変形性膝関節症の治療法にはいくつかありますが、今回は直接膝に薬液を届ける注射治療について解説します。
注射治療には大きく分けて3つの種類があり、それぞれに特徴があります。
この記事では、ヒアルロン酸注射をはじめ、炎症を抑えるステロイド注射、そして患者さん自身の血液から作られたPRP注射の効果と特徴を比較解説します。
ご自身の症状や希望に合った治療法を選択するために、それぞれの注射の特徴を理解し、快適な生活への一歩を踏み出しましょう。
目次
変形性膝関節症の注射治療の種類と特徴3選

膝の痛み、つらいですよね。特に、立ち上がったり、階段を上り下りしたりするときに痛みが強くなって、日常生活にも支障が出てきてしまうと、気持ちも滅入ってしまいますよね。
変形性膝関節症の治療法はいくつかありますが、今回は注射治療について、より詳しくご説明します。
大きく分けて3つの種類があり、それぞれに特徴があります。ご自身の症状や希望に合った治療法を選択するために、それぞれの注射の特徴を理解しておきましょう。
ヒアルロン酸注射:効果と持続期間、費用と副作用
ヒアルロン酸注射は、関節の動きを滑らかにする注射です。
皆さんは、関節の中に「関節液」という潤滑油のような液体があることをご存知でしょうか?この関節液の主成分がヒアルロン酸です。健康な膝では、このヒアルロン酸がクッションの役割を果たし、骨同士がスムーズに動くようサポートしています。
しかし、加齢や繰り返しの負担によって、関節軟骨がすり減ってしまう変形性膝関節症になると、このヒアルロン酸が減少してしまいます。すると、関節の動きが悪くなり、痛みや炎症が生じるのです。
ヒアルロン酸注射は、この減少したヒアルロン酸を補うことで、まるで自転車のチェーンに油を差すように、関節の動きをスムーズにし、痛みを和らげる効果が期待できます。
効果の持続期間は個人差がありますが、一般的には1ヶ月程度です。
週に1回、3~5回程度の注射を行い、その後は痛みの状況に応じて2~4週間に1回程度の頻度で継続することもあります。
ヒアルロン酸注射は初期の変形性膝関節症に有効とされています。軟骨がすり減ってしまっている進行期の変形性膝関節症には、あまり効果がない場合もあります。
費用は自由診療のため、クリニックによって異なります。副作用としては、注射部位の痛みや腫れなどが稀に起こることがありますが、比較的安全性が高い治療法です。
ステロイド注射:効果と持続期間、費用と副作用
ステロイド注射は、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が非常に強い注射です。
まるで、火災現場に駆けつける消防車のように、炎症という火事を素早く鎮火してくれるイメージです。関節に水が溜まっている場合や、強い痛みがある場合に特に有効です。ステロイドは、体内で炎症を起こす物質の生成を抑える働きがあります。
効果は2~4週間程度持続します。ステロイド注射は保険適用です。
ただし、ステロイドは強力な薬であるがゆえに、頻回に注射すると軟骨や骨を弱める可能性や、血糖値の上昇、免疫力の低下などの副作用のリスクも懸念されます。
そのため、頻回に注射することは避けなければなりません。医師の指示に従って、適切な間隔で注射を受けるようにしましょう。
▼変形性膝関節症に対するサプリメントの服用について、以下もご参考ください。
PRP注射:効果と持続期間、費用と副作用
PRP注射は、患者さん自身の血液から作られた特別な注射です。
PRPとは、Platelet-Rich Plasma(多血小板血漿)の略で、血液中の血小板を濃縮したものです。血小板には、組織の修復を促す成長因子が豊富に含まれており、例えるなら、傷ついた組織を修復する「工事現場の監督」のような役割を果たします。
PRP注射はこの成長因子を利用して、炎症を抑え、痛みを和らげ、組織の修復を促進する効果が期待できる治療法です。
2020年に発表されたメタ分析では、PRP注射はヒアルロン酸注射と比較して、短期的な機能回復において効果的であることが示唆されています。
PRP注射は、ヒアルロン酸注射よりも持続的な効果が期待でき、進行期の変形性膝関節症にも効果的とされています。
費用は自由診療のため、クリニックによって異なります。
副作用については、まだ十分に解明されていない部分もありますが、これまでの報告では重篤な副作用はほとんど見られていません。
注射治療の選び方と注意点

変形性膝関節症における注射治療は、膝の痛みに対して比較的早く効果を実感できる治療法の一つです。しかし、注射治療にも種類があり、それぞれに特徴があります。
ご自身の状態に合った治療法を選ぶことが、痛みの軽減と快適な生活への近道です。
どの注射治療が自分に合っているか?医師に相談
変形性膝関節症の注射治療は、前述の通り、「ヒアルロン酸注射」「ステロイド注射」「PRP注射」の3種類があります。それぞれ効果の持続期間や費用、副作用などが異なるため、どの治療法が最適かは、医師との相談によって決定されます。
例えば、初期の変形性膝関節症で痛みが軽い場合は、ヒアルロン酸注射が適しているかもしれません。これは、関節内の潤滑油を補うことで、関節の動きを滑らかにし、痛みを和らげる治療法です。
一方、強い痛みや関節に水が溜まっている場合は、ステロイド注射が効果的です。ステロイドは強力な抗炎症作用を持つため、炎症を抑え、痛みを素早く軽減します。しかし、ステロイド注射は軟骨への影響が懸念されるため、使用頻度には注意が必要です。
痛みが慢性的に続く場合や、他の注射治療の効果が不十分な場合は、PRP注射が選択肢となります。これは、患者さん自身の血液から作られた、組織の修復を促進する成分を注射する治療法です。

最適な治療法をご提案できるように
医師は患者さんの年齢、症状の程度、過去の治療歴、生活習慣などを総合的に判断し、最適な治療法を提案します。
それぞれの治療法のメリット・デメリット、費用、副作用などを丁寧に説明し、患者さんが納得した上で治療を受けられるようサポートしますので、安心してご相談ください。
注射治療が効かない場合の対処法
注射治療を受けても効果が実感できない、あるいは効果が持続しない場合は、他の治療法を検討する必要があります。
例えば、ヒアルロン酸注射の効果が薄れてきた場合は、PRP注射を試してみるのも一つの方法です。
PRP注射は、ヒアルロン酸注射よりも効果の持続期間が長い傾向があり、進行した変形性膝関節症にも効果が期待できます。
注射による治療で効果がない場合は、手術療法を検討する必要も出てきます。
人工関節置換術は、最終手段として効果的な治療法となります。また、日常生活の工夫も重要です。適度な運動、体重管理、膝への負担を軽減するための装具の使用なども、症状の改善に役立ちます。
医師や理学療法士と相談しながら、ご自身に合った方法を見つけていきましょう。
再生医療・幹細胞治療などの最新治療
近年、再生医療や幹細胞治療が注目されています。これらの治療法は、損傷した組織の修復・再生を目指しており、変形性膝関節症の新たな治療法として期待されています。
PRP注射も再生医療の一種です。患者さん自身の血液から採取した血小板には、組織の修復を促進する成長因子が豊富に含まれています。これを関節内に注射することで、炎症を抑え、痛みを軽減する効果が期待できます。
培養幹細胞治療は、患者さん自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、関節内に注射する治療法です。幹細胞は様々な細胞に分化する能力を持つため、軟骨の再生促進効果が期待されています。
しかし、これらの治療法は、まだ研究段階であり、効果や安全性については十分に確立されていない部分もあります。
また、自由診療となるため、費用が高額になる傾向があります。治療を受ける際には、医師とよく相談し、メリット・デメリットを十分に理解した上で判断することが大切です。
まとめ

変形性膝関節症の注射治療について、ヒアルロン酸、ステロイド、PRPの3種類を解説しました。それぞれの治療法は特徴があり、痛みや症状、進行度によって最適な治療法が異なります。どの注射が自分に合っているか悩んでいる方は、まずは医師に相談してみましょう。注射治療以外にも、日常生活の改善や、再生医療、手術療法など様々な選択肢があります。諦めずに、ご自身に合った治療法を見つけて、快適な生活を取り戻しましょう。
参考文献
- Tang JZ, Nie MJ, Zhao JZ, Zhang GC, Zhang Q, Wang B. Platelet-rich plasma versus hyaluronic acid in the treatment of knee osteoarthritis: a meta-analysis. Journal of orthopaedic surgery and research 15, no. 1 (2020): 403.
- Bennell KL, Paterson KL, Metcalf BR, Duong V, Eyles J, Kasza J, Wang Y, Cicuttini F, Buchbinder R, Forbes A, Harris A, Yu SP, Connell D, Linklater J, Wang BH, Oo WM, Hunter DJ. Effect of Intra-articular Platelet-Rich Plasma vs Placebo Injection on Pain and Medial Tibial Cartilage Volume in Patients With Knee Osteoarthritis: The RESTORE Randomized Clinical Trial. JAMA 326, no. 20 (2021): 2021-2030.

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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