変形性膝関節症の予防と改善には、日常生活での適切な習慣づけが大切です。特に、正しい姿勢での歩行や、膝に負担をかけない動作を意識することで、症状の進行を抑えることができます。
また、定期的な運動やストレッチ、適切な体重管理も重要な要素となってきます。過度な負担を避けながら、筋力を維持・向上させることで、膝関節をしっかりと支えることができるでしょう。
今回は、変形性膝関節症の日常生活でできる予防や改善のための具体的な対策、治療法までを現役整形外科医が解説していきます。
医師や理学療法士に相談しながら、自分に合った予防・改善方法を見つけていきましょう。
目次
変形性膝関節症の予防と改善策

変形性膝関節症の予防と改善には、日常生活での適切な習慣と運動、体重管理を組み合わせることが重要です。膝関節への負担を軽減しながら、支える筋肉を強化することで、長期的な関節の健康を維持しましょう。
ここでは、痛みの軽減だけでなく、生活の質を高め、活動的な毎日を送るための具体的な対策をご紹介します。
日常生活での予防習慣
変形性膝関節症を予防し、症状を改善するためには、日常生活での心がけが非常に重要です。適切な生活習慣を身につけることで、膝への負担を軽減し、関節の健康を維持することができます。
まず、正しい姿勢を意識することから始めましょう。背筋を伸ばし、膝を真っ直ぐに保って歩くことで、関節への負担が分散されます。また、長時間の同じ姿勢は避け、1時間に1回程度は軽く膝を動かすことをお勧めします。
具体的な予防習慣として、以下のポイントを意識した生活を心がけてください。
- 階段の上り下りは手すりを使用し、一段ずつゆっくりと行う
- 正座や深いしゃがみ込みは避け、椅子やソファーを活用する
- 重い荷物は両手に分散して持つ
膝を守るための工夫として、家の中での生活環境を整えることも大切です。和式トイレを洋式に変更したり、床からの立ち上がりが楽になるよう、適度な高さの椅子やベッドを使用したりするのもよいでしょう。
靴選びも重要なポイントです。クッション性が高く、足のアーチをしっかりと支える靴を選ぶことで、歩行時の衝撃を和らげることができます。特にヒールの高い靴は膝への負担が大きいため、日常的な使用は控えめにしましょう。
このように、日々の小さな心がけの積み重ねが、膝関節の健康維持につながります。無理のない範囲で、できることから始めていきましょう。ただし、すでに痛みがある場合は、まず医師に相談することをお勧めします。
運動・ストレッチの効果的な方法
変形性膝関節症の予防と症状改善には、適切な運動とストレッチが効果的です。ただし、いきなり強い運動を始めると逆効果になる可能性があるため、まずは軽いストレッチから始めることが重要です。
膝関節を守るためには、膝周辺の筋肉を強化することが大切です。特に大腿四頭筋と太もも裏のハムストリングスを鍛えることで、膝への負担を軽減できます。これらの筋肉は、膝関節の安定性を高め、衝撃を吸収する役割を担っています。
▼効果的な運動方法は以下でもご紹介しています。ぜひご参考にされてください。
運動を行う際は、以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 1つ目は、痛みを感じない範囲で行うこと。
- 2つ目は、ゆっくりと丁寧に動作を行うこと。
- 3つ目は、毎日続けることです。
水中運動も膝に優しい運動の一つです。水の浮力によって体重が軽くなるため、膝への負担が少なく運動することができます。水中ウォーキングや水中体操から始めるのがおすすめです。
▼自宅でできる簡単なストレッチ方法をご紹介しています。併せてお読みください。
なお、運動を始める前に、必ず軽いウォーミングアップを行い、関節を温めることが大切です。また、運動後は必ずクールダウンを行い、急な負担がかからないよう注意しましょう。
もし運動中に強い痛みを感じた場合は、すぐに中止して医師に相談することをお勧めします。個人の状態に合わせた適切な運動メニューを作成してもらうことで、より安全で効果的なリハビリが可能になります。
体重管理の重要性
変形性膝関節症の予防と改善において、体重管理は最も重要な要素の一つです。過剰な体重は膝関節に大きな負担をかけ、症状を悪化させる原因となります。
実は、歩行時には体重の2〜3倍もの負荷が膝にかかるといわれています。そのため、体重が1kg増えるだけでも、膝への負担は2〜3kg増加することになります。逆に考えれば、体重を減らすことで膝への負担を大きく軽減できる可能性があるのです。
特に肥満の方は、体重管理が症状改善の鍵となります。標準体重を目指して減量することで、膝への負担が軽減され、痛みの緩和が期待できます。理想の体重は、身長から算出できる標準体重(BMI 22)を目安にしましょう。
適切な体重管理のためには、バランスの良い食事と適度な運動が重要です。急激な体重減少は筋力低下を招く可能性があるため、ゆっくりと時間をかけて減量することをお勧めします。
具体的な目標として、1週間に0.5〜1kgの減量ペースが適切とされています。食事は、タンパク質をしっかり摂取しながら、過剰なカロリー摂取を控えることが大切です。また、膝に負担の少ない有酸素運動を組み合わせることで、より効果的な減量が可能になるでしょう。
▼変形性膝関節症の体重管理について、詳しくは以下もご参考にされてください。
体重管理は一時的なものではなく、継続的な取り組みが必要です。定期的な体重測定を行い、増加傾向が見られた場合は早めに対策を講じることが重要でしょう。

若い時期からの膝への意識
私がこれまでの臨床経験で強く感じているのは、変形性膝関節症の予防は若い時期から始めるべきだということです。多くの患者さんは膝に症状が出てから受診しますが、その時にはすでに軟骨の摩耗が進んでいることがほとんどです。
特に印象的だったのは、40代の姉妹の例で、スポーツ指導者だった姉は10代からの膝の使い方や保護の意識が高く、同じスポーツ歴を持つ妹よりも膝の状態が格段に良かったのです。
私は学校での講演や若いアスリートの診察時には必ず「膝は一生使う大切な関節。将来のために今からケアすることが重要」と伝えるようにしています。膝のトラブルは突然始まるわけではなく、長年の蓄積で生じるものだという認識が広まれば、予防への意識も高まると感じています。
治療法の選択肢と受診のタイミング

変形性膝関節症の治療は、症状の程度や患者さんの生活スタイルによって最適な方法が異なります。初期段階では運動療法や生活指導を中心とした保存療法から始め、痛みが強い場合は消炎鎮痛剤やヒアルロン酸注入などの治療を組み合わせていきましょう。
膝の痛みが日常生活に支障をきたすようになった場合は、整形外科の専門医への相談が必要です。
特に、3か月以上続く痛みがある場合や、膝に水がたまる、正座ができないなどの症状がみられる時は、早めの受診をおすすめします。また最近では、幹細胞治療などの再生医療も新たな選択肢として注目を集めています。
症状の程度に応じた治療方法
変形性膝関節症の治療は、症状の重症度によって段階的に進めていくことが効果的です。軽症から重症まで、それぞれの状態に合わせた適切な治療法を選択することで、症状の改善や進行の抑制が期待できます。
症状の程度は大きく3段階に分けられ、各段階で推奨される治療法が異なります。
| 症状の程度 | 主な症状 | 推奨される治療法 |
|---|---|---|
| 軽症 | 軽い痛みや違和感 | 生活指導・運動療法・温熱療法 |
| 中等症 | 動作時の痛みが増加 | 投薬治療・ヒアルロン酸注入・装具療法 |
| 重症 | 安静時も痛む・変形が進行 | 手術療法(人工関節置換術など) |
軽症の段階では、生活習慣の改善と適度な運動療法を中心とした保存療法から開始します。
この時期の治療では、膝への負担を軽減しながら筋力を維持することが重要となってきます。
中等症になると、痛みのコントロールが必要になります。
消炎鎮痛剤の内服や外用薬の使用、関節内へのヒアルロン酸注入などの治療を組み合わせていきましょう。また、必要に応じて装具を使用することで、膝への負担を分散させることができます。
重症化して日常生活に著しい支障が出る場合は、手術療法を検討します。
人工関節置換術は、変形した関節を人工物に置き換えることで痛みを軽減し、膝の機能を改善する治療法です。近年は手術手技の進歩により、より安全で確実な治療が可能になっています。
なお、どの段階においても、医師との相談のもと、患者さんの生活スタイルや年齢、全身状態などを考慮して最適な治療法を選択することが大切です。また、治療と並行して、適切な生活習慣の維持や体重管理にも取り組むことで、より良い治療効果が期待できるでしょう。
専門医への相談が必要な症状
変形性膝関節症の症状に気づいたら、すぐに専門医への相談をお勧めします。特に以下のような症状が現れた場合は、早めの受診が必要です。
3か月以上続く膝の痛みや違和感がある場合は、整形外科の専門医による診察を受けましょう。痛みの程度や性質によって適切な治療法が異なるため、医師による正確な診断が重要になってきます。
また、以下のような症状がある場合も、専門医への相談が必要な目安となります。
- 膝に水がたまった感覚がある
- 正座が困難になった
- 膝が腫れている
- 夜間痛で眠れない
- 歩行時に膝がガクガクする
特に注意が必要なのは、安静にしていても痛みが続く場合です。これは症状が進行している可能性を示唆しているため、早急な対応が求められます。
膝の痛みは年齢とともに現れる自然な症状だと思い込んで、受診を躊躇する方も少なくありません。しかし、適切な時期に治療を開始することで、症状の進行を抑制できる可能性が高まります。
また、痛みの改善を目的に市販の湿布や鎮痛剤で自己対処を続けることは避けましょう。一時的な痛みの緩和は得られても、原因となる関節の状態は悪化している可能性があります。
医師は問診や検査を通じて、患者さんの症状や生活環境を詳しく確認し、最適な治療プランを提案します。診察時には、いつから症状が始まったか、どんな動作で痛みを感じるかなど、具体的に伝えることが大切です。
早期発見・早期治療により、手術を必要とせずに症状をコントロールできる可能性も高まります。不安な症状がある場合は、ためらわずに専門医に相談することをお勧めします。
再生医療を含む最新の治療選択肢
変形性膝関節症の治療において、再生医療は新たな可能性を開く治療選択肢として注目を集めています。従来の治療法では改善が難しかった症例でも、再生医療によって症状の改善が期待できる場合があります。
最新の治療法として、幹細胞を用いた治療が特に注目されています。自己の脂肪組織や骨髄から採取した間葉系幹細胞を活用し、損傷した軟骨の再生を促すことができます。この治療法は、体への負担が比較的少なく、回復も早いという特徴があります。
また、多血小板血漿(PRP)療法も新しい治療選択肢の一つです。自身の血液から抽出した成長因子を含む血漿を患部に注入することで、組織の修復や炎症の抑制を促します。この治療は、軽度から中等度の症状に対して効果が期待できます。
さらに、軟骨再生を目的とした新しい薬剤の開発も進んでいます。これまでの治療法と組み合わせることで、より効果的な症状の改善が期待できるようになってきました。
▼変形性膝関節症に対する再生医療の種類や特徴について、詳しくは以下をご参考ください。
医療機関を選ぶ際は、治療実績や安全性について十分に確認し、専門医とよく相談した上で治療法を決定することが重要です。また、従来の治療法と組み合わせることで、より効果的な治療が期待できる場合もあります。
まとめ

変形性膝関節の予防には、適度な運動や体重管理が効果的です。特に、膝に負担をかけない水中ウォーキングやストレッチなどがおすすめできます。また、正しい姿勢で歩くことや、膝に負担のかかる動作を避けることも大切な予防習慣となります。
治療については、症状の程度に応じて保存療法から手術療法、最新治療の再生医療まで、さまざまな選択肢があります。違和感や痛みが気になり始めたら、整形外科の専門医に相談してみましょう。
変形性膝関節症は、適切な予防と早期治療により、進行を抑えることができる病気です。日常生活での注意点を意識し、定期的な自己チェックを行うことで、いつまでも健康的な膝関節を保つことができます。
参考文献
- 日本整形外科学会・日本膝関節学会(2023)『変形性膝関節症診療ガイドライン』日本整形外科学会雑誌, 97(10), pp.742-755.
- 武藤芳照, 黒澤尚(2024)『高齢者の関節疾患と運動療法 – 予防からリハビリテーションまで』医学書院, 東京.

-情報提供医師
松本 和樹 Kazuki Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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