膝の痛み、特に立ち上がりや歩行時の痛みは、日常生活に大きな支障をきたす悩ましい症状です。
実は、その痛み、変形性膝関節症や半月板損傷が原因かもしれません。
世界中で約6億5400万人が変形性膝関節症に罹患しているという推計もあり、決して他人事ではありません。また、成人の約12%が半月板損傷の影響を受けているという報告もあります。
これらの疾患は、原因も症状も治療法も異なるため、正しい理解が重要です。
この記事では、変形性膝関節症と半月板損傷の違いを3つのポイントに絞って解説し、それぞれの治療法についても詳しくご紹介します。
膝の痛みを我慢せず、快適な生活を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。
目次
変形性膝関節症と半月板損傷の違いを理解する3つのポイント

膝の痛みは、日常生活に大きな支障をきたす悩ましい症状です。特に、立ち上がるときや歩いているときに痛むと、不安になりますよね。
膝の痛みの中でも特に多い原因として、「変形性膝関節症」と「半月板損傷」が挙げられます。
「名前は聞いたことがあるけれど、何がどう違うの?」そう思われている方も多いのではないでしょうか。
実は、この2つの病気は原因も症状も異なり、それぞれに適した治療法も違います。
この記事では、変形性膝関節症と半月板損傷の違いを3つのポイントに絞って、わかりやすく解説します。
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症は、膝関節のクッションの役割を果たす軟骨が、加齢や長年の使用によって徐々にすり減ってしまう病気です。
軟骨がすり減ると、骨と骨が直接ぶつかり合うようになり、炎症や痛みが生じます。
これは、まるで自転車のチェーンに油が切れてキーキーと音が鳴る状態に似ています。
初期段階では、立ち上がりや歩き始めに軽い痛みを感じることが多く、進行すると安静時にも痛み、膝の曲げ伸ばしが困難になります。
さらに症状が進むと、膝の変形によってO脚やX脚になることもあります。
変形性膝関節症は、世界中で約6億5400万人が罹患していると推定されており、決して他人事ではありません。
特に45歳以上の方で、活動に伴う膝関節痛があり、朝のこわばりが30分未満の場合は、変形性膝関節症の可能性が高いと考えられます。
半月板損傷とは?
半月板は、膝関節の中にあるC型の軟骨で、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間でクッションの役割を果たしています。
半月板損傷は、スポーツや転倒などによって、この半月板が裂けたり、損傷したりする状態です。
若い人に多いスポーツ外傷による急性損傷と、加齢などが原因で起こる慢性損傷があります。
半月板が損傷すると、膝の痛みや腫れ、引っ掛かり感などが生じます。
さらに、膝の曲げ伸ばしがしづらくなったり、場合によっては膝が動かなくなってしまう「ロッキング」という症状が現れることもあります。
McMurrayテストという特殊な検査法や、関節線の圧痛を確認することで、半月板損傷の診断に役立ちます。成人の約12%が半月板損傷の影響を受けているという報告もあります。
変形性膝関節症と半月板損傷の症状の違い
変形性膝関節症と半月板損傷は、どちらも膝の痛みを引き起こしますが、症状には違いがあります。
変形性膝関節症の痛みは、初期段階では立ち上がりや歩き始めなど、動作を開始する時に強く現れる傾向があります。
進行すると、安静時にも痛みが続くようになり、正座や階段の上り下りなどが困難になります。
一方、半月板損傷の痛みは、損傷の程度によってさまざまです。
軽度の損傷であれば、痛みや腫れだけのこともありますが、重度の損傷になると、膝の曲げ伸ばしができなくなったり、強い痛みで歩行が困難になることもあります。
また、半月板損傷では、膝に引っ掛かり感や、膝が動かなくなる「ロッキング」といった特徴的な症状が現れることもあります。

膝の引っかかり感とロッキングで見分ける
半月板損傷に特徴的な症状として「膝のロッキング」があります。これは膝が突然引っかかったように動かなくなる現象で、損傷した半月板の一部が関節内で挟まることで起こります。このロッキング現象は半月板損傷ではよく見られますが、変形性膝関節症単独ではほとんど起こりません。
40代の男性患者さんは「膝が突然ロックして動かなくなり、グキッという音とともに動くようになる」と訴えて来院し、MRIで半月板損傷が確認されました。
一方、変形性膝関節症では「引っかかり感」ではなく「こわばり」が特徴的で、徐々に出現し徐々に改善するという違いがあります。
私はいつも患者さんに「膝が完全にロックして動かなくなることがありますか?」と尋ね、この症状の有無が診断の重要な手がかりになると考えています。
変形性膝関節症と半月板損傷の原因の違い
変形性膝関節症の主な原因は、加齢による軟骨のすり減りです。
その他にも、肥満、姿勢の悪さ、運動不足、遺伝などが原因となることもあります。
一方、半月板損傷の主な原因は、スポーツや転倒などによる急激な衝撃です。
特に、バスケットボールやサッカー、スキーなどのスポーツで、膝を強くひねったり、急に方向転換したりする際に起こりやすいです。
また、加齢によって半月板が弱くなると、わずかな衝撃でも損傷しやすくなります。
変形性膝関節症と半月板損傷の好発年齢の違い
変形性膝関節症は、加齢とともに発症リスクが高まるため、中高年の方に多く見られます。
特に50歳以上になると発症率が急激に増加します。
一方、半月板損傷は、年齢層が幅広く、どの年代でも起こり得ます。
若い世代では、スポーツ中のケガによる急性損傷が多く、中高年以降では、加齢による変性や軽微な外傷の積み重ねによって起こる慢性損傷が多くなります。
変形性膝関節症と半月板損傷の治療法4選

膝の痛みは、日常生活に大きな影を落とします。好きな散歩や旅行、買い物など、やりたいことを諦めざるを得ない状況は、非常につらいものです。
この記事では、加齢とともに増加する膝のトラブルである「変形性膝関節症」と「半月板損傷」の治療法について、保存療法、手術療法、リハビリテーション、そして治療期間と費用について、高齢者の皆様にもわかりやすく解説します。
適切な治療法を選択することで、痛みを軽減し、活動的な毎日を取り戻すためのお手伝いができれば幸いです。
保存療法:運動療法、薬物療法、注射療法
保存療法とは、手術をせずに膝の痛みや炎症を抑え、関節の機能を改善する治療法です。
具体的には、運動療法、薬物療法、注射療法など、患者さんの状態に合わせた様々な方法があります。
運動療法は、膝への負担が少ないウォーキングや水中歩行などを行い、筋力を強化し関節の柔軟性を高める治療法です。
例えば、水中歩行は浮力によって膝への負担が軽減されるため、陸上での運動が難しい方でも比較的楽に行うことができます。
理学療法士の指導のもと、無理のない範囲で適切な運動プログラムを作成し、継続して実施していくことが重要です。
薬物療法は、痛みや炎症を抑えるための内服薬や湿布薬を使用します。
痛み止めや炎症を抑える薬など、様々な種類があり、医師の指示に従って正しく服用することが大切です。
副作用についても医師や薬剤師に相談し、安心して治療を受けられるようにしましょう。
注射療法は、ヒアルロン酸などを関節内に注射し、痛みを軽減したり関節の動きを滑らかにしたりする治療法です。
変形性膝関節症では、関節内のヒアルロン酸が減少しているため、注射によってヒアルロン酸を補うことで症状の改善を図ります。
これは、自転車のチェーンに油を差すように、関節の動きをスムーズにするイメージです。
注射療法は、比較的短時間で効果が期待できるため、痛みが強い場合などに有効です。
手術療法:関節鏡手術、人工関節置換術
保存療法で効果が得られない場合や、症状が重い場合は、手術療法が検討されます。
代表的な手術療法として、関節鏡手術と人工関節置換術があります。
関節鏡手術は、内視鏡を用いて関節内を観察しながら、損傷した半月板を縫合したり切除したりする手術です。
小さな傷で行えるため、患者さんの身体への負担が少ないというメリットがあります。
半月板損傷や変形性膝関節症の初期段階に適応されることが多いです。
人工関節置換術は、損傷が激しい関節を人工関節に置き換える手術です。
変形性膝関節症の末期などで、日常生活に支障が出るほどの痛みがある場合に検討されます。
手術後はリハビリテーションが重要です。
人工関節は耐久性に優れており、長期間にわたって膝の機能を維持することができます。
リハビリテーション:理学療法、作業療法
手術後だけでなく、保存療法においてもリハビリテーションは非常に重要です。
理学療法士や作業療法士の指導のもと、筋力トレーニングやストレッチ、日常生活動作の練習などを行います。
リハビリテーションによって、膝関節の機能回復を促進し、再発予防にもつながります。
理学療法は、膝関節周囲の筋肉を強化し、関節の柔軟性を高めるための運動療法が中心です。
痛みの軽減や可動域の改善を目指します。
作業療法は、日常生活動作の練習を通して、痛みなく日常生活を送れるようにサポートします。
着替えやトイレ、入浴などの動作をスムーズに行えるように練習していきます。
治療期間と費用について
治療期間や費用は、症状の重症度や治療法によって大きく異なります。
保存療法であれば数週間から数ヶ月、手術療法であれば数ヶ月から1年程度かかる場合もあります。
費用についても、健康保険の適用範囲や手術の種類によって変動します。
変形性膝関節症は、45歳以上の方で、活動に伴う膝関節痛があり、朝のこわばりが30分未満の場合、最も可能性の高い診断となります。世界中で約6億5400万人が罹患していると推定されています。
半月板損傷は成人の約12%に影響を及ぼし、40歳未満では急性外傷後に、40歳以上では変性疾患として発生する可能性があります。
具体的な治療期間や費用については、医療機関に相談してみましょう。
▼変形性膝関節症の手術費用や保険の適用について、以下でも詳しく解説しています。
まとめ

この記事では、変形性膝関節症と半月板損傷の違いや関係性、治療法について解説しました。
どちらも膝の痛みを引き起こしますが、原因や症状、好発年齢、治療法が異なります。
変形性膝関節症は加齢による軟骨のすり減りが主な原因で、中年以降に多く発症します。
一方、半月板損傷はスポーツや転倒などによる外傷が原因で、幅広い年齢層で起こり得ます。
治療法は、保存療法(運動療法、薬物療法、注射療法)と手術療法(関節鏡手術、人工関節置換術)があり、症状や状態に合わせて選択されます。リハビリテーションも重要です。
膝の痛みでお困りの方は、この記事を参考に、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けてくださいね。早期発見、早期治療が大切です。
参考文献
- Ozeki N, Seil R, Krych AJ, Koga H. Surgical treatment of complex meniscus tear and disease: state of the art. Journal of ISAKOS: joint disorders & orthopaedic sports medicine 6, no. 1 (2021): 35-45.
- Duong V, Oo WM, Ding C, Culvenor AG, Hunter DJ. Evaluation and Treatment of Knee Pain: A Review. JAMA 330, no. 16 (2023): 1568-1580.

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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