膝の痛み、特に座ったり立ったりする時の痛みにお悩みではありませんか?
実は、何気ない日常動作が変形性膝関節症の痛みを悪化させているかもしれません。加齢や肥満などが原因で発症する変形性膝関節症は、軟骨のすり減りによって骨同士がぶつかり、激しい痛みを引き起こします。
この記事では、変形性膝関節症の痛みを軽減する正しい座り方・立ち上がり方のコツ、治療法について、医師監修のもと詳しく解説します。
椅子に深く腰掛ける、膝の角度を90度以上に保つ、足の裏全体を床につけるなど、今日から実践できる簡単な方法ばかりです。これらのポイントを押さえることで、膝への負担を軽減し、快適な日常生活を送る第一歩を踏み出しましょう。
座り方や立ち上がり方を変えることで、痛みの軽減に繋がる可能性があります。研究結果を踏まえ、具体的な方法をわかりやすく解説しているので、ぜひご自身と比較しながら読み進めてみてください。
目次
変形性膝関節症に良い座り方4つのポイント

膝の痛みは、日常生活のさまざまな場面で私たちを悩ませます。特に、座ったり立ったりする動作は、膝への負担が大きいため、痛みを感じやすい方が多いのではないでしょうか。
変形性膝関節症になると、膝の軟骨がすり減り、炎症を起こすことで痛みが生じます。軟骨はクッションの役割を果たしているため、これがすり減ると骨同士がぶつかり、激しい痛みを生じます。
この記事では、変形性膝関節症の痛みを軽減するための正しい座り方について解説します。
4つのポイントを意識することで、膝への負担を減らし、快適な日常生活を送るための一助となれば幸いです。
椅子に深く腰掛け、背もたれを使う
椅子に座るときは、浅く腰掛けるのではなく、深く腰掛けるようにしましょう。
深く腰掛けることで、背もたれを有効に活用できます。背もたれを使うことで、腰への負担を軽減し、正しい姿勢を保ちやすくなります。腰がしっかりと支えられていないと、身体が前のめりになりやすく、膝にも負担がかかってしまいます。
椅子に深く腰掛け、背もたれに背中をしっかりつけることで、体重を分散させ、膝への負担を軽減することができます。
また、座面が低すぎる椅子を使用すると、膝を曲げる角度が大きくなり、膝への負担が増加してしまいます。座ったときに、太ももとふくらはぎが90度になるような高さの椅子を選ぶと良いでしょう。
さらに、最近の研究では、座り続ける時間が長いほど、健康への悪影響が大きいことが示唆されています。たとえば、インドのオフィスワーカーを対象とした研究では、スマートフォンアプリと歩数計を組み合わせた介入によって、座っている時間が有意に減少したという結果が報告されています。このことから、こまめに立ち上がって歩いたり、ストレッチをしたりするなど、座り続ける時間を減らす工夫も大切です。
足の裏全体が床につくかどうかも確認しましょう。もし足がつかない場合は、踏み台などを利用して調整しましょう。
膝の角度は90度以上に保つ
膝の角度は、変形性膝関節症の痛みと大きく関係しています。膝を曲げすぎたり、伸ばしすぎたりすると、膝関節に負担がかかり、痛みが増強する可能性があります。
膝を深く曲げると、膝関節への負担が増加し、痛みが増す可能性があります。90度より深く曲げると、体重の3~6倍もの負荷が膝にかかると言われています。理想的な膝の角度は、90度以上を保つことです。股関節と膝関節がそれぞれ直角になるような座り方が理想的です。
椅子に座るときは、膝の角度が90度以上になるように意識しましょう。深く腰掛け、背もたれを使うことと合わせて、膝の角度にも注意することで、より効果的に膝への負担を軽減することができます。
足の裏全体を床につける
足の裏全体を床につけることも、変形性膝関節症の痛みを軽減するために重要なポイントです。
足の裏が床についていないと、身体が不安定になり、膝にも余計な負担がかかってしまいます。椅子に座るときは、足の裏全体が床につくように意識しましょう。もし足がつかない場合は、椅子の高さを調整するか、踏み台などを利用しましょう。
足の裏全体が床につくことで、安定した姿勢を保つことができ、膝への負担を軽減することができます。
椅子を選ぶ際には、座面の高さに注意し、自分の身長に合った椅子を選ぶようにしましょう。
▶【医師監修】変形性膝関節症の痛みを軽減する最適な椅子の選び方をご紹介しています。
高齢者の場合、筋力の低下により、足の裏全体が床についていないと、身体を支えることが難しくなり、転倒のリスクも高まります。
クッションやタオルを使って膝の高さを調整する
クッションやタオルを使って膝の高さを調整することも、膝への負担を軽減する効果的な方法です。
特に、お尻の位置を高くすることで、骨盤が立ちやすくなり、姿勢が改善されます。姿勢が良くなると、膝への負担も軽減されるため、痛みを和らげることができます。
例えば、おしりの後ろに丸めたハンドタオルやバスタオルを挟むと、骨盤が後ろに倒れにくくなり、正しい姿勢を保ちやすくなります。
クッションを使う場合は、柔らかすぎず、適度な硬さのあるものを選ぶと良いでしょう。また、クッションの高さを調整することで、膝の角度を90度以上に保ちやすくなります。適切な高さのクッションを使用することで、膝への負担を軽減し、痛みの悪化を防ぐことができます。
変形性膝関節症の痛みを悪化させる座り方と立ち上がり方

膝の痛みは、日常生活の動作ひとつひとつに影響を与え、気持ちまで沈ませてしまうことがあります。特に、何気なく行っている座り方や立ち上がり方が、変形性膝関節症の痛みを悪化させているかもしれません。
ここでは、膝への負担が大きくなってしまう座り方と立ち上がり方について、詳しく解説します。
より楽な生活を送るためにも、ぜひ一緒に見直してみましょう。
床に座る、正座をする
床に座ったり正座をすることは、日本の伝統的な生活様式として馴染み深いものですが、変形性膝関節症の方にとっては、膝への負担が非常に大きくなってしまう姿勢です。正座では、膝関節が深く曲がった状態になり、体重が膝に集中します。この姿勢は、炎症を起こしている関節軟骨や、関節にかかる衝撃を吸収する半月板への圧迫を強めます。
▶膝が痛くて正座ができないのはなぜ?原因と痛みを和らげる方法について併せてお読みください。
高齢者の場合、筋力が低下しているため、床から立ち上がる際に膝に大きな負担がかかります。無理に立ち上がろうとすると、膝の痛みを悪化させるだけでなく、転倒のリスクも高まります。
あぐらをかく
あぐらは、一見すると左右対称の楽な姿勢に見えますが、実は変形性膝関節症にとっては注意が必要な姿勢です。足を組むことで、骨盤に歪みが生じ、左右の膝への負担が均等ではなくなってしまいます。
長時間のあぐらは、股関節周囲の筋肉の緊張を高め、血行不良を引き起こす可能性があります。血行不良は、膝関節への栄養供給を阻害し、変形性膝関節症の進行を早める可能性も懸念されます。
横座りをする
横座りは、左右非対称の姿勢となるため、身体のバランスが崩れやすく、膝への負担が偏ってしまいます。特に、骨盤の片側が持ち上がった状態になるため、腰にも負担がかかり、膝の痛みだけでなく腰痛を引き起こす原因にもなりかねません。
横座りは、股関節の柔軟性を低下させることにも繋がります。股関節の柔軟性が低下すると、歩行時のバランスが悪くなり、膝関節への負担が増加し、変形性膝関節症の悪化を招く可能性があります。
椅子から勢いよく立ち上がる
椅子から立ち上がる動作は、日常生活で頻繁に行う動作ですが、膝の痛みがある方にとっては大きな負担となることがあります。勢いよく立ち上がろうとすると、膝関節に瞬間的に大きな力が加わり、炎症や痛みを悪化させてしまう可能性があります。
立ち上がり動作は、膝関節だけでなく、周囲の筋肉や靭帯にも負担がかかります。勢いよく立ち上がることで、これらの組織に損傷を与える可能性も懸念されます。ゆっくりと立ち上がることで、膝への負担を軽減し、痛みを悪化させるリスクを減らすことができます。

立ち上がり方のコツ
変形性膝関節症の患者さんにとって、座った状態からの立ち上がり方は非常に重要です。多くの方が両膝に均等に体重をかけて立ち上がろうとしますが、これが痛みを増す原因になることがあります。
私は「足を少し後ろに引き、身体を前傾させてから、両手で椅子の肘掛けを押して立ち上がる」方法を指導しています。「立ち上がり方を変えるだけで、痛みがほぼなくなりました」という患者さんの声は少なくなく、正しい動作の重要性を示しています。
浅く腰掛ける
椅子に浅く腰掛けると、身体を支えるために太ももの筋肉に負担がかかり、結果的に膝関節にも負担が集中してしまいます。また、浅く腰掛けることで姿勢が悪くなりやすく、猫背気味になったり、骨盤が後傾したりすることで、腰痛や膝の痛みが悪化しやすくなります。
椅子に深く腰掛け、背もたれを使うことで、腰や膝への負担を軽減し、より安定した姿勢を保つことができます。
変形性膝関節症患者に対する治療法
高齢者の変形性膝関節症患者に対する非外科的治療として、再生医療による脂肪由来間葉系幹細胞(ADMSC)と間質血管画分(SVF)の関節内注射療法が注目されています。これらの治療法は、痛みを軽減し関節機能を改善する効果が期待されています。特にADMSC療法は、軟骨の再生を促進する可能性も示唆されており、長期的な視点で膝関節の健康維持に貢献する可能性があります。
▶変形性膝関節症の最新治療!再生医療の種類と特徴について解説しています。
また、高脛骨骨切り術(HTO)は、膝の変形を矯正することで痛みを軽減し、関節機能を改善する効果的な手術法です。HTO後には、内側半月板突出(MME)値が減少するなど、膝関節の状態が改善することが報告されています。
▶変形性膝関節症治療の選択肢:骨切り術のメリットとリスクについて併せてお読みください。
さらに、非変性II型コラーゲン(UC-II)などのサプリメントも、変形性膝関節症の予防・改善に役立つ可能性があります。
まとめ

変形性膝関節症の痛みを軽減するには、正しい座り方・立ち上がり方が重要です。
椅子に深く腰掛け背もたれを使い、膝の角度は90度以上に保ち、足の裏全体を床につけましょう。クッションなどで膝の高さを調整するのも効果的です。
逆に、床や正座、あぐら、横座りは膝への負担が大きくなります。また、椅子からの立ち上がりは勢いよく行わず、ゆっくりと行いましょう。浅く腰掛けるのも避けましょう。
これらのポイントを意識して、膝への負担を軽減し、快適な日常生活を送るように心がけましょう。
参考文献
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-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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