膝の痛み、特に変形性膝関節症の痛みは、加齢とともに進行するケースが多く、将来への不安に繋がります。 日常生活への影響も大きく、階段の上り下りや立ち上がりといった動作で痛みを感じる方もいるのではないでしょうか?
この記事では、変形性膝関節症の痛みを和らげる治療法の一つである「電気治療」に焦点を当てます。
TENS(経皮的電気神経刺激療法)は、変形性膝関節症の痛みの緩和を目的とした治療法の一つです。
電気治療の種類や効果のメカニズム、費用、そして最新の研究結果まで、具体的にわかりやすく解説しますので、不安の解消に役立てていただければ幸いです。
目次
変形性膝関節症における電気治療の効果とメカニズム

膝の痛みは、日常生活に大きな影を落とします。特に、変形性膝関節症による痛みは、加齢とともに進行するケースが多く、将来への不安を抱えている方も少なくありません。
この記事では、変形性膝関節症の痛みを和らげる治療法の一つである電気治療について、その効果やメカニズム、費用などを、より具体的に、そしてわかりやすく解説します。
不安を少しでも解消し、前向きな気持ちで治療に取り組むためにも、ぜひ最後までお読みください。
電気治療の種類とそれぞれの特徴
電気治療には様々な種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
ご自身の症状や痛みの性質に合った適切な治療法を選択するために、それぞれの違いを理解しておきましょう。
代表的な電気治療の種類は以下の通りです。
低周波治療: 低い周波数の電流を患部に流すことで、皮膚の表面に近い筋肉を刺激し、痛みを和らげます。比較的弱い刺激で、ピリピリとした感覚、あるいは軽く叩かれているような感覚を覚える方が多いです。
干渉波治療: 2種類の電流を体内で干渉させることで、より深部の筋肉や神経に作用させ、筋肉の収縮と弛緩を促します。低周波治療よりも強い刺激で、筋肉がリズミカルに動く感覚があります。より深部まで刺激が届くため、慢性的な痛みに対して効果的です。
TENS(経皮的電気神経刺激療法): 皮膚に電極を貼り付け、微弱な電流を流すことで、痛みの信号が脳に伝わるのをブロックする、あるいは痛みを和らげる物質(エンドルフィン)の分泌を促進します。ピリピリとした感覚や、軽い振動のような感覚があります。TENS(経皮的電気神経刺激療法)は、変形性膝関節症の痛みの緩和を目的とした治療法の一つです。
痛みの軽減効果とそのメカニズム
電気治療は、主に以下の3つのメカニズムによって痛みを軽減すると考えられています。
ゲートコントロール理論: 電気刺激によって、触覚などの痛覚以外の感覚神経を刺激することで、痛みの信号が脳に伝わるのをブロックします。これは、玄関のドア(ゲート)が一つしかない場合を想像してみてください。触覚の信号がドアを通過すると、痛みの信号はドアを通過できず、脳に伝わりにくくなるというイメージです。
エンドルフィン分泌促進: 電気刺激は、脳内でエンドルフィンという痛みを和らげる物質の分泌を促進します。エンドルフィンは、モルヒネのような鎮痛作用を持つ体内物質であり、”脳内麻薬”とも呼ばれています。
血行促進効果: 電気刺激によって血行が促進され、筋肉の緊張がほぐれ、痛みが軽減されます。血行が促進されると、酸素や栄養が患部に届きやすくなり、老廃物の排出も促されます。
関節可動域や機能改善への影響
電気治療は、痛みの軽減だけでなく、関節可動域の改善や機能改善にも効果が期待できます。
痛みが軽減すると、関節を動かしやすくなるため、可動域が広がります。
また、電気刺激によって筋肉が刺激されることで、筋力が強化され、関節の安定性も向上します。これらの相乗効果によって、日常生活動作の改善につながります。
TENS(経皮的電気神経刺激療法)は、変形性膝関節症の痛みの緩和を目的とした治療法の一つです。
電気治療が適応となる変形性膝関節症の症状
電気治療は、変形性膝関節症の様々な症状に適応となります。
例えば、安静時痛、動作時痛、階段昇降時の痛み、立ち上がり時の痛み、朝のこわばりなどに効果が期待できます。
具体的には、安静にしている時にも常に感じる鈍い痛み、体を動かすと強くなる痛み、階段の上り下りがつらい、椅子から立ち上がる時に痛みを感じる、朝起きた時に膝がこわばる、といった症状です。
しかし、すべての変形性膝関節症に効果があるとは限りません。
変形性膝関節症の進行度や痛みの原因、他の合併症の有無などによって適切な治療法は異なります。そのため、自己判断せずに、医師に相談することが重要です。
電気治療の費用と保険適用について
電気治療は健康保険が適用されます。費用は、治療の種類や部位、医療機関によって異なりますが、おおむね数百円程度です。
他の治療と併用して行う場合もあります。費用の詳細については、受診する医療機関にお問い合わせください。
変形性膝関節症の電気治療を受ける際の注意点とその他の治療法

膝の痛みは、日常生活の質を大きく低下させます。特に変形性膝関節症は、加齢とともに進行する傾向があり、将来への不安を抱える患者さんも多いです。
電気治療は、変形性膝関節症の痛みを和らげる治療法の一つですが、メリットだけでなくデメリットも存在します。
患者さん一人ひとりの状態に適した治療法を選択するために、電気治療を受ける際の注意点やその他の治療法について、具体的に解説していきます。
電気治療の副作用とリスク
電気治療は比較的安全な治療法ですが、全く副作用がないわけではありません。
まれに、皮膚のかぶれや赤み、ひりひりするような刺激感、かゆみなどの軽微な副作用が現れることがあります。電気治療中に違和感を感じた場合は、すぐに担当の医療スタッフに伝えるようにしてください。
また、ペースメーカーなどの埋め込み型医療機器を使用している方や、心臓に疾患のある方、妊娠中の方などは、電気治療が適さない場合があります。治療を受ける前に、必ず医師に持病や使用中の医療機器について詳しくお伝えください。
電気治療が適応されないケース
電気治療は、あらゆる膝の痛みに効果がある万能薬ではありません。感染症のある部位、悪性腫瘍のある部位、骨折直後の部位などには適用できません。また、感覚障害のある方や電気刺激に対する過敏症のある方にも適さない場合があります。
変形性膝関節症であっても、すべての患者さんに電気治療が有効とは限りません。
治療期間と頻度、効果を高めるための併用療法
電気治療の期間や頻度は、患者さんの症状の程度や治療への反応によって異なります。
一般的には、1回あたり15~30分程度の治療を、週に数回行います。
治療期間は数週間から数ヶ月に及ぶ場合もあります。
電気治療の効果を高めるためには、他の治療法と組み合わせて併用することが有効です。
例えば、運動療法や温熱療法、薬物療法などを組み合わせることで、より効果的に痛みを軽減し、関節機能を改善することができます。

電気治療と運動療法の相乗効果
電気治療は単独でも効果がありますが、適切な運動療法と組み合わせることでさらに効果が高まると実感しています。
特に電気治療で痛みが緩和された「治療後15〜30分」の時間帯に、膝周囲の筋力トレーニングを行うのが効果的です。
私はこの「治療後の黄金時間」を利用したエクササイズプログラムを患者さんに指導していますが、「痛みが少ない状態で運動できるので、効果的に筋力がついてきました」という声をよく聞きます。
治療法の組み合わせとタイミングの工夫が、総合的な効果を高めることを日々実感しています。
▼変形性膝関節症の運動療法については、以下もご参考ください。
電気治療以外の治療法の選択肢(薬物療法、運動療法、手術など)
変形性膝関節症の治療法は、電気治療だけではありません。痛みを和らげるための薬物療法として、内服薬やヒアルロン酸注射などがあります。
また、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法は、関節の動きをスムーズにし、痛みを軽減する効果が期待できます。これらの治療法は、電気治療と併用することで、相乗効果が期待できます。
症状が進行している重症例では、人工関節置換術などの手術が必要となる場合もあります。手術療法は最終手段ではありますが、痛みが強い場合や日常生活に支障をきたしている場合は、検討する価値があります。
▼変形性膝関節症の人工関節置換術を検討されている方は、以下もご参考ください。
高齢者の変形性膝関節症に対する電気治療の注意点
高齢者の場合、皮膚が薄くデリケートになっているため、電気治療による皮膚への刺激に特に注意が必要です。
また、複数の持病をお持ちであったり、多くの薬を服用している場合も少なくありません。
そのため、治療を受ける前に、医師に持病や服用中の薬について詳しく伝えることが重要です。
高齢者の変形性膝関節症では、骨粗鬆症などの合併症を伴っている場合もあるため、包括的な視点から適切な治療計画を立てていく必要があります。
まとめ

変形性膝関節症における電気治療の効果、種類、費用、注意点などについて解説しました。
電気治療は、痛みを和らげ、関節の動きを良くする効果が期待できる、比較的安全な治療法です。
費用も保険適用で数百円程度と、経済的な負担も少ないでしょう。しかし、すべての方に効果があるとは限らず、副作用のリスクもゼロではありません。ご自身の症状に合った治療法を選択するために、まずは医師に相談し、適切なアドバイスを受けることが大切です。
電気治療だけでなく、運動療法や薬物療法など、他の治療法との併用も効果的です。痛みを我慢せず、快適な日常生活を送るためにも、早めの受診と適切な治療を心がけましょう。
参考文献
- Johnson MI, Paley CA, Jones G, Mulvey MR, Wittkopf PG. Efficacy and safety of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) for acute and chronic pain in adults: a systematic review and meta-analysis of 381 studies (the meta-TENS study). BMJ open 12, no. 2 (2022): e051073.
- Reichenbach S, Jüni P, Hincapié CA, Schneider C, Meli DN, Schürch R, Streit S, Lucas C, Mebes C, Rutjes AWS, da Costa BR. Effect of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) on knee pain and physical function in patients with symptomatic knee osteoarthritis: the ETRELKA randomized clinical trial. Osteoarthritis and cartilage 30, no. 3 (2022): 426-435.
- Wu Y, Zhu F, Chen W, Zhang M. Effects of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) in people with knee osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis. Clinical rehabilitation 36, no. 4 (2022): 472-485.

-情報提供医師
松本 和樹 Kazuki Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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