膝の痛み、特に変形性膝関節症と診断された方は、将来への不安を抱え、手術や薬への抵抗感を持つ方も少なくないでしょう。
過度な運動やスポーツでの負荷、加齢によって一度すり減った軟骨は、元に戻らないという現実に、不安は募るばかりかもしれません。
この記事では、そんな不安を抱えるあなたのために、変形性膝関節症に対する整骨院での治療の効果と限界を、整形外科専門医の立場から解説します。
痛みを和らげ、日常生活を楽にする方法を探している方、ぜひこの記事を読み進めて、ご自身の症状改善のヒントを見つけてください。
目次
変形性膝関節症における整骨院の効果と限界

「膝が痛い…病院に行ったほうが良いのだろうか?」と悩んでいる方も多いと思います。
特に変形性膝関節症と診断された方は、将来への不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。できれば手術は避けたい、薬にも頼りたくない…そう思っている方もいるかもしれません。
この記事では、変形性膝関節症に対して、整骨院や鍼灸院での治療がどのような効果と限界を持っているのか、整形外科専門医の立場から、わかりやすく解説します。
整骨院で期待できる効果とは?
まず、知っておいていただきたいのは、整骨院では、変形性膝関節症の根本的な治療、つまりすり減ってしまった軟骨や骨の変形を、元通りにすることはできないということです。
変形性膝関節症は、骨と骨の間にあるクッション材、軟骨がすり減ってしまう病気です。残念ながら、一度すり減ってしまった軟骨を再生させることは、現在の保険医療では不可能です。
しかし、だからといって諦める必要はありません。整骨院や鍼灸院では、痛みを和らげたり、膝の動きを良くしたりといった効果は期待できます。痛みが軽くなれば、日常生活も楽になりますし、気持ちも前向きになりますよね。
痛みの軽減効果
整骨院では、マッサージや電気治療、温熱療法などで、膝周辺の筋肉の緊張をほぐし、血行を良くすることで痛みを軽減する効果が期待できます。
例えば温熱療法は、膝関節周囲の組織に熱を与えることで血管を拡張させ、血液循環を促進します。これにより、痛みの原因となる炎症性物質や老廃物の除去が進み、同時に酸素や栄養素の供給が増加します。特に変形性膝関節症では、温熱による筋肉の弛緩効果で関節周囲の過剰な筋緊張が和らぎ、関節への圧力が軽減されます。また熱刺激は痛みの感覚を伝える神経の興奮を一時的に抑制する「ゲートコントロール理論」の効果も期待できます。
関節可動域の改善効果
変形性膝関節症が進むと、膝が曲げにくくなったり、伸ばしにくくなったりします。「階段の上り下りがつらい」「正座ができない」といった悩みを抱えている方もいるでしょう。
整骨院では、関節周りの筋肉をほぐしたり、ストレッチをすることで、関節の動きをスムーズにする効果が期待できます。
鍼灸でも同様の効果が期待できます。関節の動きがスムーズになることで、日常生活での動作が楽になる場合もあります。
その他の身体機能への効果
変形性膝関節症は、膝の痛みや腫れだけでなく、全身のバランスが悪くなったり、歩くのがつらくなったりといった影響を及ぼすこともあります。
例えば、膝をかばって歩くことで、腰や背中にも負担がかかり、痛みが出てしまうこともあります。
整骨院では、全身の状態をみてその人に合ったメニューを組み立て、バランスを整えたり、歩き方を改善するためのアドバイスを受けることもできます。
整骨院と鍼灸院、どちらが変形性膝関節症に効果的?
「整骨院と鍼灸院、どちらが良いの?」と迷う方もいるかもしれません。どちらにもそれぞれの良さがあり、患者さんにとって最適な治療法は、症状の程度や生活スタイル、そして治療に対する考え方などによって異なります。
整骨院は、マッサージやストレッチなど、比較的体に負担の少ない施術が中心です。「体に触れられるのが好き」「リラックスしたい」という方には、整骨院が向いているかもしれません。
鍼灸は、鍼やお灸を使うことで、より直接的に体の内側から働きかけることができます。「薬に頼りたくない」「自然治癒力を高めたい」という方には、鍼灸が向いているかもしれません。
大切なのは、ご自身の状態に合った治療院を選ぶことです。まずは、それぞれの治療院の特徴を理解し、ご自身の希望や症状に合わせて、最適な治療法を選択しましょう。

整骨院での施術と自己管理の組み合わせ
変形性膝関節症の管理において、整骨院での施術だけに頼るのではなく、患者さん自身による自己管理とのバランスが重要です。整骨院で受動的な施術だけを受け、自宅でのケアを怠る患者さんよりも、整骨院での指導を自宅で継続して実践する患者さんの方が長期的な改善が見られます。
50代の女性は週1回の整骨院通院に加えて、整骨院で教わったストレッチとテーピング方法を自宅で実践することで、半年間で膝の痛みが大幅に軽減しました。私は診察時に「整骨院は魔法の治療所ではなく、自己管理を学ぶ場でもある」という考え方を伝え、通院と自己管理のバランスを意識するよう指導しています。
変形性膝関節症の治療法を徹底比較!整形外科・整骨院・鍼灸院

変形性膝関節症の治療院には整形外科、整骨院、鍼灸院などがあり、どこに行けば良いのか迷ってしまう方も多いと思います。
そこで今回は、それぞれの治療院の特徴や治療法、費用などを整形外科専門医の立場から詳しくご説明します。
自分に合った治療院を見つけるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
各治療院の特徴と役割
まず、それぞれの治療院の特徴と役割について簡単に説明します。
| 治療院 | 特徴 | 役割 |
|---|---|---|
| 整形外科 | 医師による診察、レントゲン検査、MRI検査など | 薬物療法、注射療法、手術、リハビリ指導など |
| 整骨院 | 国家資格である柔道整復師による施術 | マッサージ、電気治療、運動療法など |
| 鍼灸院 | 国家資格であるはり師、きゅう師による施術 | 鍼(はり)、灸(きゅう)治療など |
整形外科では、医師がレントゲン検査やMRI検査などを行い、変形性膝関節症の進行度合いを正確に診断します。痛みの原因を特定し、医学的根拠に基づいた治療を提供します。
整骨院と鍼灸院は、国家資格を持った施術者が、それぞれ専門的な技術を用いて施術を行います。
整形外科での治療法
整形外科では、変形性膝関節症の進行度合いに応じて、さまざまな治療法を組み合わせます。
初期の段階では、痛みや炎症を抑えるための薬物療法や、関節内のヒアルロン酸を補うヒアルロン酸注射、膝関節の動きをサポートする装具療法、そして太ももの筋肉を鍛える運動療法などを行います。
中等度まで進行した場合も、基本的には保存療法が中心となります。保存療法とは、手術以外の治療法という意味です。薬物療法や注射療法に加えて、日常生活での膝への負担を軽減するための指導や、理学療法士によるリハビリテーションなども行います。
重症例では、人工関節置換術などの手術が必要になる場合もあります。人工関節置換術とは、傷んでしまった膝関節を人工関節に取り替える手術です。
▼変形性膝関節症の手術のタイミングについてお悩みの方は、以下も併せてお読みください。
整骨院での治療法
整骨院では、マッサージや電気治療、テーピングなどで、膝周辺の筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する施術を行います。
治療法のメリット・デメリット
それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあります。どの治療法が最適かは、個々の患者さんの状態や希望によって異なります。
| 治療法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 整形外科 | 医学的根拠に基づいた治療を受けられる、幅広い治療 options がある | 手術が必要な場合もある、待ち時間が長い場合がある |
| 整骨院 | 身体への負担が少ない、リラックス効果が期待できる | 健康保険適用外の場合が多い、効果に個人差がある |
科学的根拠に基づいた治療を行う整形外科では、重症例にも対応できます。
整骨院は、比較的体に負担の少ない施術が中心です。「体に触れられるのが好き」「リラックスしたい」という方には、この治療院が向いているかもしれません。
治療費用の目安
治療費用は、治療院や治療内容によって異なります。
整形外科は健康保険が適用され、3割負担で初診料が約1,000円、再診料が約500円、レントゲン検査が約1,000円程度です。
整骨院は健康保険適用外の場合が多く、1回3,000~5,000円程度が相場です。
また、交通事故での受傷が原因の場合は、怪我の内容によって料金や健康保険の適用が異なります。初めて予約をする際は、予め電話で問い合わせることをおすすめします。
自分にあった治療院の選び方
どの治療院を選ぶかは、症状の重さやご自身の希望によって異なります。まずは整形外科を受診し、医師の診断を受けてから、他の治療院との併用を検討するのが良いでしょう。
また、友人からの紹介や、整体院へのアクセスの良さなども参考にしてみるのも良いかも知れません。
ご自身の症状や希望に合った治療法を選択することが大切です。
セカンドオピニオンの重要性
変形性膝関節症の治療方針に迷う場合は、セカンドオピニオンを受けてみるのも良いでしょう。他の医師の意見を聞くことで、より納得のいく治療法を選択できるはずです。
まとめ

この記事では、変形性膝関節症に対する整骨院での治療効果と限界について解説しました。整骨院では、すり減った軟骨を再生することはできませんが、マッサージや鍼灸治療によって痛みを軽減したり、関節の動きをスムーズにする効果が期待できます。
大切なのは、ご自身の症状や希望に合った治療法を選択することです。それぞれの治療院の特徴を理解し、ご自身の状態に合った治療院を選びましょう。迷った時は、整形外科で医師に相談してみるのも良いでしょう。膝の痛みを和らげ、快適な日常生活を送るためにも、この記事が参考になれば幸いです。
参考文献
- Flynn DM. “Chronic Musculoskeletal Pain: Nonpharmacologic, Noninvasive Treatments.” American family physician 102, no. 8 (2020): 465-477.
- Wang M, Liu W, Ge J and Liu S. “The immunomodulatory mechanisms for acupuncture practice.” Frontiers in immunology 14, no. (2023): 1147718.

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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