変形性膝関節症によって日常生活に不自由を感じている場合、介護保険サービスを利用できることをご存知でしょうか?
介護保険サービスを受けるには、要介護認定または要支援認定を受ける必要があります。
この記事では、変形性膝関節症における要介護・要支援認定の基準や違い、申請方法、そして様々な介護サービスの内容を詳しく解説します。
加齢とともに進行する変形性膝関節症、将来への不安を抱えている方も多いと思いますが、介護保険を正しく理解し活用することで、日常生活の負担を軽減し、より快適な生活を送るための助けとすることができます。
目次
変形性膝関節症における要介護・要支援認定の基礎知識

膝の痛み、つらいですよね。曲げ伸ばしがつらいと、歩くのも、立ち上がるのも一苦労です。家事をするのも、動くのも億劫になってしまいますよね。
変形性膝関節症で日常生活に不自由を感じている方は、介護保険サービスの利用を検討してみましょう。
介護保険サービスを受けるには、要介護認定または要支援認定を受ける必要があります。
ここでは、、要介護・要支援のそれぞれの違いと特定疾病について、また介護保険の概要と申請方法や審査の流れについても網羅的に説明していきます。あとで見返せるように【保存】してくださいね。
要介護・要支援認定の基準と違い
要介護認定・要支援認定を受けるには、日常生活動作にどの程度支障があるかを審査されます。
「立つ」「歩く」「着替える」「入浴する」といった基本的な動作のほか、「買い物」「家事」「外出」など、日常生活を送るうえで必要な動作をどの程度自力で行えるか、といった基準を元に審査されます。
具体的には、次のような項目が評価されます。
- 移動動作: ベッドから起き上がる、椅子に座る、屋内を歩く、階段を昇り降りするなど
- 身辺自立: 食事、衣服の着脱、トイレの使用、入浴など
- 家事: 料理、掃除、洗濯、買い物など
- 知的機能: 認知症の有無、意思疎通が可能かどうかなど
- コミュニケーション: 他者との意思疎通、社会参加の状況など
これらの項目を総合的に評価し、要支援1~2、要介護1~5の7段階に区分されます。
| 認定区分 | 日常生活動作の自立度 | サービス内容の例 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 軽度 | 介護予防教室、運動器の機能向上訓練など |
| 要支援2 | 軽度から中等度の間 | 介護予防訪問介護、介護予防通所介護など |
| 要介護1 | 中等度 | 訪問介護、通所介護、福祉用具の貸与など |
| 要介護2 | 中等度からやや重度の間 | 訪問介護、通所介護、短期入所生活介護など |
| 要介護3 | やや重度 | 訪問介護、通所介護、通所リハビリテーションなど |
| 要介護4 | 重度 | 訪問介護、通所介護、特別養護老人ホームへの入所など |
| 要介護5 | 最重度 | 訪問介護、通所介護、特別養護老人ホームへの入所など |
要支援1と2は、日常生活に軽い支障がある方向けの認定で、介護予防サービスが利用できます。
要介護1~5は、日常生活動作に支障が出ている方向けで、訪問介護やデイサービス、施設入所など、幅広い介護サービスを受けることができます。
特定疾病と変形性膝関節症の関係
介護保険は、原則として65歳以上の方を対象としていますが、40歳以上65歳未満の方でも、特定疾病に該当すれば利用できます。
「特定疾病」とは、国が定めた16の病気のことです。これらの病気は、高齢者に多く見られるものの、40歳以上65歳未満でも発症する可能性があり、長期にわたって介護が必要となる可能性が高いとされています。
変形性膝関節症も特定疾病の1つです。ただし、すべての変形性膝関節症の方が特定疾病に該当するわけではなく、「両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症」の場合に限られます。
これは、日常生活に大きな支障が出ている状態を指します。具体的には、歩行が困難で杖や歩行器が必要な場合や、階段の昇り降りが困難な場合などが該当します。
介護保険制度の概要とサービス内容
介護保険制度とは、高齢者が介護が必要になった場合に、費用の一部を負担することで様々なサービスを受けられる社会保険制度です。
自宅で介護を受けたい、施設で介護を受けたいなど、状況や希望に応じたサービスを選ぶことができます。
介護保険サービスは、大きく分けて「在宅サービス」と「施設サービス」の2種類があります。
在宅サービスとは、自宅で生活しながら必要なサービスを受けられるもので、訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション、短期入所生活介護(ショートステイ)などがあります。
施設サービスとは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設などに入所して介護を受けるものです。
介護保険の申請方法と認定審査の流れ
①介護保険サービスを利用するには、まず市区町村の窓口に申請します。
申請に必要な書類は、市区町村の窓口やホームページで確認できます。
②申請後、調査員が自宅を訪問し、心身の状態や日常生活の状況などを確認します。
調査員は、日常生活動作の自立度や認知機能などを評価し、要介護度や要支援度を判定するための情報を収集します。この調査には、家族の同席も可能です。調査結果と主治医の意見書などを基に、コンピューターによる一次判定を行います。
③その後、介護認定審査会による二次判定を経て、要介護度または要支援度が決定されます。決定後、認定結果と被保険者証が郵送されます。
申請から認定までは、通常約30日かかります。

痛みの言語化サポート
膝の痛みをうまく言葉で表現できない患者さんが多く、そのために介護ニーズが適切に伝わらないケースがよくあります。特に高齢者は痛みを我慢することが美徳だと考える方も多いのです。
私は「痛みスケール」だけでなく、「どんな動作が困難か」「何メートル歩くと休憩が必要か」など、具体的な質問を通じて痛みの影響を言語化できるよう支援しています。ご家族の同席が可能な調査では、普段そばで見ているご家族の方が言語化をサポートしてあげてみてください。
患者さんからは「こんな風に説明したら、初めて周りに理解してもらえました」という声をよく聞きます。
変形性膝関節症と介護保険の活用

膝の痛み、つらいですよね。特に変形性膝関節症は、加齢とともに進行していくことが多く、将来への不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、変形性膝関節症の方が介護保険をどのように活用できるのか、分かりやすく解説します。
介護保険は、正しく利用することで、日常生活の負担を軽減し、より快適な生活を送るための助けとなります。
変形性膝関節症の進行度と日常生活への影響
変形性膝関節症は、初期から末期まで段階的に進行します。初期は、立ち上がったり、階段を上り下りしたりする時に痛みを感じることがありますが、日常生活にはそれほど支障がない場合が多いです。
しかし、病気が進行すると、正座やしゃがみ込みが難しくなり、歩行時の痛みが増し、長い時間立っていることが困難になります。末期になると、安静時にも痛みを感じるようになり、日常生活に大きな支障をきたします。
変形性膝関節症の進行と日常生活への影響を、私が診察した患者さんの例を交えてご説明します。
- Aさん(60代女性):初期の変形性膝関節症。階段の昇り降りで痛みを感じますが、買い物や家事は問題なく行えています。
- Bさん(70代男性):中期の変形性膝関節症。趣味のゴルフを諦め、日常生活でも長い時間立っていることが辛いため、バスや電車での移動も困難になってきました。
- Cさん(80代女性):末期の変形性膝関節症。常に膝に痛みがあり、歩行が困難なため、買い物や家事はほとんどできず、自宅での生活にも介助が必要な状態です。
このように、変形性膝関節症が進行すると、日常生活の活動範囲が狭まり、QOL(生活の質)が低下してしまいます。
介護保険サービスの選び方と利用方法
先ほどお伝えした介護保険サービスについて、以下でもうすこし詳しくご紹介していきます。
自宅でサービスを受ける「在宅サービス」と、施設でサービスを受ける「施設サービス」に大きく分けられます。
在宅サービスには、訪問介護(ホームヘルプ)、訪問看護、訪問リハビリテーション、デイサービス、デイケアなどがあります。例えば、ホームヘルプサービスでは、入浴や食事、排泄の介助など、日常生活の様々な場面でサポートを受けることができます。
施設サービスには、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設などがあります。これらの施設では、食事、入浴、排泄などの介助はもちろんのこと、リハビリテーションや医療ケアも受けることができます。
在宅介護に関する研究論文では、高齢者の自立支援、社会参加の促進、介護負担の軽減など、様々な効果が報告されています。
費用負担と軽減策
介護保険サービスを利用する場合、費用の一部(1割または2割、3割)を自己負担することになります。費用の割合は、所得に応じて決定されます。
介護保険サービスを利用することで、経済的な負担が増えるのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、介護保険制度には、高額介護サービス費や食費・居住費の負担軽減制度など、様々な軽減策が用意されています。これらの制度をうまく活用することで、経済的な負担を軽減することが可能です。
費用の詳細や軽減策については、お住まいの自治体やケアマネージャーに相談することをお勧めします。
長期介護の資金調達に関する研究論文では、介護保険制度の財源確保や、費用負担の公平性など、様々な課題が議論されています。
介護サービス事業者・病院の探し方
介護サービス事業者や病院を探すには、お住まいの自治体の窓口に相談する方法、インターネットで検索する方法、ケアマネージャーに相談する方法などがあります。
自治体の窓口や介護サービス情報サイトでは、地域やサービス内容で絞り込んで検索することができます。
ケアマネージャーは、介護サービスの専門家であり、利用者の状態や希望に合った適切な事業者や病院を紹介してくれます。
変形性膝関節症の治療と予防
変形性膝関節症の治療には、薬物療法、リハビリテーション、手術などがあります。痛みを軽減するための薬物療法や、膝関節の機能を維持・改善するためのリハビリテーションは、症状の進行を遅らせるためにも重要です。
また、日常生活における予防も大切です。適度な運動、バランスの取れた食事、適切な体重管理は、変形性膝関節症の予防に効果的です。特に、ウォーキングや水中運動などの膝への負担が少ない運動は、筋力強化や関節の柔軟性を維持するのに役立ちます。
まとめ

変形性膝関節症と介護保険について解説しました。変形性膝関節症は進行すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があり、介護保険サービスの利用を検討する必要があります。
要介護・要支援認定を受けることで、訪問介護やデイサービスといったサービスを受けられるようになり、日常生活の負担軽減に繋がります。費用負担が心配な方も、負担軽減制度などを活用することで、安心してサービスを利用できます。
変形性膝関節症の治療や予防と合わせて、介護保険制度も活用し、快適な生活を送れるようにしましょう。お困りの際は、お住まいの自治体や専門家へご相談ください。
参考文献
- González Block MÁ, Reyes Morales H, Hurtado LC, Balandrán A, Méndez E. “Mexico: Health System Review.” Health systems in transition 22, no. 2 (2020): 1-222.
- Levine SA, Boal J, Boling PA. “Home care.” JAMA 290, no. 9 (2003): 1203-7.
- Seiler LW, Thomson Reuters Accelus. “Long-Term Care: Funding of Long-Term Care.” Issue brief (Health Policy Tracking Service) 2018, no. (2018): 1-100.

-情報提供医師
松本 和樹 Kazuki Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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