膝の痛み、まさか変形性膝関節症のサインかも?
実は、変形性膝関節症は、軟骨のすり減りによって痛みや炎症を引き起こす病気で、放置すると日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
さらに、半月板損傷や関節水腫といった合併症のリスクも潜んでいます。
この記事では、変形性膝関節症の合併症の種類や症状、そして最新の治療法までを整形外科医がわかりやすく解説します。
快適な生活を取り戻すための第一歩を、ここから踏み出してみませんか?
目次
変形性膝関節症の合併症:種類と症状

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みが生じる病気です。この変形性膝関節症が進行することで、他の疾患も併発する恐れがあります。
この記事では、変形性膝関節症に伴いやすい合併症とその症状について、高齢者の方にもわかりやすく解説します。
合併症を正しく理解することで、適切な治療と予防に取り組み、快適な生活を取り戻しましょう。
変形性膝関節症による膝痛
変形性膝関節症の代表的な症状は、膝の痛みです。初期段階では、立ち上がったり、階段を昇り降りしたりする動作で痛みを感じやすく、安静にしていると痛みが和らぎます。しかし、病気が進行すると、安静時や夜間にも痛みが続くようになり、日常生活に大きな支障が出始めます。
痛みの種類は人それぞれで、鈍痛、鋭い痛み、焼けるような痛みなど、さまざまです。
また、膝の痛みに加えて、O脚の変形が現れることもあります。
変形性膝関節症の痛みは、関節軟骨のすり減りによって起こります。初期は関節の炎症が痛みの主な原因ですが、進行すると骨棘(こつきょく:骨の表面にできる突起)の形成や、骨同士が直接ぶつかることで痛みが生じるようになります。
半月板損傷:症状と原因
半月板は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にあるC型の軟骨で、膝関節への衝撃を吸収するクッションの役割をしています。変形性膝関節症では、この半月板が損傷しやすく、合併症としてよく見られます。
特に、内側の半月板が損傷しやすい傾向にあります。O脚変形を伴う変形性膝関節症の場合、内側半月板が外側に押し出される「内側半月板逸脱」がほぼ全ての方で認められます。
高齢者の場合、正座を長時間することで内側半月板が損傷し、強い痛みを伴う「内側半月板後根断裂」のリスクも高まります。
半月板が損傷すると、膝の痛み、腫れ、引っ掛かり、そして動かしにくさなどが生じます。さらに、内側半月板逸脱は関節軟骨への負担を増大させるため、変形性膝関節症の進行を加速させる可能性があります。
最近の研究では、高脛骨骨切り術(HTO:すねの骨を切って角度を調整する手術)が、内側半月板突出(MME)の値を平均2.78mm減少させる効果があり、変形性膝関節症の進行抑制に繋がるという報告も出ています。
関節水腫:水が溜まるメカニズム
関節水腫は、膝関節に水が溜まる状態で、変形性膝関節症の代表的な症状の一つです。
関節内部の炎症により、関節液の分泌が増加することが原因です。関節液は、関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割をしていますが、炎症が起こると関節液が過剰に作られ、膝に水が溜まって腫れてしまいます。
ベーカー嚢胞:膝裏の腫れの原因
ベーカー嚢胞は、膝の裏側にできる腫瘤(しゅりゅう:こぶ状の出来物)で、膝関節の滑液包(かつえきほう:関節液を包む袋)が大きくなったものです。
多くの場合、変形性膝関節症や半月板損傷などの膝関節の異常が原因で発生します。
関節水腫と同様に、関節内の炎症が滑液包にも影響を与え、滑液が過剰に作られて嚢胞が形成されます。
変形性股関節症:合併症のリスク
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り、痛みや運動制限を引き起こす病気です。
変形性膝関節症とは直接的な関係は低いものの、高齢者では変形性膝関節症と変形性股関節症を併発しているケースも珍しくありません。変形性膝関節症によって歩行が困難になると、股関節への負担が増加し、変形性股関節症を発症または悪化させるリスクがあります。
興味深いことに、人工股関節置換術後の大腿骨周囲骨折に関する研究では、術前の診断が変形性関節症であることは、骨折のリスクを減少させる保護因子であるという報告があります。

反対側の膝への負担に注意
変形性膝関節症の患者さんを長期間診ていると、最初は片方の膝だけだった症状が、数年後に反対側の膝にも現れるケースが少なくありません。これは痛みのある方の膝をかばうために、知らず知らずのうちに反対側に体重をかけるようになるためです。
私は初診時から「健康な方の膝も同じように大切にケアしましょう」と伝え、両膝の筋力トレーニングを指導するようにしています。「片方だけ悪いと思っていたのに、先生の予測通り数年後に反対側も痛くなり始めました」という患者さんの言葉は、予防的視点の重要性を示しています。
変形性膝関節症の合併症:予防と治療

変形性膝関節症は進行性の病気であるため、合併症のリスクも高まります。
この記事では、変形性膝関節症に伴う合併症とその予防・治療法について、高齢者の方にもわかりやすく解説します。
セルフチェック:早期発見の重要性
変形性膝関節症は早期発見・早期治療が重要です。
40歳以上で、階段の昇り降りや立ち上がり、歩き始めなどに膝の痛みを感じたら、変形性膝関節症の初期症状の可能性があります。
軟骨のすり減りは自然に修復することが難しいため、放置すると症状が悪化し、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
初期症状としては、階段の上り下りや正座をした際に膝に痛みを感じることが挙げられます。進行すると、平地を歩くだけでも痛みが生じ、安静時や夜間にも痛みが続くようになります。
また、膝に水が溜まったり、腫れたり、曲げ伸ばしすると音がする、O脚になるといった症状が現れることもあります。
これらの症状に心当たりがある場合は、早めに整形外科を受診しましょう。
運動療法:効果的な運動の種類
変形性膝関節症の運動療法の目的は、膝関節の負担を軽減し、周囲の筋肉を強化することにあります。水中歩行や水中体操は、水の浮力によって膝への負担が軽くなるため、特におすすめです。
▶変形性膝関節症に効く水中ウォーキングの正しい方法と効果 | 専門医監修も併せてご覧ください。
プールなどの環境が難しい場合は、自宅でできる運動として、脚上げ体操や横上げ体操なども効果的です。これらの運動は、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)やお尻の筋肉(臀筋)を鍛え、膝関節を安定させるのに役立ちます。無理のない範囲で、毎日続けることが大切です。
高齢者の場合、正座を長時間続けると内側半月板に負担がかかり、損傷しやすくなるため注意が必要です。内側半月板は膝関節の内側にあるC型の軟骨で、膝への衝撃を吸収するクッションの役割を担っています。この半月板が損傷すると、膝の痛みや腫れ、引っ掛かり、動かしにくさなどが生じます。
薬物療法:痛み止めとヒアルロン酸注射
変形性膝関節症の薬物療法は、痛みや炎症を抑えることを目的としています。
消炎鎮痛剤は内服薬や貼付薬などがあり、痛みの程度に合わせて使い分けられます。
▶変形性膝関節症への湿布の効果について解説していますので併せてお読みください。
また、ヒアルロン酸注射は関節内に直接注射することで、軟骨の保護や再生を促す効果が期待できます。ヒアルロン酸は関節液の主成分であり、関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割をしています。
非変性II型コラーゲン(UC-2)という栄養補助食品も、変形性膝関節症の治療に用いられることがあります。UC-2は免疫を介したメカニズムで炎症を軽減し、軟骨修復を促進する可能性が示唆されています。
手術療法:人工関節置換術の種類とメリット・デメリット
薬物療法や運動療法で効果がない場合、手術療法が検討されます。
人工関節置換術は、傷ついた関節を人工関節に置き換える手術です。痛みを軽減し、関節の機能を回復させる効果が高い一方、手術に伴うリスクや合併症の可能性もあります。
▶【高齢者が知るべき】変形性膝関節症手術のリスクを医師が解説
近年では、ロボット支援型人工膝関節置換術(RA-TKA)やナビゲーション支援型人工膝関節置換術(NA-TKA)が登場し、手術の精度が向上しています。
これらの手術法は、従来の手術に比べて、より正確に関節を置換できるため、術後の回復も良好な傾向にあります。ただし、人工関節の耐久性には限りがあるため、将来的な再手術が必要になる可能性もあります。
高位脛骨骨切り術は、骨を切って変形を矯正する手術です。人工関節置換術に比べて身体への負担が少ないですが、適応となる患者さんは限られています。
最新治療:再生医療の可能性
変形性膝関節症の最新治療として、再生医療が注目されています。脂肪由来間葉系幹細胞(ADMSC)や間質血管画分(SVF)を関節内に注射する治療法は、疼痛軽減と関節機能改善に効果があると報告されています。
特にADMSCは軟骨再生効果も期待できるため、変形性膝関節症の進行を遅らせる可能性があります。これらの治療法は、手術療法に比べて身体への負担が少ないため、今後の発展が期待されています。
変形性膝関節症に対する再生医療について、以下でも詳しく解説しています。
▶変形性膝関節症の最新治療!再生医療の種類と特徴とは【医師が解説】
まとめ

変形性膝関節症が進行すると、半月板損傷、関節水腫、ベーカー嚢胞、さらには変形性股関節症といった合併症のリスクが高まります。
早期発見のためには、階段の昇り降りや立ち上がり時の痛みなどに注意し、少しでも違和感を感じたら整形外科への受診が大切です。
治療法には、運動療法、薬物療法、手術療法、そして最新の再生医療などがあり、症状や進行度に合わせて適切な方法が選択されます。日常生活における負担を軽減し、膝周りの筋肉を強化する運動療法は、症状の進行を遅らせるのに効果的です。
薬物療法や注射による治療、人工関節置換術といった手術療法も症状に合わせて検討されます。最新の再生医療にも期待が寄せられています。
変形性膝関節症は進行性の病気ですが、適切な治療とケアで症状をコントロールし、快適な生活を送ることは可能です。
参考文献
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- Gupta A, Maffulli N. “Undenatured type II collagen for knee osteoarthritis.” Annals of medicine 57, no. 1 (2025): 2493306.

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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