変形性膝関節症は、加齢とともに誰しもが発症する可能性のある身近な病気です。
だからこそ、手術以外の方法で治したいと考えるのは当然のことです。
この記事では、手術をせずに変形性膝関節症の痛みを和らげ、膝の動きを良くする3つの治療法と、近年注目されている再生医療について詳しく解説します。
快適な日常生活を取り戻すため、ご自身の状況と比較しながら、最適な治療法を見つけるための一助としてください。
目次
変形性膝関節症を手術しないで治す3つの方法

膝の痛みの悩み。手術はできれば避けたい…そう思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
変形性膝関節症は、加齢とともに膝関節の軟骨がすり減り、炎症を起こすことで痛みが生じる病気です。
高齢者に多くみられますが、最近では若い方でも発症するケースが増えています。
軟骨は、骨と骨との間のクッションの役割を果たしており、これがすり減ると骨同士が直接ぶつかり合うようになり、激しい痛みを引き起こします。
初期は立ち上がりや歩き始めなどに痛みを感じることが多いですが、進行すると安静時にも痛みが続くようになります。さらに悪化すると、膝関節の変形が目に見えるようになり、正座や階段の昇降が困難になることもあります。
変形性膝関節症は多因子疾患で、様々な原因が重なって発症すると考えられています。
加齢、肥満、遺伝、過度な運動、膝の怪我などがリスク因子として挙げられます。
今回は、手術以外の方法で変形性膝関節症の痛みを和らげ、膝の動きを良くする3つの治療法についてご説明します。
これらの治療法は、変形性膝関節症の進行を抑え、快適な日常生活を取り戻すためのお手伝いをしてくれます。
薬物療法:痛みや炎症を抑える薬
薬物療法は、変形性膝関節症の痛みや炎症を抑えるための基本的な治療法です。
内服薬と外用薬があり、症状に合わせて使い分けられます。
内服薬には、痛みや炎症を抑える消炎鎮痛剤や、軟骨の成分であるグルコサミンやコンドロイチン硫酸などが含まれる薬があります。
消炎鎮痛剤は、炎症の原因物質であるプロスタグランジンの産生を抑えることで、痛みや炎症を軽減します。グルコサミンとコンドロイチン硫酸は、軟骨の構成成分であり、これらの成分を補給することで軟骨の修復を促すと考えられています。しかし、その効果についてはまだ議論の余地があります。
外用薬には、塗り薬や湿布薬などがあります。これらの薬は、炎症を起こしている部分に直接作用するため、効果的に痛みや炎症を抑えることができます。また、胃腸への負担が少ないというメリットもあります。
| 薬の種類 | 効果 | 主な副作用 |
|---|---|---|
| 消炎鎮痛剤 | 痛みや炎症を抑える | 胃痛、吐き気など |
| グルコサミン・コンドロイチン硫酸 | 軟骨の保護・修復を助ける | 胃腸症状など |
| 塗り薬・湿布薬 | 痛みや炎症を抑える | 皮膚のかゆみ、発疹など |
副作用については、個人差があります。
医師や薬剤師に相談しながら適切な薬を選ぶことが大切です。
高齢の方や持病のある方は、特に注意が必要です。
ヒアルロン酸注射:関節の動きを滑らかにする
ヒアルロン酸は、私たちの体の中にもともと存在する成分で、関節液の主成分でもあります。関節液は、関節の動きを滑らかにし、クッションの役割を果たしています。
変形性膝関節症では、このヒアルロン酸が減少してしまうため、関節の動きが悪くなり、痛みが生じます。例えると、自転車のチェーンに油が切れて動きが悪くなるような状態です。
そこで関節内に直接ヒアルロン酸を注入することで、関節液の粘性を高め、関節の動きを滑らかにする治療法です。
1週間に1回、計3~5回注射するのが一般的です。注射の効果は数ヶ月程度と一時的なものですが、痛みを和らげ、膝の動きを改善する効果が期待できます。
ヒアルロン酸は元々体内に存在する物質であるため、アレルギー反応などの副作用は比較的少ないとされています。しかし、注射部位の痛みや腫れが生じる可能性はあります。
理学療法・運動療法:筋力強化と柔軟性向上
理学療法・運動療法は、変形性膝関節症の治療において非常に重要な役割を果たします。
膝関節を支える筋肉、特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛え、関節の柔軟性を高めることで、膝への負担を軽減し、痛みを和らげることができます。
理学療法では、専門の理学療法士が、患者さんの状態に合わせて適切な運動プログラムを作成し、指導を行います。
運動療法では、自宅でできる簡単なストレッチや筋力トレーニングなどを行います。これらの運動は、決して激しいものではなく、患者さんの状態に合わせて無理なく行えるものです。例えば、椅子に座ったまま行える太ももの上げ下げ運動や、仰向けに寝て行う膝の曲げ伸ばし運動などがあります。
これらの運動を継続的に行うことで、膝の機能を維持・改善し、日常生活動作を楽に行えるようになることが期待できます。理学療法・運動療法は、他の治療法と組み合わせて行うことで、より効果的になります。

小さな目標設定でモチベーション維持!
どんな治療法も、続けなければ効果は出ません。私は患者さんに「小さな目標」を設定してもらっています。例えば「痛み0を目指す」のではなく、「近所のコンビニまで行けるようになる」など、具体的で達成可能な目標を決めます。そして目標を達成したら一緒に喜び、さらなる次の目標を設定します。庭いじりが趣味の70代男性患者さんは、「10分間庭仕事ができるようになる」という小さな目標から始め、今では2時間の庭仕事を楽しめるまでに回復しました。
「どうすれば好きなことを続けられるか」という前向きな視点がモチベーション継続のコツです!
最新治療で変形性膝関節症の進行を抑制

膝の痛みは、日常生活に大きな影を落とします。
階段の上り下り、椅子からの立ち上がり、そして何よりも大好きな散歩や旅行も億劫になってしまいますよね。手術を避けたいと願う気持ち、痛いほどよく分かります。
変形性膝関節症は、軟骨がすり減って骨と骨がぶつかり、炎症を起こすことで痛みが生じる病気です。
自転車のチェーンに油が切れて、キーキー音が鳴り、動きが悪くなる様子を想像してみてください。まさに、変形性膝関節症の膝の状態もこれと似ています。
クッションの役割を果たす軟骨がすり減ることで、骨同士が摩擦を起こし、炎症や痛みを引き起こしてしまうのです。
進行すると、安静時でも痛みを感じたり、膝の形が変形したりすることもあります。
初期のうちは立ち上がりや歩き始めに痛みを感じることが多いですが、徐々に痛む時間が長くなり、最終的には常に痛みが続くようになります。
再生医療について
最近、変形性膝関節症の治療として注目を集めているのが「再生医療」です。
これは、傷ついた組織を再生させることを目指す治療法です。
注射で自身の血液から抽出した多血小板血漿や幹細胞を膝に注入するため、入院の必要がなく、日帰りで治療を受けられます。自分の体の一部を使うため、安全性が高い治療法として期待されています。
再生医療には、大きく分けて「PRP療法」と「幹細胞治療」の2種類があります。
どちらも注射による治療法ですが、それぞれ異なる特徴を持っています。
PRP療法:血小板の成長因子で組織修復を促す
PRP療法は、ご自身の血液から血小板を多く含む成分(PRP:多血小板血漿)を抽出し、膝関節に注射する治療法です。
血小板には、擦り傷が治る時などに活躍する「成長因子」と呼ばれる成分が豊富に含まれています。これは、体の中で傷ついた組織を修復する司令塔のような役割を果たしています。
PRP療法では、この成長因子を膝関節に直接届けることで、傷ついた軟骨や周辺組織の修復を促し、痛みや炎症を軽減しようと試みます。
PRP療法は、自分の血液を使うため、アレルギー反応や拒絶反応のリスクが低いというメリットがあります。また、注射による治療なので、手術に比べて体への負担が少ないことも大きな特徴です。
PRP療法は比較的新しい治療法であり、現在も研究が続けられています。効果には個人差がありますが、痛みが軽減した、動きが良くなったという報告も多くあります。
幹細胞治療:再生医療で軟骨の再生を目指す
幹細胞治療は、患者さん自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、膝関節に注射する治療法です。
幹細胞は、様々な種類の細胞に変化できる特別な細胞です。例えるなら、どんな職業にもなれる万能な新人さんのようなものです。この幹細胞を膝に注射することで、損傷した軟骨の修復を促し、根本的な治療を目指します。
幹細胞治療もPRP療法と同様に、自分の体から採取した細胞を使うため、拒絶反応やアレルギー反応のリスクが低いことがメリットです。
ヒアルロン酸注射のように一時的に痛みを和らげるのではなく、軟骨の損傷を修復することで、長期的な痛みの改善を目指します。
幹細胞治療は、変形性膝関節症の新しい治療法として期待されていますが、効果や安全性については現在も研究が続けられています。
再生医療は健康保険が適用されないため、費用はクリニックによって異なります。治療を受ける際には、事前に費用を確認し、ご自身の症状や希望に合った治療法を選択することが大切です。
まとめ

変形性膝関節症で手術をしないで治したい方へ、今回は薬物療法、ヒアルロン酸注射、理学療法・運動療法、そして再生医療の4つの方法をご紹介しました。
痛みや炎症を抑える薬物療法、関節の動きを滑らかにするヒアルロン酸注射、そして膝周りの筋肉を鍛えて関節をサポートする理学療法・運動療法。どれも、あなたの膝の痛みを和らげ、快適な日常生活を取り戻すためのお手伝いをしてくれます。
さらに、近年注目されている再生医療についても触れました。PRP療法と幹細胞治療は、いずれも自分の細胞を利用するため安全性が高い治療法として期待されています。
これらの治療法を参考に、ご自身の症状や希望に合った方法で、膝の痛みと上手に付き合っていきましょう。そして、少しでも気になることがあれば、まずは専門医に相談してみてくださいね。
参考文献
- Yunus MHM, Nordin A, Kamal H. Pathophysiological Perspective of Osteoarthritis. Medicina (Kaunas, Lithuania) 56, no. 11 (2020): .
- Bennell KL, Paterson KL, Metcalf BR, Duong V, Eyles J, Kasza J, Wang Y, Cicuttini F, Buchbinder R, Forbes A, Harris A, Yu SP, Connell D, Linklater J, Wang BH, Oo WM, Hunter DJ. Effect of Intra-articular Platelet-Rich Plasma vs Placebo Injection on Pain and Medial Tibial Cartilage Volume in Patients With Knee Osteoarthritis: The RESTORE Randomized Clinical Trial. JAMA 326, no. 20 (2021): 2021-2030.

-情報提供医師
松本 和樹 Kazuki Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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