変形性膝関節症の進行速度と症状の変化を徹底解説

変形性膝関節症 進行速度
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膝の痛み、それは、放置すると日常生活に大きな影響を与える変形性膝関節症の初期症状かもしれません。実は、自覚症状がない初期段階から病状は進行しているのです。

1999年の調査では約40万人だったうつ病患者が、2020年には150万人と約4倍に増加している現代社会。 膝の痛みも同様に、誰もが悩まされる可能性のある身近な問題と言えるでしょう。

この記事では、変形性膝関節症の進行速度や段階別の症状、最新の治療法までを徹底解説。

ご自身の状態を理解し、適切な対策を始めるための第一歩を踏み出してみませんか?

変形性膝関節症の進行段階と症状の変化

変形性膝関節症の進行段階と症状の変化
変形性膝関節症の進行段階と症状の変化

膝の痛みは、日常生活に大きな影を落とします。スポーツでの損傷がきっかけになったり、特に加齢とともに進行する変形性膝関節症は、多くの中高年の方々が抱える疾患の悩みのひとつです。

初期の段階では自覚症状が乏しいことも多く、放置されがちです。しかし、変形性膝関節症は徐々に進行する病気であるため、早期に適切な治療を開始することで、進行を遅らせ、痛みを和らげ、快適な生活を送ることに繋がります。

変形性膝関節症の進行は、軟骨のすり減り具合や骨棘(こつきょく:骨の変形)の形成、炎症の程度、関節可動域の制限、日常生活への影響などを総合的に判断します。

文献では、手術をしない変形性膝関節症の患者さんに対する治療に関する研究の重要性も指摘されています。これは、必ずしもすべての人が手術を必要とするわけではないからです。実際、手術に至らない多くの患者さんが、保存療法で症状のコントロールを試みています。

この章では、変形性膝関節症の進行段階ごとの症状の変化を詳しく解説していきます。

ご自身の状態を理解し、適切な対策をとるためにも、ぜひ参考にしてください。

初期段階:違和感や軽い痛み、初期症状を見つけるポイント

初期段階では、立ち上がり時や歩き始めなどに、膝に軽い違和感やこわばりを感じることがあります。「膝が重だるい」「何となくぎこちない」といった表現をされる方もいます。階段の昇り降りで痛みを感じたり、しばらく歩くと痛みが治まる、といった特徴もあります。

この段階では、レントゲン検査でも異常が見つからない場合もあります。軟骨のすり減りは軽微で、炎症もほとんど起こっていないためです。しかし、ご自身の感覚を大切にしましょう。

朝起きた時や長時間同じ姿勢を続けた後に、膝にこわばりや違和感がないか、階段の昇り降りで痛みを感じないか、などに注意してみてください。健常な状態であれば、これらの動作で痛みや違和感を感じることはありません。

これらの症状に心当たりがあれば、早めに整形外科を受診することをお勧めします。

▼変形性膝関節症のレントゲン写真での分類について、以下でも詳しく解説しています。

中期段階:慢性的な痛み、正座や階段の上り下りが困難になることも

中期になると、初期段階のような一時的な痛みではなく、慢性的な痛みが続くようになります。

正座やしゃがむ、階段の昇り降りが困難になることもあります。膝に関節液がたまり、腫れや熱感を伴うこともあります。また、膝のalignment(アライメント:並び方)に変化が生じ、O脚やX脚になることもあります。歩行時に膝が不安定になり、横揺れが生じることもあります。

中期段階では、日常生活に支障が出始めるため、医療機関への受診が強く推奨されます。

後期段階:激しい痛み、変形による歩行障害、O脚やX脚などの症状

後期になると、痛みはさらに激しくなり、常に痛みを感じることがあります。

安静にしていても痛みがある「安静時痛」が出現することもあります。膝の変形も進行し、歩行が困難になることもあります。O脚やX脚もさらに顕著になります。日常生活に大きな支障をきたし、買い物や家事など、今までできていたことができなくなることもあります。

この段階では、手術療法(骨切り術、人工関節置換術など)を検討する必要が出てきます。人工関節置換術にも様々な種類があり、セメントレス単顆膝関節置換術(UKA)は、従来のセメント固定式に比べて安全性と有効性が確認されているという研究結果も出ています。

末期段階:日常生活に支障、手術が必要となるケース

末期になると、立ったり歩いたりすることも困難になり、日常生活に著しい支障が出ます。

杖や車椅子が必要になることもあります。膝の変形も非常に強く、痛みも激しいため、夜も眠れないほどの痛みを感じることもあります。

この段階では、手術が必要となるケースがほとんどです。人工関節置換術は、変形した関節を人工関節に置き換える手術で、痛みの軽減や関節機能の改善に効果的です。

進行の速度と影響する要因:速度と要因は個人差あり

変形性膝関節症の進行速度には個人差があり、数年で後期段階に進む人もいれば、数十年かけてゆっくり進行する人もいます。

進行の速度は、年齢、体重、生活習慣、遺伝的な要因など、様々な要因が影響します。

たとえば、肥満の方は膝への負担が大きいため、進行しやすい傾向があります。また、和式トイレの使用や正座など、膝を深く曲げる姿勢を頻繁にとる方も、膝への負担が大きいため注意が必要です。激しいスポーツ、仕事などで膝に負担がかかる生活なども挙げられます。

加齢とともに軟骨が衰えていくのは自然なことで、軟骨を作る能力が低下し、すり減りやすくなります。

肥満も大きな要因の一つで、体重が増えるほど膝への負担が増し、軟骨のすり減りが加速します。

また、遺伝的に軟骨が弱い体質の方もいます。過去に膝を怪我したことがある場合も、変形性膝関節症のリスクが高まります。特に、半月板や靭帯などの損傷は、軟骨への負担を増大させ、変形性膝関節症の進行を早める可能性があります。

松本 美衣
松本 美衣

職業と進行速度の相関

変形性膝関節症の進行速度と職業との間には密接な関連があることを強く実感しています。特に膝に大きな負担がかかる職業(建設業、農業、看護師、理容師など長時間立ち仕事や重量物を扱う仕事)に従事している方は、デスクワーク中心の方に比べて明らかに進行が速い傾向があります

60代の男性建設作業員は軽度の膝関節症と診断されてからわずか3年で高度変形に進行しましたが、同じ年齢・性別・初期状態の事務職の方は7年経ってもほとんど進行が見られませんでした。

私はこのような職業リスクを持つ患者さんに対して、作業中の膝サポーターの着用、休憩時間の確保、就業後のケア(冷却やストレッチ)、可能であれば配置転換の検討などを提案しています。職業を変えることは難しくても、働き方を工夫することで進行を遅らせることは十分可能だと考えています。

▼以下では、変形性膝関節症でもできる仕事と働き方の工夫についてもご紹介しています。併せてご参考ください。

変形性膝関節症の進行を遅らせるための対策

変形性膝関節症の進行を遅らせるための対策
変形性膝関節症の進行を遅らせるための対策

膝の痛みは、日常生活に大きな支障をきたす深刻な問題です。特に、変形性膝関節症は加齢とともに進行する病気であるため、早期の対策が重要です。適切な治療と生活習慣の改善によって、進行を遅らせ、痛みを軽減し、快適な生活を送ることは十分可能です。

この章では、変形性膝関節症の進行を遅らせるための具体的な対策を、薬物療法、運動療法、生活習慣の改善、最新の治療法、専門医の選び方という5つの側面から詳しく解説します。

薬物療法:痛み止め、ヒアルロン酸注射の効果と注意点

薬物療法は、炎症や痛みを抑え、症状を緩和するための治療法です。

内服薬としては、痛みや炎症を抑える消炎鎮痛薬(ロキソプロフェンナトリウム、アセトアミノフェンなど)が用いられます。

注射薬としては、ヒアルロン酸注射があります。

ヒアルロン酸は、関節液の主成分であり、関節の動きを滑らかにする役割を担っています。変形性膝関節症では、このヒアルロン酸が減少することで、関節の摩擦が増大し、痛みや炎症が生じます。ヒアルロン酸注射は、減少したヒアルロン酸を補うことで、関節の動きを改善し、痛みを和らげる効果が期待できます。

一般的には、週1回、計5回の注射が行われます。効果には個人差があり、すべての方に効果があるとは限りません。

また、2025年のNguyenらの研究によれば、脂肪由来幹細胞(ADMSC)と間質血管画分(SVF)の関節内注射療法も、疼痛軽減と関節機能改善に有効であることが示唆されています。特に、ADMSC療法は軟骨再生効果が期待できるため、62歳未満の患者さんにおすすめです。

副作用として、内服薬では胃腸障害などが、注射では注射部位の痛みや腫れなどが起こることがあります。副作用が気になる場合は、医師に相談しましょう。

運動療法:ストレッチ、筋力トレーニング、リハビリテーション

運動療法は、膝関節周囲の筋肉を強化し、関節の安定性を高め、痛みを軽減するために非常に重要です。具体的には、ストレッチ、筋力トレーニング、リハビリテーションがあります。

ストレッチは、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)や裏側の筋肉(ハムストリングス)、ふくらはぎの筋肉などを伸ばすことで、関節の柔軟性を高め、痛みを和らげます。
▶変形性膝関節症におすすめのストレッチをご紹介しています

筋力トレーニングは、大腿四頭筋を中心とした膝関節周囲の筋肉を鍛えることで、関節の安定性を高めます。スクワットやレッグプレスなどが効果的ですが、無理のない範囲で行うことが大切です。
▶変形性膝関節症に効果的な筋トレはこちら

リハビリテーションは、理学療法士の指導のもと、個々の症状に合わせた運動療法を行うことで、より効果的に膝関節の機能改善を図ることができます。

生活習慣の改善:体重管理、適度な運動、膝への負担軽減

日常生活における工夫も、変形性膝関節症の進行を遅らせるために重要です。

具体的には、体重管理、適度な運動、膝への負担軽減が挙げられます。

体重管理は、膝関節への負担を軽減するために不可欠です。体重が増加すると、膝関節への負担が増大し、症状が悪化しやすくなります。適正体重を維持するために、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけましょう。

適度な運動は、ウォーキングや水中歩行など、膝への負担が少ない運動を選びましょう。過度な運動は逆効果になる場合があるので、医師や理学療法士に相談しながら行うことが大切です。

膝への負担軽減のためには、正座やしゃがみ込み、重いものを持つなど、膝に負担がかかる動作はなるべく避けましょう。和式トイレの使用も控えることが望ましいです。

▼変形性膝関節症を進行させないための食事、運動、生活について以下でも詳しく解説しています。

また、靴は、クッション性があり、かかとがしっかりしたものを選びましょう。

最新の治療法:再生医療、幹細胞治療、手術療法(人工関節置換術など)

保存療法で十分な効果が得られない場合、最新の治療法「再生医療」や手術療法が検討されます。

再生医療(PFC-FD療法など)は、患者さん自身の血液から採取した血小板由来の成長因子を患部に注射することで、組織の修復を促す治療法です。幹細胞治療は、脂肪組織などから採取した幹細胞を培養し、患部に注射することで、炎症を抑え、組織の再生を促します。

▶変形性膝関節症に対する再生医療を詳しく見る

Maedaらの2025年の研究では、微細化脂肪組織(MFAT)を用いた治療が、特に膝の屈曲角度の改善と軟骨の質の改善に効果的であることが示唆されています。

手術療法としては、人工関節置換術、骨切り術などがあります。人工関節置換術は、傷ついた関節を人工関節に置き換える手術です。

▼高齢者の変形性膝関節症のリスクについて解説しています。

専門医の選び方:適切な医療機関への受診、セカンドオピニオンの重要性

変形性膝関節症の治療は、整形外科を受診しましょう。専門医のいる医療機関を選ぶことが大切です。日本整形外科学会などの専門医がいる医療機関を受診することで、適切な診断と治療を受けることができます。

セカンドオピニオンとは、現在受けている治療について、他の医師の意見を聞くことです。治療方針に迷う場合や、より多くの情報を得たい場合に、セカンドオピニオンを求めることは有益です。

まとめ

変形性膝関節症 進行速度

この記事では、変形性膝関節症の進行段階ごとの症状や、進行を遅らせるための対策について解説しました。

初期は違和感や軽い痛み、中期は慢性的な痛み、後期は激しい痛みと歩行障害、末期は日常生活に支障が出るほどの激痛といった具合に、段階が進むにつれて症状が悪化していきます。

進行を遅らせるには、薬物療法、運動療法、生活習慣の改善、そして最新の治療法など、様々な方法があります。 ご自身の症状に合った適切な治療法を選択するために、まずは整形外科を受診し、専門医に相談してみましょう。 早期発見、早期治療が、快適な生活を送るための鍵となります。 つらい膝の痛み、我慢せずに、まずは専門家に相談してみませんか?

参考文献

  1. Maeda T, Sobajima S, Matsumoto T, Tsubosaka M, Matsushita T, Iwaguro H and Kuroda R. “Comparison of short-term clinical outcomes of intra-articular injection of micro-fragmented adipose tissue and stromal vascular fraction cells for knee osteoarthritis treatment: A retrospective single-center cohort study.” Regenerative therapy 29, no. (2025): 91-99.
  2. Nguyen TA, Hogden A, Khanna A and Kuah D. “Efficacy of adipose-derived stem cells and stromal vascular fraction for pain relief in Kellgren-Lawrence grade II-III knee osteoarthritis: A systematic review (2019-2024).” Journal of orthopaedics 70, no. (2025): 95-106.
  3. Liu Z, Song S, Zhang Q and Wang D. “Research progress on treatment measures for joint function in non-surgical patients with knee osteoarthritis.” Journal of orthopaedics 64, no. (2025): 64-67.
  4. Za P, Papalia GF, Cardile U, Gregori P, Vasta S, Franceschetti E, Campi S and Papalia R. “Cementless unicompartmental knee arthroplasty is safe and effective at a minimum follow-up of 4.2 years: A systematic review.” Journal of experimental orthopaedics 12, no. 2 (2025): e70253.
  5. Lawford BJ, Bennell KL, Spiers L, Kimp AJ, Dell’Isola A, Harmer AR, Van der Esch M, Hall M and Hinman RS. “Relationship Between Number of Different Lower-Limb Resistance Exercises Prescribed in a Program and Exercise Outcomes in People With Knee Osteoarthritis: A Systematic Review With Meta-Regression.” Arthritis care & research 77, no. 5 (2025): 594-603.
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