけでなく、長期的な体質改善を目指す点にあると感じています。
私のクリニックでは「即効性はないかもしれませんが、半年から一年のスパンで続けることで体質から変えていきましょう」と説明しています。
実際、漢方を継続した患者さんからは「最初は効果がわかりませんでしたが、半年続けたら冬の膝の痛みが明らかに減りました」という声をよく聞きます。
西洋医学的な対症療法と漢方の体質改善アプローチを組み合わせることで、より良い結果が得られると実感しています。
漢方治療の費用と保険適用について
多くの漢方薬は、変形性膝関節症の治療に対して保険適用が認められています。
費用は処方される漢方薬の種類や量、医療機関によって異なります。
変形性膝関節症に用いられる代表的な漢方薬4選と注意点

膝の痛み、特に階段の上り下りや立ち上がり、正座の時などに痛みが増す場合、変形性膝関節症の可能性があります。高齢になると膝の軟骨がすり減り、炎症を起こしやすくなるため、放置すると日常生活に大きな支障をきたす進行性の病気であることを理解しておくことが大切です。
そこで、変形性膝関節症の治療で近年注目されているのが漢方薬です。
漢方薬は、西洋医学とは異なるアプローチで、体の内側からバランスを整え、自己治癒力を高めることで根本的な改善を促します。西洋医学の治療と組み合わせることで、相乗効果も期待できます。
防已黄耆湯(ボウイオウギトウ):水分の滞留による症状に
防已黄耆湯は、体内の余分な水分(水毒)が原因で膝が重だるく感じる場合に用いられます。
水毒とは、東洋医学の概念で、体内の水分の代謝が滞り、体に悪影響を及ぼしている状態のことです。まるで体に不要な水が溜まっているダムのような状態をイメージしてみてください。
防已黄耆湯は、このダムの閘門を開けるように、利尿作用によって水分の代謝を改善し、膝の腫れや痛みを軽減します。
特に、雨の日や夕方になると膝が重だるくなる、靴下の跡がくっきり残るといった症状がある方に適しています。
越婢加朮湯(エッピカジュツトウ):炎症と腫れに
越婢加朮湯は、膝の炎症や腫れが強い場合に効果を発揮します。
炎症は、体を守るための反応ですが、過剰になると痛みや腫れの原因となります。炎症を火事に例えるなら、越婢加朮湯は、勢いよく燃え盛る炎を鎮める消火器のような役割を果たします。
熱感や腫れがひどい時、関節に水が溜まっている時など、炎症症状が顕著な場合に処方されることが多いです。
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン):血行促進による痛みの緩和に
桂枝茯苓丸は、血行を促進することで膝の痛みを和らげます。
血行不良になると、体に必要な栄養や酸素が供給されにくくなり、老廃物が溜まりやすくなります。これは、まるで道路が渋滞している状態と同じです。
桂枝茯苓丸は、この渋滞を解消するように血行を改善し、栄養や酸素をスムーズに届け、老廃物を排出しやすくします。冷え性で膝が冷えやすい、膝にシコリがある、生理痛や更年期障害もあるといった症状がある方にもおすすめです。
牛車腎気丸(ゴシャジンキガン):高齢者や冷え症の患者さんに
牛車腎気丸は、高齢者や冷え性の方に用いられる漢方薬です。
加齢や冷えによって低下した体の機能を温め、気力や体力を補うことで、膝の痛みやこわばりを改善します。これは、まるで冬の寒さで弱った植物に日光を当てて温めるように、体の内側から温めて活性化させるイメージです。
夜間頻尿や腰痛、足腰の冷えといった症状にも効果があり、日常生活の質の向上に役立ちます。
漢方薬服用時の注意点と医師への相談の重要性
漢方薬は自然由来の生薬から作られていますが、体質や他の薬との相互作用によって副作用が生じる可能性もあります。
自己判断で服用せず、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
変形性膝関節症の漢方治療に関するQ&A

Q1. 漢方薬の効果はどれくらいで現れますか?
A1. 効果が現れるまでには個人差がありますが、通常は数週間から数ヶ月かかります。焦らず、医師の指示に従って服用を続けることが大切です。
Q2. 漢方薬は健康保険は適用されますか?
A2. 多くの漢方薬は、変形性膝関節症の治療に保険適用されます。費用は処方される漢方薬の種類や量、医療機関によって異なりますので、事前に確認することをお勧めします。
Q3. 漢方薬以外の治療法と併用できますか?
A3. はい、漢方薬は他の治療法と併用できます。医師と相談し、最適な治療法を選択しましょう。
まとめ

変形性膝関節症の痛みでお悩みの方、このように漢方薬という選択肢があることを知っていましたか?
この記事では、変形性膝関節症における漢方治療の役割やメリット、代表的な漢方薬、そして費用や注意点まで詳しく解説しました。
漢方薬は、痛みや炎症を抑えるだけでなく、体の内側からバランスを整え、自己治癒力を高めることで、根本的な改善を目指します。西洋医学の治療と組み合わせることで、さらに効果的な治療が期待できるでしょう。
漢方薬は、快適な日常生活を送るための選択肢の一つです。気になる方は、ぜひ専門医に相談してみてください。
参考文献
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- Mahmoudian A, Lohmander LS, Mobasheri A, Englund M and Luyten FP. “Early-stage symptomatic osteoarthritis of the knee – time for action.” Nature reviews. Rheumatology 17, no. 10 (2021): 621-632.

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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