あなたは、階段の上り下りや正座がつらいと感じたことはありませんか?
膝の痛みは、年齢を重ねるにつれて誰もが経験する可能性のある、無視できないサインかもしれません。実は、中高年層に多い「変形性膝関節症」は、放置すると日常生活に深刻な支障をきたすことも。
2023年の厚生労働省の調査によれば、変形性膝関節症の患者数は増加傾向にあり、国民生活への影響は無視できません。 初期症状は軽い痛みや違和感ですが、進行すると安静時や夜間にも痛みが生じ、日常生活に支障をきたすレベルにまで悪化することも。
手術という選択肢もありますが、いつ手術を受けるべきか?と迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、変形性膝関節症の手術が必要となる症状や病期、そして手術のタイミングを判断するための具体的な目安とリスクについて、分かりやすく解説します。
あなたの膝の痛みを改善し、快適な生活を取り戻すための情報を提供しますので、ぜひ最後までお読みください。 もしかしたら、今日からあなたの生活を変える一歩を踏み出せるかもしれません。
目次
変形性膝関節症手術の適応となる症状と病期

膝の痛みは、年齢を重ねるごとに誰しもが経験する可能性のある悩みです。
特に、変形性膝関節症は中高年の方に多く、手術が必要になるケースもあります。
手術と聞くと不安に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、適切な時期に手術を受けることで、痛みを和らげ、より快適な生活を送ることができるようになります。
この章では、変形性膝関節症の手術がどのような症状の方に適応されるのか、そして病期との関係性について詳しく解説していきます。
膝の痛みや腫れの具体的な症状
変形性膝関節症の初期症状は、立ち上がりや歩き始め、階段の昇り降りなどで膝に違和感や軽い痛みを感じることです。最初は「年のせいかな」「少し休めば治るだろう」と思いがちですが、放置すると徐々に症状が悪化していきます。
進行すると、安静時や夜間にも痛みを感じるようになり、痛みで目が覚めてしまうこともあります。
正座や和式トイレの使用が困難になる方もいます。膝の腫れや水が溜まる、熱感などの炎症症状も現れます。
さらに進行すると、膝の関節が変形しO脚やX脚になり、歩行が不安定になります。杖や歩行器が必要になることもあります。
具体的な症状を以下にまとめます。
| 症状 | 具体的な症状 |
|---|---|
| 痛み | 立ち上がり時の痛み、安静時の痛み、夜間痛、動作時の痛み、階段昇降時の痛み、正座時の痛み、和式トイレ使用時の痛み |
| 腫れ | 膝に水が溜まる、腫れが引かない、炎症による熱感 |
| 可動域制限 | 膝が伸びない、曲がらない、正座ができない、階段の昇り降りが困難、歩行困難 |
| 変形 | O脚、X脚 |
| その他 | 関節の違和感、こわばり、歩行時の不安定感、膝がカクカクする、階段を降りる時に膝がガクッとなる(膝くずれ)、立ち座り動作がスムーズにできなくなる |
日常生活への影響と評価基準
変形性膝関節症が進行すると、日常生活に様々な影響が出てきます。
初期は痛みのため散歩や買い物が億劫になる程度ですが、重症化すると家事や入浴、トイレ、着替えといった基本的な動作にも支障をきたすようになります。
日常生活への影響度合いを評価するために、いくつかの基準が用いられます。
整形外科でよく使われるのは、日本整形外科学会の変形性膝関節症の重症度分類です。これは、X線写真で膝関節の変形の状態をみて、グレード0から4までの5段階で評価します。グレードが高いほど症状が重く、日常生活への影響も大きくなります。
例えば、グレード2では立ち上がりや歩き始めに痛みを感じ、正座が困難になります。グレード4まで進行すると、常に強い痛みがあり、歩行も困難になり、日常生活に大きな支障をきたします。
病期ごとの手術適応に関するガイドライン
変形性膝関節症の手術は、病期、症状の程度、日常生活への影響、そして患者さんの年齢や全身状態などを総合的に判断して決定されます。
一般的には、保存療法(薬物療法、リハビリテーション、ヒアルロン酸注射など)で十分な効果が得られない場合や、日常生活に著しい支障が出ている場合に手術が検討されます。
手術には、人工関節置換術や骨切り術など様々な種類があり、患者さんの状態に合わせて最適な手術法が選択されます。
人工関節置換術は、傷ついた関節面を人工関節に置き換える手術です。重度の変形性膝関節症に有効な治療法ですが、手術を受けた方の多くは、将来的に反対側の膝にも手術が必要になる可能性があります。これは、片側の膝を人工関節に置き換えることで、歩行時の体の使い方やバランスが変わり、反対側の膝への負担が増加するためと考えられています。
最近の研究では、人工関節置換術後、反対側の膝の変形性膝関節症が進行するバイオメカニカルな予測因子を特定しようと試みた研究もあります。しかし、現時点では明確な予測因子は見つかっていないため、手術後の経過観察と適切なケアが重要です。
▼変形性膝関節症の手術費用や保険適用について、併せてお読みください。
手術のタイミングを判断する具体的な目安とリスク

膝の痛みは、日常生活の質を大きく左右する悩ましい問題です。特に変形性膝関節症は、加齢とともに進行する傾向があり、手術が必要となるケースも少なくありません。
「手術」という言葉に不安を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、適切なタイミングで手術を受けることで、痛みから解放され、より快適な生活を送れるようになる可能性があります。
この章では、変形性膝関節症の手術を受けるタイミングについて、具体的な目安やリスクを交えながら詳しく解説します。
年齢や症状の程度、そして日常生活への影響など、様々な観点から総合的に判断する必要があるため、ご自身の状況と照らし合わせて読んでいただければ幸いです。
年齢や症状の程度から見る手術のタイミング
手術のタイミングは、年齢や症状の程度、日常生活への影響を総合的に判断します。画一的な基準はなく、患者さん一人ひとりの状態に合わせた個別対応が重要です。
まず、初期段階では保存療法が中心となります。痛み止めのお薬やヒアルロン酸注射、理学療法士によるリハビリテーションなどを通して、痛みを和らげ、病気の進行を少しでも遅らせることを目指します。
中等度の段階になると、保存療法を続けていても痛みが改善しない、あるいは日常生活に支障が出始めることがあります。階段の上り下りや正座が困難になる、といった状態です。この段階で、手術を検討し始める時期と言えるでしょう。
進行した段階では、膝の変形が顕著になり、常に痛みを感じ、日常生活に大きな制限が生じます。この段階では、多くの場合、手術が推奨されます。
年齢については、高齢だからといって手術ができないわけではありません。もちろん全身状態や合併症の有無など、慎重な評価が必要ですが、高齢の方でも手術によって症状が改善し、生活の質が向上するケースは多くあります。反対に、若い方でも、症状が重く日常生活に支障がある場合は、年齢に関わらず手術を検討することがあります。
例えば、60代の方で、膝の痛みが強く、趣味のゴルフや旅行を楽しめないといった場合は、手術によって再びアクティブな生活を送れるようになる可能性があります。一方、80代の方で、日常生活動作に支障はないものの、膝の痛みが気になるといった場合は、保存療法を継続する方が良い場合もあります。
重要なのは、年齢にとらわれず、ご自身の状態と希望を踏まえ、医師とよく相談することです。
手術の種類とそれぞれのリスク
変形性膝関節症の手術には、大きく分けて人工膝関節置換術と高位脛骨骨切り術があります。それぞれの手術にはメリット・デメリットがあり、患者さんの状態に合わせて最適な方法を選択する必要があります。
人工膝関節置換術は、傷んでしまった膝関節を人工関節に取り換える手術です。痛みが大幅に軽減され、日常生活動作の改善が期待できます。しかし、人工物を入れるため、感染症や血栓症、人工関節の緩みといったリスクも存在します。
また、人工膝関節置換術を受けた後、数年から数十年かけて反対側の膝にも手術が必要になる場合があります。最近の研究では、片側の膝を人工関節に置き換えることで歩行時の体の使い方やバランスが変化し、反対側の膝への負担が増加するためと考えられています。
高位脛骨骨切り術は、膝の骨を切って変形を矯正する手術です。比較的若い方や活動量の多い方に適しています。骨を扱う手術のため、骨癒合不全や感染症、神経麻痺などのリスクが考えられます。
どちらの手術にもリスクは伴います。医師と十分に話し合い、ご自身の状態や生活スタイルに合った手術法を選択することが重要です。

手術は「終点」ではなく「転換点」!
私がいつもお伝えするのは、手術は治療の「終点」ではなく、新しい生活スタイルへの「転換点」だという考え方です。術前から「手術後こそリハビリが重要」「人工関節は天然の関節ではない」という認識を持ってもらい、具体的な術後生活のイメージを事前に構築してもらうことで、術後の精神的負担やリスクを予防しています。
手術前の検査や準備に関する情報
手術前には、レントゲン検査、血液検査、心電図検査など、様々な検査を行います。これらの検査を通して全身状態を確認し、手術に耐えられるかどうかを評価します。
また、手術の方法やリスク、リハビリテーションの内容について、医師から詳しい説明を受けます。内容を十分に理解し、納得した上で手術を受けることが大切です。
手術を受けるにあたっては、自宅のバリアフリー化を進めたり、家族や周囲のサポート体制を整えておくことも重要です。入院期間や退院後の生活についても、事前に確認し、準備しておきましょう。
▼変形性膝関節症の手術後の生活や注意点について、以下もご参考にされてください。
まとめ

変形性膝関節症の手術は、保存療法では改善しない痛みや日常生活への支障が大きくなった場合に検討されます。
手術のタイミングは年齢や症状の程度、日常生活への影響など、様々な要素を総合的に判断して決め、患者さん一人ひとりの状況に合わせた個別対応が重要です。
初期症状は保存療法で様子を見ますが、中等度から重度になると手術の選択肢も増えてきます。
手術には人工膝関節置換術や高位脛骨骨切り術などがあり、それぞれにメリット・デメリット、リスクが伴いますので、医師とよく相談して、ご自身の状態に最適な方法を選びましょう。
手術を決断する前に、検査や手術内容、リハビリ、退院後の生活について医師から十分な説明を受け、納得した上で手術に臨むことが大切です。 不安なことは何でも医師に相談し、安心して治療を進めていきましょう。
参考文献

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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