変形性膝関節症の最新治療!再生医療の種類と特徴とは【医師が解説】

変形性膝関節症 再生医療
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変形性膝関節症と診断されると、将来への不安も大きくなってしまうことでしょう。

そんな変形性膝関節症の最新治療法として注目されているのが「再生医療」です。

自分の細胞を使って傷ついた組織を修復する再生医療は、手術のような身体への負担が少ないのが特徴。

この記事では、PRP療法や幹細胞治療など、様々な種類の再生医療の特徴やメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

自分に合った治療法を見つけるためにも、ぜひ読み進めてみてください。

変形性膝関節症に対する再生医療の種類と特徴

変形性膝関節症 再生医療

変形性膝関節症と診断されると、どんな治療法が効果的なのか迷われる方も多いと思います。

この記事では、変形性膝関節症の新しい治療法として注目されている再生医療について、わかりやすく解説します。

健康な膝関節では、骨の表面はなめらかな軟骨で覆われていて、クッションの役割を果たしています。ところが、加齢や肥満、激しい運動、遺伝などが原因で、この軟骨がすり減ってしまうことがあります。これが変形性膝関節症です。

軟骨がすり減ると、骨と骨が直接こすれ合うようになり、炎症が起こって痛みを生じます。初期は立ち上がりや歩き始めなどに痛みを感じることが多いですが、進行すると、安静時にも痛みが続くようになります。

再生医療は、このすり減ってしまった軟骨を再生させることを目的とした治療法です

いくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。自分に合った治療法を選ぶためにも、それぞれのメリット・デメリットを理解しておきましょう。

PRP療法の特徴と効果

PRP療法は、患者さん自身の血液から血小板を多く含む血漿(PRP)を抽出し、膝関節に注射する治療法です。

血液を遠心分離機にかけて成分を分離し、血小板の濃度を高めたものがPRPです。

PRPには、組織の修復を促す様々な成長因子が含まれており、炎症を抑え、痛みを和らげ、膝の機能を改善する効果が期待できます。

PRP療法は、比較的低侵襲な治療法で、入院の必要もなく、日帰りで治療を受けることができます。

しかし、効果には個人差があり、すべての方に効果があるとは限りません。

オーストラリアで行われた臨床試験では、軽度から中等度の変形性膝関節症の患者さんに対してPRP注射を行っても、生理食塩水と比較して12か月後の症状や関節構造に大きな差は見られませんでした。これは、変形性膝関節症の進行には様々な要因が関わっており、PRP療法だけで根本的な解決が難しい場合もあることを示唆しています。

間葉系幹細胞療法の特徴と効果

間葉系幹細胞療法は、骨髄や脂肪組織などから採取した間葉系幹細胞を培養して増やし、膝関節に注射する治療法です

間葉系幹細胞は、様々な種類の細胞に分化する能力を持つ細胞で、損傷した組織の修復を促進する効果が期待されています。

変形性膝関節症の場合、間葉系幹細胞は軟骨細胞へと分化し、すり減った軟骨を再生させる可能性があります。

この治療法はまだ研究段階ですが、変形性膝関節症の進行を遅らせ、痛みや炎症を軽減する可能性が示唆されています。

骨髄幹細胞を利用した特徴と効果

骨髄幹細胞は、骨髄液に含まれる幹細胞です。

採取方法としては、骨盤に針を刺して骨髄液を吸引します。

骨髄幹細胞療法は、比較的歴史が長く、安全性が高いとされています。

骨髄幹細胞は軟骨の再生を促進する効果が期待できるため、変形性膝関節症の治療に用いられています。

脂肪由来自己幹細胞の特徴と効果

脂肪由来自己幹細胞は、皮下脂肪から採取した幹細胞です。

採取方法としては、お腹やお尻などから少量の脂肪を吸引します。

脂肪由来自己幹細胞は、骨髄幹細胞よりも多くの幹細胞を採取できるため、治療効果が高いと期待されています。

また、脂肪採取は骨髄採取よりも患者さんの負担が少ないというメリットもあります。

ヒアルロン酸注射との違い

ヒアルロン酸注射は、変形性膝関節症の治療で広く行われている方法です。

ヒアルロン酸は関節液の主成分であり、関節の動きを滑らかにする働きがあります。

ヒアルロン酸注射は痛みを和らげ、関節の機能を改善する効果がありますが、効果は一時的です。

一方、再生医療は組織の修復を促進することで、より根本的な治療を目指します。

再生医療はヒアルロン酸注射よりも効果が持続する可能性がありますが、費用が高額であるというデメリットもあります。

再生医療は新しい治療法であり、その効果や安全性についてはまだ十分に解明されていない部分もあります。治療を受ける際には、医師とよく相談し、メリットとデメリットを理解した上で、ご自身に合った治療法を選択することが重要です。

松本 美衣
松本 美衣

幹細胞治療の効果の個人差について

膝の再生医療のうち、最も期待されているのが幹細胞を使った治療です。

同じような症状や年齢の患者さんでも効果に個人差があります。特に、日常的に運動習慣がある方や、バランスの良い食事を心がけている方では効果が高い傾向があります。

70代の男性患者さんは毎日のウォーキングを20年続けていて、幹細胞治療後わずか2ヶ月で膝の動きが格段に良くなりました。再生医療を始める前に「治療の効果を高める生活習慣」についても詳しく説明しています。

再生医療の比較と選択肢

変形性膝関節症 再生医療

変形性膝関節症に対する新しい治療法として注目されている再生医療ですが、いくつか種類があることをご紹介しました。

再生医療以外の治療法ももちろんあります。ご自身の状況に合った治療法を選択するためにも、それぞれのメリット・デメリットを理解しておきましょう。

再生医療と人工関節手術の違い

変形性膝関節症の治療法には、大きく分けて「保存療法」「手術療法」「再生医療」の3つの選択肢があります。

保存療法は、痛み止めやヒアルロン酸注射、運動療法など、比較的負担の少ない治療法です。初期の変形性膝関節症では、まず保存療法を試みます。しかし、症状が進行すると効果が得にくくなることもあります。

手術療法は、傷んでしまった軟骨や骨を取り除き、人工関節に入れ替える手術です。人工関節手術は最終手段と考えられており、体に大きな負担がかかります。入院期間は2~3週間ほど必要で、リハビリテーションにも時間を要します。

再生医療は、患者さん自身の細胞を使って傷ついた組織の修復を促す治療法です。手術と異なり、切開や縫合を伴わないため、身体への負担が少ないというメリットがあります。入院の必要がない場合が多く、日帰りで治療を受けられる場合もあります。

再生医療におけるメリットとデメリット

再生医療の最大のメリットは、自分の細胞を使うため、拒絶反応や副作用のリスクが低いと考えられることです

また、前述のように身体への負担が少ないため、高齢の方や持病のある方でも比較的安心して治療を受けることができます。

一方で、デメリットもあります。まず、費用が高額になりやすいという点です。再生医療は自由診療のため、健康保険が適用されず、全額自己負担となります。治療費は、使用する細胞の種類や治療回数などによって異なりますが、数十万円から数百万円かかることもあります。

また、効果には個人差があり、必ずしも症状が改善するとは限りません。軽度から中等度の変形性膝関節症患者において、PRP注射は生理食塩水プラセボ注射と比較して、12ヶ月後の症状または関節構造に有意な差をもたらさないという研究結果もあります。

さらに、再生医療はまだ新しい治療法であるため、長期的な効果や安全性については十分に解明されていない部分もあります。

各治療法の安全性とリスクの評価

それぞれの治療法にはメリットとデメリット、そしてリスクが伴います。

PRP療法では、注射部位の痛みや腫れ、内出血などが起こることがあります。

幹細胞療法では、注射部位の痛みや腫れのほか、感染症やアレルギー反応のリスクも考えられます。

脂肪由来幹細胞を用いる場合、脂肪塞栓症(脂肪が血管を詰まらせること)のリスクも稀にあります。人工関節手術は、感染症、血栓症、神経損傷、人工関節の緩みなどが起こる可能性があり、より大きなリスクを伴います。

人工関節置換術では、従来の中立な機械的アライメントから個別化されたアライメント技術への移行が進んでいますが、段階的なアプローチで慎重に進めるべきとされています。

ご自身の症状やライフスタイル、そして費用などを考慮し、医師とよく相談しながら最適な治療法を選択することが重要です。

まとめ

変形性膝関節症 再生医療

変形性膝関節症の治療として注目されている再生医療について解説しました。

PRP療法、間葉系幹細胞療法、骨髄幹細胞療法、脂肪由来自己幹細胞療法など、様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。

再生医療は自身の細胞を使うため拒絶反応のリスクが低く、身体への負担も少ない治療法です。一方で、費用が高額で、効果に個人差があり、長期的な効果や安全性は未解明な部分もあります。

ヒアルロン酸注射などの保存療法や人工関節手術といった他の治療法と比較し、メリット・デメリット、費用、リスクなどを理解した上で、医師と相談し、ご自身に合った治療法を選択することが大切です。

膝の痛みを我慢せず、快適な生活を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。

参考文献

  1. Yunus MHM, Nordin A, Kamal H. “Pathophysiological Perspective of Osteoarthritis.” Medicina (Kaunas, Lithuania) 56, no. 11 (2020): .
  2. Karasavvidis T, Pagan Moldenhauer CA, Haddad FS, Hirschmann MT, Pagnano MW, Vigdorchik JM. “Current Concepts in Alignment in Total Knee Arthroplasty.” The Journal of arthroplasty 38, no. 7 Suppl 2 (2023): S29-S37.
  3. Bennell KL, Paterson KL, Metcalf BR, Duong V, Eyles J, Kasza J, Wang Y, Cicuttini F, Buchbinder R, Forbes A, Harris A, Yu SP, Connell D, Linklater J, Wang BH, Oo WM, Hunter DJ. “Effect of Intra-articular Platelet-Rich Plasma vs Placebo Injection on Pain and Medial Tibial Cartilage Volume in Patients With Knee Osteoarthritis: The RESTORE Randomized Clinical Trial.” JAMA 326, no. 20 (2021): 2021-2030.

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