膝のつらい痛み、特に変形性膝関節症と診断されると、将来への不安や悩みも大きくなるでしょう。手術は避けたい、少しでも痛みを軽くしたい、そんな切実な思いからサプリメントに頼りたい気持ち、よく分かります。
変形性膝関節症のサプリメント市場は拡大しており、様々な成分が注目されていますが、本当に効果があるのでしょうか?実は、グルコサミンやコンドロイチンの有効性については、科学的な根拠がまだ不十分であることが研究で示唆されています。
この記事では、変形性膝関節症に用いられる代表的なサプリメント成分の効果や作用とメカニズム、そしてサプリメント選びの注意点について、整形外科医師の視点から分かりやすく解説します。
ご自身の状況と照らし合わせながら、適切な情報を得て、膝の痛みと賢く付き合っていきましょう。
目次
変形性膝関節症におけるサプリメントの効果とメカニズム

膝の痛み、つらいですよね。「少しでも痛みを軽くしたい」「できれば手術は避けたい」…そう思ってサプリメントに頼りたい気持ち、私も医師としてよく分かります。
そこで今回は、変形性膝関節症によく使われるサプリメントの成分について、その働きや効果を分かりやすくご説明します。サプリメントを選ぶ際の判断材料として、ぜひお役立てください。
グルコサミン:軟骨の構成成分
グルコサミンは、軟骨の材料となる成分です。軟骨は骨と骨の間にあるクッションのような組織で、膝関節がスムーズに動くために必要不可欠です。この軟骨がすり減ってしまうことが、変形性膝関節症の大きな原因の一つです。
年齢を重ねるとともに、体内のグルコサミンの量は減ってしまい、軟骨がすり減りやすくなります。カニやエビなどの甲殻類に多く含まれているグルコサミンは、軟骨の主成分であるプロテオグリカンやヒアルロン酸の合成を促すと考えられています。
そこで、グルコサミンをサプリメントで補うことで、軟骨のすり減りを抑え、変形性膝関節症の予防や症状緩和に繋がる可能性があるとも言われています。しかし、残念ながら、口から摂取したグルコサミンは胃や腸で分解されてしまい、軟骨まで届きにくいことが分かっています。
2008年の研究論文でも、グルコサミンが変形性関節症の治療に有効かどうかは、まだはっきりとした結論が出ていないとされています。
コンドロイチン:軟骨の保水性と弾力性を維持
コンドロイチンも、グルコサミンと同様に軟骨を作るのに欠かせない成分です。コンドロイチンは、軟骨に水分を保ち、弾力性を保つ働きをしています。年齢とともに体内のコンドロイチンの量も減少し、軟骨がもろくなってしまいます。牛や豚の軟骨や干しエビなどに多く含まれています。
コンドロイチンも、グルコサミンと同様に、サプリメントとして摂取しても消化の過程で分解されてしまい、軟骨には届きにくいと考えられています。
2019年の研究では、コンドロイチン硫酸の品質管理の重要性が指摘されています。牛や豚、魚など、様々な動物の組織から抽出されるため、サプリメントによって含まれるコンドロイチンの種類や量が異なり、効果にもばらつきがある可能性があります。
プロテオグリカン:軟骨の強度と柔軟性をサポート
プロテオグリカンは、軟骨の強度と柔軟性を保つために重要な成分です。プロテオグリカンはスポンジのように水分をたくさん含むことができ、これによって軟骨は衝撃を吸収することができます。プロテオグリカンも、加齢とともに減少していきます。サプリメントで補うよりも、適度な運動によって血行を良くすることで、プロテオグリカンの産生を促す方が効果的です。
1984年の研究では、プロテオグリカンと同じ仲間の物質が細胞の増殖や分化に関わっていることが示唆されています。細胞の増殖や分化とは、簡単に言うと細胞が分裂して増えていくこと、そして特定の機能を持つ細胞に変化していくことです。
ヒアルロン酸注射との効果の違い
ヒアルロン酸は関節液に含まれる成分で、関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割をしています。ヒアルロン酸は関節液の粘りを高め、関節にかかる衝撃を吸収するのに役立っています。
変形性膝関節症の治療として、ヒアルロン酸を関節内に直接注射する治療法があります。これは、サプリメントで摂取するよりも直接的に効果を発揮する方法です。
▼変形性膝関節症に対しての注射による治療を解説しています。併せてお読みください。
サプリメントのプラセボ効果よる心理的効果
プラセボ効果とは、効果がない薬やサプリメントを飲んでも、効果があると期待して信じることで症状が改善する現象のことです。サプリメントの効果の一部は、このプラセボ効果によるものと考えられています。
実際に、グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントの効果は、プラセボ効果とほぼ変わらないという研究結果も報告されています。

サプリメントへの過度な期待への対応
私の診療で難しいと感じるのは、サプリメントに過度の期待を持つ患者さんへの対応です。「薬は使いたくない」「手術はしたくない」という思いから、サプリメントだけで改善を期待される方が少なくありません。
70代の男性患者さんはすでに重度の変形性膝関節症でしたが、様々なサプリメントを試し続け、必要な治療の開始が遅れてしまいました。私はサプリメントの可能性を否定せず、同時に限界についても正直に伝えるよう心がけています。
特に「サプリメントは進行した軟骨の摩耗を元に戻すことはできない」「適切な運動や体重管理と組み合わせることが大切」ということを理解してもらうようにしています。
総合的な治療アプローチの中でサプリメントを適切に位置づけることの重要性を説明し患者さんの納得のいく治療選択につながると信じています。
サプリメントの選び方と注意点

膝の痛み、本当につらいですよね。私も医師として、患者さんからよく相談を受けます。「少しでも楽になりたい」「手術は避けたい」…そんな切実な思いから、サプリメントに頼りたい気持ち、痛いほど分かります。
様々なサプリメントが販売されている中で、どれを選べば良いのか迷ってしまうのも無理はありません。そこで今回は、変形性膝関節症のサプリメント選びで失敗しないためのポイントと注意点について、一緒に考えていきましょう。
変形性膝関節症の進行度合いに合わせた成分選択
まず知っておいていただきたいのは、変形性膝関節症の進行度合いによって、適した対処法が異なるということです。
初期の段階では、グルコサミンやコンドロイチンといったサプリメントを試してみるのも一つの選択肢かもしれません。これらの成分は、健康な軟骨を作るのに必要な材料のようなもの。しかし、進行した変形性膝関節症の場合、残念ながら、これらのサプリメントだけで劇的な改善は難しいことが多いです。
これは、グルコサミンやコンドロイチンが、口から摂取しても胃や腸で分解されてしまい、軟骨まで届きにくいという特徴があるためです。カニやエビの殻、牛や豚の軟骨などに含まれるこれらの成分ですが、サプリメントとして摂取したとしても、すり減ってしまった軟骨を直接修復する効果は限定的です。
進行した変形性膝関節症には、ヒアルロン酸を関節内に直接注射する治療や、人工関節手術など、より効果的な治療法があります。ご自身の膝の状態に合った最適な治療法を選択するために、まずは医師に相談することをお勧めします。
▼変形性膝関節症の手術については、以下も併せてお読みください。
臨床試験データに基づいた信頼できる製品を選ぶ
サプリメントを選ぶ際には、臨床試験で効果が実証されているか、信頼できる科学的データに基づいているかを確認することが重要です。残念ながら、グルコサミンやコンドロイチンに関しては、大規模な臨床試験でも明確な効果が示されていないという現実があります。
「飲んだら痛みが和らいだ」という声も耳にしますが、これはプラセボ効果、つまり「効く」と思い込むことで得られる心理的な効果である可能性が高いのです。
2008年の研究論文でも、グルコサミンが変形性関節症の治療に有効かどうかは、まだはっきりとした結論が出ていないとされています。
適切な摂取量と摂取方法を守る
サプリメントを服用する際は、必ずパッケージに記載されている摂取量と摂取方法を守ってください。
たくさん飲めば効果が高まるというわけではなく、過剰摂取は体に負担をかける可能性があります。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」とも言いますよね。
サプリメントの中には、食前や食後など、特定のタイミングで摂取することが推奨されているものもあります。正しく服用することで、効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えることができます。
医師や薬剤師に相談する
サプリメントを服用する前に、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。特に、持病がある方や他の薬を服用している方は、サプリメントとの飲み合わせによって、予期せぬ副作用が生じる可能性があります。
医師や薬剤師は、あなたの健康状態や服用している薬を考慮した上で、適切なアドバイスをくれます。自己判断でサプリメントを始めるのではなく、専門家の意見を聞くことが大切です。
副作用とアレルギー反応に注意する
サプリメントは、自然由来の成分だからといって、必ずしも安全とは限りません。体質によっては、アレルギー反応や副作用が現れる可能性があります。例えば、グルコサミンは甲殻類アレルギーのある方は注意が必要です。
また、コンドロイチンは、まれに胃腸の不調や皮膚のかゆみなどを引き起こすことがあります。少しでも体に異変を感じたら、すぐに服用を中止し、医師に相談してください。
まとめ

変形性膝関節症の痛みに対するサプリメントの効果について解説しました。
様々な成分が紹介されていますが、残念ながら、グルコサミンやコンドロイチンは口から摂取しても軟骨まで届きにくく、効果は限定的という研究結果が出ています。
サプリメントを選ぶ際は、臨床試験データを確認し、信頼できる製品を選びましょう。過剰摂取は禁物ですし、医師や薬剤師に相談することも大切です。アレルギー反応にも注意が必要ですよ。
痛みの軽減には、サプリメントだけに頼らず、適度な運動や、医師によるヒアルロン酸注射、場合によっては手術といった他の治療法も検討してみましょう。つらい痛み、一緒に改善していきましょうね。
参考文献
- Höök M, Kjellén L, Johansson S. “Cell-surface glycosaminoglycans.” Annual review of biochemistry 53, (1984): 847-69.
- Volpi N. “Chondroitin Sulfate Safety and Quality.” Molecules (Basel, Switzerland) 24, no. 8 (2019): .
- Dahmer S, Schiller RM. “Glucosamine.” American family physician 78, no. 4 (2008): 471-6.

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部 卒業
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