階段の上り下りで膝が痛む、正座ができなくなった、そんな経験はありませんか?50代以上の方々の多くが、膝の痛みに悩まされているのが現状です。
「最近、膝の痛みが増してきて、散歩も思うようにできない」「膝の痛みのせいで、趣味の旅行や買い物にも行けなくなってしまった」といった声をよく耳にします。
このような症状の多くは変形性膝関節症が原因かもしれません。痛みが続く場合は、まずは整形外科での診察を受けることが大切です。早期発見・早期治療により、症状の進行を抑えることができる可能性があります。
変形性膝関節症の治療には、投薬や運動療法などの保存療法から手術まで、さまざまな選択肢があります。特に手術については、「どんな手術方法があるの?」「いつ手術を検討すべき?」「手術後の生活は?」など、多くの疑問や不安をお持ちの方も多いことでしょう。
この記事では、変形性膝関節症の手術について、手術が必要となるケースや手術方法の特徴、術後の回復過程まで、詳しく解説していきます。手術を検討されている方はもちろん、将来に備えて知識を得たい方にも役立つ情報をお届けします。
目次
変形性膝関節症のメカニズムと症状

変形性膝関節症は、膝の関節軟骨がすり減ったり、変形したりすることで起こる病気です。主な症状は膝の痛みや腫れ、関節のこわばりなど。特に階段の上り下りや、長時間の歩行時に強い痛みを感じることが多いでしょう。
加齢とともに軟骨が摩耗していくことが最も一般的な原因となっています。また、肥満や過度な運動、膝への負担が大きい仕事なども発症リスクを高めてしまいます。早期発見・早期治療が症状の進行を抑える鍵となってきますよ。
膝の痛みの原因と仕組み
変形性膝関節症における膝の痛みは、関節軟骨の変性と摩耗が主な原因です。この変化により、骨と骨が直接こすれ合うようになり、炎症や痛みが引き起こされます。
関節軟骨の変性は、主に加齢による自然な摩耗から始まります。健康な膝関節では、軟骨がクッションの役割を果たし、骨と骨の間で滑らかな動きを可能にしています。しかし、この軟骨が徐々にすり減ることで、以下のような変化が起こってきます。
- 軟骨の表面がざらざらになり、関節の動きがスムーズでなくなる
- 軟骨の厚みが薄くなり、衝撃を吸収する機能が低下する
- 骨同士が接触し、炎症や痛みが生じる
この状態が進行すると、膝関節の周囲に骨棘(こっきょく)と呼ばれる余分な骨が形成されることもあります。骨棘は体が関節を安定させようとする反応ですが、かえって関節の可動域を制限してしまう原因となってしまいます。
また、関節を支える筋肉が衰えることで、膝への負担が増大し、症状が悪化する悪循環に陥ることもあるのです。特に、肥満や過度な運動、正座などの膝に負担のかかる姿勢を続けることで、軟骨の摩耗が加速されてしまいます。
痛みの性質も進行度合いによって変化していきます。初期は動き始めの痛み(始動時痛)が特徴的ですが、進行すると安静時でも痛みを感じるようになってしまうでしょう。
このような膝の痛みの仕組みを理解することで、日常生活での膝への負担を軽減し、適切な治療法を選択することができるようになります。早期に適切な対処を行うことで、症状の進行を遅らせることも可能なのです。
▼変形性膝関節症の初期症状については以下をご参考ください。
症状の進行度合いと治療の選択肢
変形性膝関節症の進行度合いは、大きく4つの段階に分けられます。それぞれの段階で適切な治療法を選択することが、症状の改善や進行予防につながっていきます。
初期(第1期)では、レントゲン写真上の変化は軽度ですが、膝に違和感や軽い痛みを感じ始めます。この段階では、生活習慣の改善や運動療法などの保存的治療が中心となってきましょう。
中期(第2期)になると、関節の隙間が狭くなり、階段の上り下りで痛みを感じるようになります。この時期は、お薬による治療や装具療法を組み合わせた総合的なアプローチが効果的です。
進行期(第3期)では、関節の変形が進み、日常生活に支障が出始めます。保存療法で改善が見られない場合は、骨切り術などの手術療法を検討する時期となってくるでしょう。
末期(第4期)になると、関節の破壊が著しく、安静時でも痛みを感じるようになります。この段階では、人工関節置換術が有効な治療選択肢となります。
| 進行度 | 主な症状 | 推奨される治療法 |
|---|---|---|
| 初期 | 軽い痛みと違和感 | 生活指導・運動療法 |
| 中期 | 動作時の痛み | 薬物療法・装具療法 |
| 進行期 | 持続的な痛み | 手術療法の検討 |
| 末期 | 強い痛みと変形 | 人工関節置換術 |
治療法の選択は、症状の程度だけでなく、年齢や生活スタイル、全身状態なども考慮して総合的に判断していきます。早期発見・早期治療が重要で、定期的な検査で進行状況をチェックすることをお勧めしますよ。
ただし、レントゲン写真での変形の程度と痛みの強さは、必ずしも一致しないことにも注意が必要です。個人差が大きいため、症状や生活の質に応じて、医師と相談しながら最適な治療法を選んでいきましょう。
▼変形性膝関節症に対するサプリメントの服用について、以下もご参考ください。
膝の手術が推奨されるケース

変形性膝関節症の手術を検討する際は、痛みの程度や日常生活への支障が重要な判断基準となってきます。歩行時の痛みが強く、階段の昇り降りが困難になったり、夜間痛で眠れなくなったりするような場合には、手術による治療が推奨されるかもしれません。
保存療法で十分な改善が見られない場合や、膝のレントゲン検査で軟骨の著しい摩耗や変形が確認された際にも、手術を考える必要が出てくることでしょう。ただし、年齢や体力、生活スタイルなど、患者さん一人一人の状況に応じて、最適な治療法を選択することが大切です。
手術が検討される症状の目安
変形性膝関節症の手術を検討する際の具体的な症状の目安についてお伝えします。
膝の痛みが日常生活に大きな支障をきたすようになると、手術治療を考える時期かもしれません。特に3カ月以上の保存療法を行っても改善が見られない場合は、手術を視野に入れる必要があるでしょう。
手術を検討する具体的な目安として、以下のような症状が挙げられます。
- 200メートル以上歩くと強い痛みが出現する
- 杖や手すりがないと階段の昇り降りができない
- 夜間痛で睡眠が妨げられる
また、レントゲン検査でKellgren-Lawrence分類という評価基準において、グレード3以上(関節裂隙の狭小化が50%以上)の場合も、手術が推奨される目安となってきます。ただし、年齢や生活スタイル、活動量なども考慮して総合的に判断する必要があります。
痛みの程度は個人差が大きく、我慢強い方は重症化するまで気付かないこともあります。膝を曲げ伸ばしする際のグキグキという音や、階段を降りる時の不安定感なども要注意なサインと言えるでしょう。
なお、手術を決断する際は、整形外科医との十分な相談が欠かせません。医師は患者さんの症状や生活環境、年齢などを総合的に判断したうえで、最適な治療方法を提案してくれるはずです。
このような症状がある場合は、まずは信頼できる整形外科を受診してみましょう。早めの相談が、より良い治療につながっていきます。
保存療法で改善が見られない場合の対応
変形性膝関節症の保存療法を3〜6カ月程度継続しても症状が改善されない場合は、手術を検討する段階に入ります。痛みが強く日常生活に支障をきたしている状態が続くようであれば、整形外科医に相談してみましょう。
保存療法で改善が見られない場合、以下のような状態が続いているかどうかを確認することが大切です。
- 鎮痛剤を服用しても痛みが取れない
- 歩行距離が著しく制限される
- 夜間痛で睡眠が妨げられる
- 膝の変形が進行している
このような症状が持続する場合、手術によって大幅なQOL(生活の質)の向上が期待できます。ただし、手術を決断する前に、現在行っている保存療法が適切かどうかを医師と再確認することをおすすめします。
例えば、運動療法の内容や強度が適切でなかったり、生活習慣の改善が不十分だったりする可能性もあります。また、投薬内容の見直しや、装具の使用など、まだ試していない治療法が残されているかもしれません。
手術を検討する際は、整形外科医との十分な話し合いが不可欠です。医師は患者さんの年齢、活動性、膝の状態などを総合的に判断し、最適な治療方針を提案してくれるはずです。セカンドオピニオンを求めることも、より良い判断を下すための選択肢の一つとなってきます。
保存療法での改善が見られない場合でも、すぐに手術を急ぐ必要はありません。手術のタイミングは、患者さんの生活スタイルや希望する活動レベルによっても変わってくるものです。手術に対する不安や疑問点は、医師に遠慮なく相談してみてください。
手術のベストなタイミング
変形性膝関節症の手術を検討する際、そのタイミングは患者さん一人ひとりの状況によって異なります。しかし、手術のベストなタイミングを見極めるためのポイントがいくつかありますので、詳しくご説明していきましょう。
手術のベストなタイミングは、痛みの程度や日常生活への支障、年齢、全身状態など、さまざまな要素を総合的に判断する必要があります。特に重要なのは、保存療法での治療効果が限界に達し、生活の質が著しく低下してきた時期です。
具体的には、以下のような状況が手術を検討するタイミングの目安となってきます。
- 3か月以上の保存療法で十分な効果が得られない
- 痛みのために夜間睡眠が妨げられる
- 100メートル程度の歩行も困難になってきた
- 杖や装具を使用しても日常生活に支障がある
また、年齢によっても手術のタイミングは変わってきます。比較的若い方(65歳未満)の場合は、できるだけ人工関節の寿命を考慮して慎重に判断しましょう。一方で、高齢の方は体力や回復力の面から、あまり遅くならないうちに手術を検討することをお勧めします。
ただし、手術を急ぐべきではない場合もあります。例えば、感染症や重度の心臓病がある場合、極度の肥満がある場合などは、まずそれらの改善が優先されるでしょう。
特に注意したいのは、膝の状態が悪化しすぎてから手術を行うと、手術の難度が上がり、回復にも時間がかかってしまう点です。理想的なタイミングとしては、ADL(日常生活動作)の自立が保たれている段階で手術を行うことが、術後の回復を順調に進める鍵となります。
医師との十分な相談を重ね、ご自身の生活スタイルや将来の目標なども踏まえて、最適な手術のタイミングを見極めていきましょう。焦る必要はありませんが、あまり先延ばしにしすぎないことも大切なポイントとなってきます。
代表的な手術方法と特徴

変形性膝関節症の手術方法は、症状や年齢によって大きく2つに分かれます。人工関節置換術は、関節の損傷が重度な場合に選ばれる治療法で、痛みの軽減と関節機能の回復が期待できるでしょう。一方、骨切り術は比較的若い方向けの治療法で、膝関節の荷重バランスを改善することで、軟骨の保護と関節機能の維持を目指していきます。
それぞれの手術方法には、手術時間や入院期間、費用面での違いがあります。また、手術後のリハビリテーションの進め方や、日常生活での制限も異なってきますので、担当医とよく相談しながら、自分に合った手術方法を選んでいくことが大切です。
人工関節置換術の種類と効果
人工関節置換術は、変形性膝関節症の手術治療において最も一般的な方法の一つです。痛みの軽減と膝の機能回復に高い効果が期待できる治療法として、多くの患者さんに選ばれています。
人工関節置換術には、膝全体を置き換える全置換術(TKA)と、一部分だけを置き換える部分置換術(UKA)の2種類があります。患者さんの症状や膝の状態によって、適切な術式が選択されていきます。
全人工膝関節置換術(TKA)は、膝関節全体を人工関節に置き換える手術です。変形性膝関節症が進行し、膝全体に重度の痛みや変形がある場合に適しています。手術時間は約2時間程度で、術後の痛み改善率は90%以上と高い効果が得られます。
| 手術方法 | 適応 | 手術時間 | 入院期間 |
|---|---|---|---|
| TKA | 重度の症状 | 約2時間 | 2~3週間 |
| UKA | 部分的な症状 | 約1時間 | 1~2週間 |
| 最小侵襲TKA | 比較的軽度 | 約1.5時間 | 2週間程度 |
部分人工膝関節置換術(UKA)は、膝の内側や外側など、症状のある部分のみを置き換える手術方法になります。健康な部分を残せるため、より自然な膝の動きが期待できるでしょう。手術時間も短く、回復が早いのが特徴です。
近年では、手術の傷を小さく抑える最小侵襲手術も普及してきました。従来の手術に比べて、術後の痛みが少なく、早期の回復が見込めます。ただし、全ての患者さんに適用できるわけではないので、医師との十分な相談が必要になってきます。
手術後の経過は個人差がありますが、多くの方が3~6カ月程度で日常生活に復帰できます。適切なリハビリテーションを行うことで、膝の機能は徐々に改善していきます。人工関節の寿命は15~20年程度とされていますが、使用状況や生活習慣によって変わってくることもあるでしょう。
効果を最大限に引き出すためには、術後の定期的な経過観察とリハビリテーションの継続が重要です。また、過度な運動や体重管理にも気を配ることで、人工関節の長期使用が可能になってきます。
骨切り術の適応と回復期間
骨切り術は、膝の内側に負担が集中している比較的若い患者さんに適した手術方法です。脚のO脚を矯正することで、膝にかかる負担を軽減し、関節の変形進行を抑える効果が期待できます。
通常、60歳以下で、片側の膝に変形が集中している方が良い適応となります。また、関節可動域が比較的保たれており、体重過多ではない方が手術の対象となりやすいでしょう。膝関節の内側にのみ軟骨の摩耗がある場合は、特に効果が期待できる手術方法です。
骨切り術には主に2種類の手術方法があります。
| 手術方法 | 特徴 | 回復期間 |
|---|---|---|
| 高位脛骨骨切り術 | 脛骨を切って矯正 | 3〜4カ月 |
| 大腿骨遠位骨切り術 | 大腿骨を切って矯正 | 4〜6カ月 |
手術後は、骨の癒合を待つ必要があるため、松葉杖での歩行が約6週間ほど必要となってきます。その後、徐々に荷重を増やしていき、通常の歩行が可能になるまでには3〜4カ月程度かかることが一般的です。
リハビリは手術翌日から開始され、関節可動域の改善や筋力の回復を目指していきます。職場復帰までの期間は、デスクワークであれば2〜3カ月、立ち仕事の場合は4〜6カ月程度を見込んでおく必要があるでしょう。
スポーツへの復帰については、軽いジョギングなら6カ月程度で可能になりますが、競技レベルの運動再開には8カ月から1年ほどかかる場合もあります。ただし、これらの期間は、年齢や術前の状態、リハビリへの取り組み方によって個人差が大きいことを覚えておきましょう。
それぞれの手術費用と保険適用
変形性膝関節症の手術費用は保険適用の対象となり、手術の種類によって費用は異なります。標準的な3割負担の場合、人工関節置換術で約30〜50万円程度の自己負担となることが一般的です。
手術費用は医療機関や手術方法によって変動しますが、主な手術の費用の目安は以下のようになっています。
| 手術の種類 | 保険適用時の自己負担額(3割) | 入院期間 |
|---|---|---|
| 全人工関節置換術 | 35〜50万円 | 2〜3週間 |
| 部分人工関節置換術 | 30〜40万円 | 2週間程度 |
| 高位脛骨骨切り術 | 25〜35万円 | 2〜3週間 |
健康保険が適用されるため、実際の自己負担額は患者さんの保険の種類や負担割合によって変わってきます。例えば高齢者の方は1割負担になる場合もあり、その場合は上記の3分の1程度の費用となるでしょう。
また、高額療養費制度を利用することで、さらに負担を軽減できる可能性があります。所得に応じて自己負担の上限額が設定されており、その額を超えた分は後から払い戻しを受けることができます。
入院費用や手術後のリハビリ費用なども考慮する必要がありますが、これらも保険適用となります。ただし、差額ベッド代や個室料金などの保険適用外の費用は別途必要になることがあるので注意が必要でしょう。
医療機関によって費用が異なることもあるため、事前に複数の病院で見積もりを取ることをお勧めします。また、医療費控除の対象にもなるので、確定申告の際に申請することで税金の還付を受けられる場合もありますよ。
手術費用について心配な方は、病院の医療相談室などで支払い方法や利用可能な制度について相談してみてください。分割払いなどの支払い方法を選択できる医療機関もあります。
手術後の回復と生活について

変形性膝関節症の手術後は、適切な回復期間とリハビリテーションが重要になってきます。個人差はありますが、一般的に入院期間は2週間から1か月程度で、その後の自宅での療養も含めて計画的な回復プログラムに取り組むことが大切でしょう。
手術直後は痛みや腫れが気になりますが、徐々に和らいでいきます。リハビリを経て日常生活への復帰を目指していきますが、過度な負担は避けたほうがよいですね。無理のない範囲で活動量を増やしていくことで、より良い回復につながります。また、定期的な通院で経過観察を受けることをお勧めします。
退院までの入院期間と注意点
変形性膝関節症の手術後の入院期間は、手術の種類によって異なりますが、一般的に2週間から4週間程度必要となります。回復状況や合併症の有無によって、この期間は個人差がありますので、焦らずに経過を見守ることが大切です。
入院中は、手術直後の痛みのコントロールと感染予防が最優先事項となってきます。医師や看護師の指示に従い、定期的な消毒や投薬を行いながら、徐々に体を動かしていくことになるでしょう。
特に気をつけたい注意点として、以下のようなものがあります。
- 傷口の清潔保持と定期的な消毒
- 処方された薬の確実な服用
- 安静時でも足首を動かすなどの血栓予防運動
- 無理のない範囲での術後リハビリ
- 適切な食事と十分な睡眠
入院中のリハビリは、術後1日目から始まることが一般的です。最初はベッド上での簡単な運動から始めて、徐々に歩行器を使った歩行練習へと移行していきます。痛みの程度を確認しながら、理学療法士の指導のもとで段階的にリハビリを進めていくことになります。
退院の目安となるのは、基本的な日常動作が自立できること。具体的には、杖や歩行器を使って安全に歩けるようになることや、トイレ動作が一人でできるようになることなどが基準となってくるでしょう。
また、入院中から退院後の生活に向けた準備も始める必要があります。自宅での生活環境の整備や、家族のサポート体制の確認なども重要なポイントとなってきます。必要に応じて、ソーシャルワーカーに相談しながら、退院後の生活プランを立てていくことをおすすめします。
リハビリテーションの進め方
変形性膝関節症の手術後のリハビリテーションは、段階的なプログラムに沿って進めていくことが重要です。早期回復と膝関節機能の向上のために、適切な運動強度とタイミングで実施することがポイントとなります。
リハビリテーションは手術直後から始まり、まずはベッド上での簡単な運動から開始します。膝を曲げ伸ばしする運動や、足首を上下に動かす運動などを行い、血行促進と関節の拘縮予防を目指していきましょう。
術後1週間程度で歩行器を使用した歩行練習が始まります。この時期は膝関節の可動域を徐々に広げていくことが大切です。理学療法士の指導のもと、以下のような段階を経て機能回復を進めていきます。
- ベッド上での関節可動域訓練
- 歩行器を使用した歩行練習
- 杖を使用した歩行訓練
- 階段昇降の練習
術後2~3週間が経過すると、自宅でのリハビリテーションに移行します。この時期からは筋力強化運動にも重点を置いていきます。大腿四頭筋の強化は特に重要で、膝の安定性向上に効果的です。
リハビリテーションの進め方は手術方法によって異なります。人工関節全置換術(TKA)の場合は3~6カ月の継続的なリハビリが必要ですが、部分置換術(UKA)では比較的早い回復が期待できます。
焦らず着実に進めることがリハビリ成功の秘訣です。痛みを我慢して無理な運動を行うと、かえって回復を遅らせてしまう可能性があります。担当医や理学療法士と相談しながら、自分のペースで進めていくことをお勧めします。
日常生活動作の練習も、リハビリテーションの重要な要素となってきます。トイレや入浴といった基本的な動作から、家事や趣味の活動まで、段階的に練習を重ねていくことで、スムーズな社会復帰が可能になるでしょう。
日常生活での制限事項
変形性膝関節症の手術後は、回復を確実なものにするために、いくつかの生活上の制限に注意を払う必要があります。
手術直後から3カ月程度は、膝への過度な負担を避けることが最も重要です。特に階段の昇り降りや正座、しゃがみ込み動作は控えめにすることをお勧めします。これらの動作は膝に大きな負担がかかり、回復を遅らせてしまう可能性があるためです。
入浴については、傷口の治癒状態に応じて医師の指示を仰ぎましょう。一般的には抜糸後から可能となりますが、長時間の入浴は避け、浴槽の出入りには手すりを使用するなどの配慮が必要になってきます。
また、次のような日常生活での制限事項に気を付けることで、スムーズな回復が期待できます。
- 重い荷物の持ち運びは避ける(2kg以上は要注意)
- 長時間の正座や胡座は控える
- 和式トイレの使用は洋式に変更する
- 滑りやすい場所での移動は慎重に行う
スポーツ活動の再開については、軽いウォーキングから始めて徐々に運動強度を上げていくことが推奨されます。ただし、ジョギングや球技などの激しい運動は、医師との相談のうえで慎重に判断する必要があるでしょう。
車の運転再開は、一般的に術後4〜8週間程度で可能となりますが、これも個人差が大きいため、必ず医師の許可を得てから始めましょう。特にブレーキ操作に支障がないことを確認することが大切です。
住環境の整備も重要なポイントとなってきます。段差の解消や手すりの設置、滑り止めマットの使用など、転倒予防のための工夫を取り入れていくと安心です。
退院後は、定期的な通院とリハビリテーションの継続が欠かせません。医師や理学療法士の指示に従いながら、徐々に活動範囲を広げていくことで、より良い回復につながっていくでしょう。
このような制限は一時的なものであり、回復とともに緩和されていきます。ただし、人工関節置換術を受けた方は、その後も関節の寿命を考慮した生活上の配慮が必要となってきます。医師からの指示を守りながら、無理のない範囲で活動的な生活を送ることを心がけましょう。
手術以外の治療選択肢

変形性膝関節症の治療において、手術だけが選択肢ではありません。近年では、再生医療技術の発展により、患者さん自身の血液や脂肪を活用した治療法が注目を集めていますよ。症状の程度や年齢によって、さまざまな治療方法を組み合わせることができます。
運動療法やヒアルロン酸注入などの保存療法も、痛みの緩和や関節機能の改善に効果的です。これらの治療法は体への負担が少なく、日常生活を送りながら続けられる利点があるでしょう。ただし、どの治療法を選択するかは、必ず医師と相談のうえで決めていきましょう。
再生医療による新しい治療法
変形性膝関節症の新しい治療選択肢として、再生医療が注目を集めています。従来の治療法と比べて、より自然な形での治癒が期待できる可能性があります。
再生医療の中でも、特に幹細胞治療が変形性膝関節症の治療に有効だと考えられています。患者さん自身の脂肪や骨髄から採取した幹細胞を使用することで、損傷した軟骨の再生を促すことができるかもしれません。
この治療法の大きな特徴は、体への負担が比較的少ないことです。人工関節置換術のような大がかりな手術と比べ、日帰りや短期入院で治療が可能なケースも多いでしょう。また、自分の細胞を使用するため、拒絶反応のリスクも低く抑えられます。
具体的な治療法としては、以下のようなものが実施されています。
- 自己多血小板血漿(PRP)療法:血小板の持つ成長因子を活用
- 間葉系幹細胞療法:軟骨や骨への分化能力を持つ細胞を利用
- 自己培養軟骨細胞移植:患者さんの軟骨細胞を培養して移植
ただし、再生医療による治療は比較的新しい分野であり、まだ研究段階のものも多く含まれています。また、保険適用外の治療が多いため、費用面での負担を考慮する必要があるでしょう。
効果については個人差が大きく、すべての方に確実な改善が見られるわけではありません。特に、症状が重度に進行している場合は、従来の手術療法のほうが適している可能性もあります。
医療の進歩により、今後さらに効果的な再生医療の治療法が開発されることが期待されています。ご自身に合った治療法を選ぶため、担当医とよく相談することをお勧めしますよ。
保存療法の種類と効果
変形性膝関節症の治療では、手術以外にもさまざまな保存療法が効果を発揮します。痛みの軽減や関節機能の維持に役立つ保存療法について、その種類と期待できる効果をご紹介しましょう。
保存療法は、症状が軽度から中等度の場合に特に有効です。複数の治療法を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。主な保存療法には運動療法、物理療法、投薬治療などがあります。
運動療法は、膝周りの筋力強化と関節の柔軟性維持が目的です。太もも前面の大腿四頭筋の強化が特に重要で、これにより膝関節への負担を軽減できます。ストレッチや水中運動も効果的な選択肢となってきます。
物理療法では、温熱療法や寒冷療法を状態に応じて使い分けていきましょう。急性期の炎症には冷やす治療、慢性期には温める治療が効果的です。また、超音波治療やマッサージなども、痛みの軽減に役立ちます。
投薬治療については、以下のような選択肢があります。
- 消炎鎮痛剤(内服薬やテープ剤)
- ヒアルロン酸注射
- ステロイド注射
装具療法も有効な選択肢の一つです。膝サポーターや足底板を使用することで、膝への負担を分散させ、痛みを和らげることができるでしょう。
これらの保存療法は、継続することで効果が表れてきます。ただし、症状が進行している場合は効果が限定的となることもあります。その場合は、手術療法への移行を検討する必要があるかもしれません。
なお、保存療法を行う際は、必ず医師や理学療法士の指導のもとで進めることが大切です。自己判断での治療は、かえって症状を悪化させる可能性があるので注意が必要でしょう。
まとめ

変形性膝関節症の手術について、詳しく見てきましたが、いかがでしたでしょうか。手術を決断することは誰にとっても大きな決断になりますよね。
まず大切なのは、変形性膝関節症の症状や進行度合いを正しく理解することです。膝の痛みが日常生活に支障をきたすようになったら、早めに専門医に相談してみましょう。
手術が推奨されるのは、保存療法での改善が見られず、強い痛みや膝の変形が進行している場合です。手術方法は、人工関節置換術と骨切り術が代表的で、年齢や症状に応じて最適な方法が選択されます。
術後の回復には時間がかかりますが、適切なリハビリテーションを行うことで、多くの方が日常生活に戻れるようになっています。手術を受けるベストなタイミングは、医師とよく相談しながら決めていきましょう。
ただし、手術が唯一の選択肢というわけではありません。保存療法や再生医療など、新しい治療法も次々と開発されています。ご自身の症状や生活スタイルに合わせて、最適な治療法を見つけることが大切ですね。
これからも医療技術は進歩し続けます。定期的に専門医に相談し、最新の治療情報をキャッチアップしていくことをおすすめします。変形性膝関節症と上手に付き合いながら、充実した毎日を送りたいものです。

-情報提供医師
松本 和樹 Kazuki Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
戻る