膝の痛み、特に階段の上り下りや朝の立ち上がりが辛い、そんな経験はありませんか?
実は、変形性膝関節症に悩まされている方は多く、国内では40歳以上の約8割が罹患しているとも言われています。
この病気は、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みを引き起こす進行性の病気です。将来への不安を抱えている方もいるかもしれません。
しかし、諦めないでください。適切なケア、特にストレッチは、症状の緩和に非常に効果的です。
この記事では、変形性膝関節症の改善に役立つ効果的なストレッチ方法を、医師がわかりやすく解説します。
自宅で簡単にできる3つのストレッチもご紹介するので、一緒に膝の痛みを改善し、快適な毎日を取り戻しましょう。
目次
変形性膝関節症におけるストレッチの効果と重要性

膝の痛み、動きにくさ、つらいですよね。
階段の上り下りや、朝の立ち上がり時、正座をする時など膝に痛みがあると、日常生活の様々な場面で不便を感じてしまうでしょう。
特に「変形性膝関節症」と診断されると、将来への不安も大きくなってしまうかもしれません。
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みを引き起こす病気です。進行性の病気であるため、適切なケアをせずに放置すると、症状は徐々に悪化していきます。
しかし、ご安心ください。適切なケアを続けることで、症状を和らげ、快適な生活を送ることは十分可能です。
そのケアの中でも、ストレッチは非常に重要です。
ストレッチは、硬くなった筋肉をほぐし、関節の動きをスムーズにする効果が期待できます。継続することで、痛みの軽減や予防にもつながります。
この章では、ストレッチが変形性膝関節症にどのように効果を発揮するのか、そのメカニズムや具体的な方法について、できるだけ専門用語を使わずに、わかりやすく解説していきます。
一緒に、膝の痛みを改善し、健康な毎日を目指しましょう。
膝関節に良いストレッチの基本知識
ストレッチには大きく分けて「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」の2種類があります。それぞれのストレッチの特徴を理解し、ご自身の状態に合った方法で行うことが大切です。
静的ストレッチ
静的ストレッチとは、筋肉をゆっくりと伸ばし、一定時間その状態をキープするストレッチ方法です。
まるで伸びをするように、ジワ~っと筋肉を伸ばすことをイメージしてみてください。この静的ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、関節の可動域を広げる効果が期待できます。
代表的な例としては、太ももの前側を伸ばすストレッチや、ふくらはぎを伸ばすストレッチなどがあります。これらのストレッチは、椅子に座った状態や壁に手をついた状態でも行うことができるため、高齢の方にも比較的安全に行えます。
動的ストレッチ
動的ストレッチとは、体を動かしながら筋肉を伸ばすストレッチ方法です。
ラジオ体操のような、腕を回したり、足を曲げ伸ばししたりする動きが当てはまります。動的ストレッチは、筋肉の柔軟性を高めるだけでなく、血行促進効果も期待できるため、運動前のウォーミングアップとしても効果的です。
しかし、勢いをつけて行うと怪我のリスクも高まるため、ゆっくりと、無理のない範囲で行うことが重要です。高齢者の方や、膝の痛みが強い方は、特に注意が必要です。
高齢者の場合の注意点
高齢者の場合、加齢に伴い筋肉や関節の柔軟性が低下しているため、ストレッチを行う際には特に注意が必要です。
若い頃のように急に動いたり、無理に伸ばそうとすると、筋肉や関節を痛めてしまう可能性があります。
ご自身のペースでゆっくりと行うこと、そして痛みを感じる場合はすぐに中止することが大切です。
また、転倒のリスクを減らすため、椅子に座った状態や壁に手をついた状態など、安定した姿勢で行うようにしましょう。
安全にストレッチを行うためには、医師や理学療法士の指導を受けるのが望ましいです。
専門家のアドバイスは、あなたの状態に合った適切なストレッチ方法を見つける上で、大変役立ちます。
ストレッチが膝の痛みを軽減する仕組み
変形性膝関節症になると、膝関節周辺の筋肉が硬くなり、関節の動きが悪くなります。
これは、関節の滑らかな動きをサポートするはずの筋肉が、硬くなって動きを制限してしまうからです。そして、この筋肉の硬さが痛みの原因の一つです。
ストレッチを行うことで、硬くなった筋肉がほぐされ、血行が促進されます。その結果、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減されるのです。
ストレッチによる関節可動域の拡大効果
変形性膝関節症では、関節の動きが悪くなり、日常生活動作にも支障をきたすことがあります。
「正座ができない」「階段の上り下りがつらい」「しゃがむのが難しい」など、以前は簡単にできていた動作が困難になることもあります。
これは、関節の可動域が狭くなっていることが原因です。
ストレッチを継続的に行うことで、関節の可動域を広げ、膝の曲げ伸ばしがスムーズになります。階段の上り下りや歩行などの動作がしやすくなるため、生活の質の向上に繋がります。
研究によると、マニュアルセラピー(マッサージや関節モビライゼーションといった手技療法)は膝の痛みを軽減し、関節可動域と機能を改善する可能性があることが示唆されています。これはストレッチと同様に、筋肉の柔軟性や関節の動きを改善することで効果を発揮すると考えられています。
自宅でできるストレッチ方法5選

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みを引き起こす病気です。
進行性の病気であるため、適切なケアをせずに放置すると、症状は徐々に悪化します。しかし、適切なケアを続けることで、症状を和らげ、快適な生活を送ることは十分可能です。
そのケアの中で、ストレッチは非常に重要です。硬くなった筋肉をほぐし、関節の動きをスムーズにする効果が期待できるからです。継続することで、痛みの軽減や予防にもつながります。
今回は、自宅でできる簡単なストレッチ方法を3つご紹介いたします。高齢者の方でも安全に行える方法を厳選しましたので、ぜひお試しください。
①太ももを伸ばす前屈ストレッチ
太ももの前側にある筋肉(大腿四頭筋:だいたいしとうきん)は、膝を伸ばす時に使う大切な筋肉です。この筋肉が硬くなると、膝の動きが悪くなり、痛みが強くなることがあります。椅子に座って行う方法と、立って行う方法の2種類をご紹介しましょう。
椅子に座って行う方法
椅子に浅く腰掛け、片方の足を前に伸ばします。つま先を天井に向けて、かかとを床につけたまま上体を前に倒します。太ももの前側が伸びているのを感じながら、30~60秒間キープします。反対側の足も同様に行います。ポイントは、無理に伸ばしすぎないことです。気持ち良いと感じる程度で止めましょう。
立って行う方法
壁や手すりにつかまり、片足を後ろに曲げます。かかとをお尻に近づけるようにし、太ももの前側が伸びているのを感じながら、30~60秒間キープします。反対側の足も同様に行います。バランスを崩しやすいので、必ず壁や手すりにつかまって行ってください。
②膝を曲げ伸ばす簡単ストレッチ
椅子に座ったままできる簡単なストレッチです。膝をゆっくりと曲げ伸ばしすることで、関節の動きを滑らかにし、周りの筋肉をほぐす効果が期待できます。
椅子に深く腰掛け、足を肩幅に開きます。両足を床につけたまま、片方の膝をゆっくりと曲げ、胸に近づけるように持ち上げます。10秒間キープし、ゆっくりと元に戻します。反対側の足も同様に行います。左右それぞれ10回ずつ繰り返しましょう。
③ふくらはぎを伸ばすストレッチ
ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋:かたいさんとうきん)は、歩いたり走ったりする時に重要な役割を果たしています。この筋肉が硬くなると、膝にも負担がかかり、痛みを悪化させる可能性があります。
壁や手すりに手をついて立ち、足を前後に開きます。後ろ側の脚の膝を軽く曲げ、かかとを床につけたまま腰を落とします。ふくらはぎが伸びているのを感じながら、30秒間キープします。反対側の足も同様に行います。
ふくらはぎのストレッチは、膝だけでなく、足首の柔軟性も高める効果があります。高齢者の方でバランスに不安がある方は、椅子に座って行うことも可能です。椅子に座り、片方の足を前に伸ばし、つま先を天井に向けます。そのまま、つま先をゆっくりと手前に引くと、ふくらはぎが伸びるのを感じます。
ストレッチの正しいやり方
ストレッチの効果を高めるためには、正しいやり方で行うことが重要です。
- 痛みを感じない範囲で行う: 痛みがある場合は、無理せず範囲を狭くするか、中止しましょう。
- 反動をつけない: ゆっくりとした動作で行い、反動をつけないようにしましょう。急な動きは筋肉や関節を痛める原因になります。
- 呼吸を続ける: ストレッチ中は、呼吸を止めないようにしましょう。深くゆっくりとした呼吸を心がけてください。
- 毎日続ける: ストレッチの効果を高めるためには、毎日続けることが大切です。1回5分でも良いので、習慣にしましょう。継続は力なりです。
日常生活に取り入れるコツ
ストレッチは、特別な時間を作るだけでなく、日常生活の中で気軽に取り入れることができます。
- テレビを見ながら:CM中や番組の合間に、簡単なストレッチを行ってみましょう。
- 歯磨きしながら:かかと上げ下げ運動など、ふくらはぎのストレッチができます。
- 入浴後:筋肉が温まっている入浴後は、ストレッチの効果が高まりやすい時間帯です。
- 寝る前:リラックス効果のあるストレッチは、質の良い睡眠にも繋がります。
このように、日常生活のちょっとした時間にストレッチを取り入れることで、無理なく続けることができます。マニュアルセラピー(マッサージや関節モビライゼーションといった手技療法)のように医療専門家による施術も効果的ですが、日々のストレッチは変形性膝関節症の症状改善に大きく貢献します。ぜひ、今日から始めてみてください。

継続のための工夫
どんなに効果的なストレッチも、継続されなければ意味がありません。
私のクリニックでは「3分ルール」というアプローチを採用しています。1回のセッションを3分以内に収め、1日3回行うという単純な指導方法ですが、これにより患者さんの継続率が大幅に向上しました。また、スマートフォンのタイマー機能を活用して、朝・昼・晩のアラームをセットする方法も推奨しています。
「短時間でも確実に続ける」という方針が、長期的には大きな効果をもたらすことを、多くの成功事例から実感しています。
注意すべきストレッチのリスクと注意点
膝の痛みを和らげたい一心でストレッチを始めることは素晴らしいです。しかし、ストレッチの効果だけに着目するのではなく、リスクについても理解しておくことが大切です。
なぜなら、間違った方法や過度なストレッチは、かえって膝を痛めてしまうことがあるからです。せっかくの努力が逆効果にならないよう、安全で効果的なストレッチを行うためのリスクと注意点を確認していきましょう。
無理なストレッチが引き起こす痛み
ストレッチの目的は筋肉を伸ばして柔軟性を高めることですが、伸ばしすぎると筋肉や関節を痛めるリスクがあります。特に、変形性膝関節症の方は、すでに膝関節に負担がかかっている状態です。
無理なストレッチを行うと、炎症が悪化したり、すり減った軟骨への負担が増したりする可能性があります。例えば、すでに痛みを感じているにもかかわらず、無理に膝を深く曲げたり、伸ばしたりするストレッチは禁物です。
また、ストレッチ中に強い痛みを感じた場合は、すぐに中断してください。軽い痛みや違和感であれば問題ありませんが、強い痛みは身体からの危険信号です。
痛みを我慢してストレッチを続けると、関節をさらに傷つけてしまう恐れがあります。これは、炎症が起きている部分にさらに負担をかけることと同じです。風邪をひいて熱がある時に激しい運動を避けるのと同じように、炎症がある関節を安静にすることは、回復への第一歩と言えるでしょう。
一般的なストレッチの誤解とリスク
ストレッチに関して、「痛みがある時はストレッチをしない方が良い」「ストレッチはすればするほど良い」といった誤解が多く見られます。しかし、これらの考え方は必ずしも正しいとは言えません。
痛みがある時は、まずその原因を特定することが重要です。筋肉の緊張が原因で痛みが出ている場合は、軽いストレッチで筋肉をリラックスさせることで痛みが和らぐことがあります。
しかし、炎症が原因の場合は、ストレッチによって患部を刺激し、症状を悪化させてしまう可能性があるので注意が必要です。
また、ストレッチは長時間行ったり、過度に強度を高めたりすると、筋肉や関節への負担が大きくなりすぎて、逆効果になることがあります。
適切な時間と強度で行うことが重要です。専門家によるマニュアルセラピー(マッサージや関節モビライゼーションといった手技療法)は、適切な刺激量で関節可動域と機能を改善する可能性があることが研究で示唆されており、参考になります。
専門家によるアドバイスの重要性
安全かつ効果的なストレッチを行うためには、医師や理学療法士などの専門家のアドバイスが不可欠です。専門家は、あなたの膝の状態を正確に診断し、個々の状態に合わせた適切なストレッチ方法を指導してくれます。
自己流のストレッチは、間違った方法で行ってしまうリスクがあり、かえって膝を痛めてしまう可能性があります。特に、変形性膝関節症のように、すでに膝に疾患がある場合は、専門家の指導を受けることを強くおすすめします。
専門家は、関節の構造や動きのメカニズム、筋肉の状態などを詳しく理解しています。そのため、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、適切なストレッチ方法や強度、頻度などを指導することができます。
体調や症状に合わせたストレッチの選び方
変形性膝関節症の症状は人それぞれ異なり、進行度によっても適切なストレッチは変わってきます。初期の変形性膝関節症であれば、比較的軽いストレッチから始めるのが良いでしょう。
症状が進行している場合は、無理のない範囲でストレッチを行い、痛みが強い時は安静にすることも大切です。また、静的ストレッチや動的ストレッチなど、ストレッチの種類も様々です。
静的ストレッチは、筋肉を一定時間伸ばした状態を保つ方法で、筋肉の柔軟性を高める効果があります。一方、動的ストレッチは、関節を動かしながら筋肉を伸ばす方法で、ウォーミングアップに適しています。
どのストレッチが自分に合っているのかわからない場合は、迷わず専門家に相談しましょう。自分にとって最適なストレッチ方法を見つけることは、変形性膝関節症の改善への近道となります。
まとめ

この記事では、変形性膝関節症に効果的なストレッチ方法を、自宅で簡単にできる3つの方法を中心にご紹介しました。
ストレッチは、硬くなった筋肉をほぐし関節の動きをスムーズにすることで、膝の痛みを軽減し、快適な日常生活を送るための大切なケアです。
静的ストレッチと動的ストレッチの特徴を理解し、ご自身の状態に合った方法を選びましょう。痛みを感じない範囲で、無理なく毎日続けることがポイントです。紹介したストレッチ方法以外にも、日常生活の中で、テレビを見ている時や歯磨きをしている時など、ちょっとした時間に取り入れてみてください。
より効果的に、そして安全にストレッチを行うためには、医師や理学療法士などの専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。自己流で行うと、かえって膝を痛めてしまう可能性もあります。専門家の指導のもと、適切なストレッチを行い、健康な毎日を目指しましょう。
参考文献

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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